CV:間宮康弘
人物像
ギャラルホルン火星支部実働部隊所属のモビルスーツパイロット。階級は二尉。
実直さを絵に描いたような軍人であり、子供が銃を持ち戦う事に疑問を抱き、また戦闘で不要な犠牲が出る事を嫌う人格者。
パイロットとしてはベテランの域に達する実力者であり、CGS襲撃作戦に於いて指揮を採ったオーリス・ステンジャは彼の元教え子である。
クーデリア・藍那・バーンスタイン抹殺の意図を含んだCGS襲撃作戦に於いてアイン・ダルトンと共にオーリスの指揮の下で、グレイズに搭乗し作戦行動に従事。
この折に圧倒的戦力であるグレイズを最初から投入して相手を威圧せず、モビルワーカーだけを当初は投入して味方に不要な犠牲を出したとオーリスを批判していた。
その後、三日月・オーガスの駆るガンダム・バルバトスと交戦状態に陥り、結果オーリスは戦死し、アイン機は損傷。更にこの際、自分達が戦わされていたのが兵士としてCGSに身を寄せていた子供達であった事を知り戦意を失い、推進剤を消耗しきったバルバトスを倒せる好機を棄て、負傷したアインを抱えての撤退を選択する。
だが帰投後、自らの保身を優先するギャラルホルン火星支部局長コーラル・コンラッドからは、地球からの査察が来るまでの僅かな期間内に火星での戦闘の証拠を抹消せよとの命令を下される。
現有戦力でバルバトスに対抗できるのは彼のグレイズ一機のみ。モビルワーカーも投入し勝てたとしても犠牲も多く、なによりアインら部下達に少年兵の虐殺という汚名を背負わせる事を鑑み、自分の矜持を貫くべくあえてコーラルの命令に反して単独で出撃。クーデリアの身柄を賭けて三日月に一対一の決闘を申し込む。
出力でバルバトスに劣るグレイズを駆りこれに対して善戦するものの、バルバトスのメイスに仕込まれていたパイルバンカーの一撃で致命傷を負い敗北。最終的に三日月に介錯される形で命を落とした。
彼が最後に取った決闘という手段は、部下にこれ以上の犠牲と汚名を与えず、CGSの少年兵達の命をコーラルの理不尽な命令と、少年兵達を戦わせているであろうCGSから救う意図があったのだが、彼が三日月に決闘を申し込んだ時点でCGSは少年兵達のリーダーであるオルガ・イツカによって掌握されており、彼らは自分達の意思で自分達が生きていく為に戦う事を決めた直後であった。
最後に自らの胸の内を明かした三日月も、既に何十人もの仲間をギャラルホルンによる襲撃で喪った事に対する怒りと、クーデリアの命と引換えに自分達を助けようとする考えに辟易し、その考えを理解しようとするつもりは無かった。
彼の決闘自体、また決闘で自身の敗北の際には何も考慮していなかった点を鑑みるに、鉄華団の立場からしたら虫の良すぎる話である。結果として「少年達を戦いに巻き込みたくない」と言いつつも、三日月に自身の介錯(人殺し)を頼むなど破綻しており(尤も、この行為は自らの過ちを認め、三日月を守るべき少年でなく対等な戦士として遇したとも言える)、鉄華団とギャラルホルン(特にアイン)の間に因縁を断つどころか、深い禍根を産む事になってしまった。
尚、彼の遺品とも言うべきグレイズは鉄華団に再利用され、それが更にアインの恨みを買う事となる。
しかし、これは彼が特別愚かと言う訳ではない。やり方がズレていたとは言え、敵の少年兵達を気遣う他、地球純血主義のギャラルホルン内で火星人の血が交じるアインに対しても、差別心を抱かず公平に接する(しかし、アインは初陣の際に同僚から緊張をほぐす意図の言葉をかけられており、アインの設定が変化した結果、彼以外は公平ではなかったようにされてしまった)等、良心と善意を持った軍人である事には間違いない(少なくとも革命を起こしたマクギリス達を除く、純粋なギャラルホルンのキャラ内では最もマトモと言い切れる)。
彼の過ちは「自分の環境と常識での善意が、無条件に相手に通じる」と考え、「相手の立場では慮れなかった独善」であることを理解していなかった所にある。クーデリアの命を引き換えにした助命も、決闘と言う戦闘の形式も、彼の常識の範囲では最大限の配慮を持った善意であったのだろう。
しかし、それはCGSこと鉄華団の立場からしたら、命だけは助けるけれど、補償もせず折れる事だけを要求しているに過ぎなかった。
そして、この「自身の善意が誰にでも通じる」と言う考え方は、初期のクーデリアもほぼ同一であり、彼の作劇上の役割は「クーデリアが今のままだったら、こうなってしまう」と言う反面教師だったと考えられる。