概要
特殊捜査官「グラマトン・クラリック」たちが用いる、銃を用いた戦闘術。
ネーミングの由来は銃(ガン)+武術の型(カタ)でガン=カタ。
作中での設定は第三次世界大戦までに蓄積された膨大なデータを元にし、統計学的に有利な位置に自らの身体を移動させながら戦闘する事で被弾率を最小限に、攻撃効率を最大限に高めるという合理化された戦闘術である。
基礎要素だけでも攻撃力は120%、一撃必殺の技量は63%上昇するほど強力だが、主人公プレストンを含む「第1級クラリック」ともなれば敵の集団を単身で瞬く間にかすり傷一つ負うこと無く全滅させる事すら可能である。
基本的な戦闘方法として、専用のカスタム拳銃クラリック・ガンを二丁持ち、相手の懐など銃を使用出来ない間合いに飛び込んで戦う事が多いが、それ以外にも徒手空拳や刀、クラリックガンを持つ者どうしの戦闘方法など幅広い戦闘術を含んでいる。それぞれの動きや訓練用の防具などは東洋武術を参考にしており、「型」の要素だけでなく残心のような動きも見られる。
また、主人公プレストンが逆手で刀を使うシーンがあるが、これは監督曰く『座頭市』の影響との事。
これ以外にも、敵の武器を奪って使用可能な場合はそうする事がある(劇中ではショットガンを奪って使用するシーンがある)。
世界観は違うが、監督を同じくする映画『ウルトラヴァイオレット』にもこのガン=カタが登場する。本作では主人公が女性という事もあり、バレエ等の踊りの要素を加え、より流れる様な動きを目指したガン=カタ「Gun Kata2.0」が用いられた。
ウルトラヴァイオレットでは一対多の戦闘の際に相手の射線を誘導することで同士討ちを誘発させるといったことも行なわれている。
影響・パロディ
それまでのアクション映画においても、銃を用いた接近戦闘シーンの見せ方は様々に模索されてきたが、ガン=カタは
- 一切防御やカバーをせずに敵の前に姿を晒す
- 殺陣の要素を組み合わせた戦い方
という2点において特に斬新であった。
劇場公開された当初はそれほど大きく話題にならなかった『リベリオン』だがソフト化されると口コミでその斬新さ・スタイリッシュさが評価されるようになり、瞬く間に「二挺拳銃を用いた一対多の近接戦闘」というニュースタンダードを築き上げた。
ガン=カタが描写されるシーンは実は本編映画106分のうち10分にも満たないが、「リベリオンといえばガン=カタ」と言っても過言でないほどの強い印象を与え、そのため後のゲームやアニメ・特撮等、ガンアクションが登場する創作に影響を受けたと思しき作品は多い。
また、以後の映画作品でも違う体系の「近接格闘術+銃」という見せ方が続々登場していが、類似する「1人対多数」のガンアクションシーンの呼称としてGun-fuという言葉が定着している(銃+カンフーから)。
ガン=カタと違い厳密な定義があるわけではないため、実際の戦い方は様々で実用重視の格闘術+射撃術のような例もある(『ジョン・ウィック』シリーズなど)。
裏事情やその他の話
元々は「銃撃戦で迫力ある映像が撮りづらい」といった理由から新たなアクションを考案する必要があったことから生まれた逆転のアイディアである。
「そんなことしなくても銃撃シーンって派手じゃない?」と思われる方も多いだろうが、実際の銃撃戦とは非常に地味なものである。それをそのまま映像にしても、画として映えない上に無機質で感情移入出来ない。よって映画等で画かれる銃撃戦は周囲の器物を破壊しまくったり、爆発シーンを入れることで派手に演出する必要があるのである。当然、制作費もかさむわけである。
『マトリックス』の様な映像編集技術やCGを駆使する方法もあったが、『リベリオン』はその実めちゃくちゃ低予算で作られた映画であった。
派手なVFXを使えない状況でなんとかして見栄えのするアクションシーンを求めた末、行き着いたのが東洋武術の“捌き”などの技法を取り入れたがこの「ガン=カタ」である。
残念ながら『リベリオン』は本場アメリカではセールスに恵まれず、日本での公開も一部の映画館による細々としたものに留まったが、そのハッタリの利いた設定や時代劇の殺陣を思わせる美しい動き、そして二挺拳銃や武術ネタが、幾多の日本のアクション映画ファンの心を捉えて離さず、やがて日本のサブカルチャーにおいてもガン=カタを参考にした作品が登場する事になった。
一例として、アニメでは『MADLAX』、『グレネーダー』、『緋弾のアリア』など。
シナリオライターであり、映画好きな事でも知られる虚淵玄は『リベリオン』の二次創作作品を発表した事があり、緻密に補完された世界観や新たなガン=カタの解釈を加えた事で熱狂的な人気を獲得した。
また、同氏が後に脚本を担当した『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズでも当初から巴マミと暁美ほむらがガン=カタ的な戦い方をしていたが、続編『叛逆の物語』ではこの2人の対決シーンが描かれ、もはや完全にガン=カタと化していたりもした。
(→無限の銃製、アンリミテッドライフルワークス、無限の魔弾を参照)
『戦姫絶唱シンフォギアG』では登場人物のひとり雪音クリスの戦闘スタイルのルーツとして直接的に『リベリオン』が名指しされている(同シリーズは他にも映画からのパロディ要素が多く見られる)。
特撮では『特捜戦隊デカレンジャー』のデカレッドが使用する「銃撃ジュウクンドー」とガスドリンカーズのボスが繰り出す「ジャアクンドー」…など。
ゲームでは「スタイリッシュ・ガンアクション」のキャッチコピーで有名なカプコンの『デビルメイクライ』の主人公・ダンテの格闘術はガン=カタをヒントにしたと制作スタッフがインタビューで答えている。尚、ダンテの愛用の剣の名前は「リベリオン」である。
韓国発祥のターン制SRPG『ラストオリジン』に登場するブラックリリスは戦い方、そして勝利ポーズまでガン=カタである。
2Dツクール発の格闘ゲーム『ヴァンガードプリンセス』のルナ姫木の格闘スタイルも二丁拳銃+格闘とまんまガン=カタ。
登場当初の熱狂こそ薄れたものの、現在ではサブカルチャー全般において2丁拳銃の扱い方のテンプレートの1つとして定着している。
しかし一方で、模倣の模倣という形でなんとなく特徴的なポージングを真似ているだけでコンセプトをしっかり踏襲出来ていないという手厳しい指摘がなされる場合もある。