あらすじ
「洋菓子のパラダイス」新工場建設予定地という廃墟の前で話をしていた、元太、光彦、歩美は、コンクリートの残骸の中から出ている右手を発見す。
思わず失神してしまった三人を見つけて話を聞いたコナンは、移動する血痕を発見。三人が見た手の人物は生きて移動していると考える。
それを追いかけ「洋菓子のパラダイス」の店舗にやってきた四人は、一週間前ここで話をしていたことを思い出す。そのときに見かけた美女が、このときも同じ席で同じケーキを食べており……。
カオス回
この回の脚本が浦沢義雄という時点で勘の鋭いアニコナファンならもうお気付きだろうが、この回、浦沢脚本の回の中でも1、2を争うカオス回となっている。
- 犯人の罠によって瓦礫の山の下敷きになったのにピンピンしている副社長夫人
- 眠らされた小五郎が犯人に倒れかかって、そのまま犯人とワルツを踊りながら推理ショーが始まる
- 洋菓子を愛し過ぎたあまり、最後に(意味不明な事を言いながら)周りの人間が洋菓子に見えてしまうようになった犯人(取り調べも困難になるであろう。最悪精神鑑定待ったなしの可能性も)。
- 締めのコナンの台詞が「さよなら、ようかん(洋館と羊羹をかけている)」とダジャレ
と、これだけでも突っ込みどころ満載だが、この回を最もカオス回と言わしめた問題のシーンは
シンクいっぱいのあんこに顔を突っ込まれて窒息死した被害者
この一言に尽きるだろう…
更に付け加えるとそもそも何故シンクいっぱいにあんこが入れられていたのかも不明であり(殺害シーンを見る限り、被害者は殺される直前までそのあんこいっぱいのシンクの前に普通に立っていたので、おそらくやったのは犯人ではなく被害者であると思われるが…)、ある意味この回最大のミステリーである。
余談
浦沢氏脚本の回は、内容がカオスである割にあまり事件らしい事件にならないことが特徴だが、この回は浦沢氏が脚本を担当した回で初めての殺人事件が起こった回となっている。
その為、前半は割とちゃんと事件の謎を追っていく流れになっているのだが、後半の展開と予告でも問題のあんこ窒息死シーンが映っていたことから、勘の鋭いコナンファンは「これ脚本浦沢だろ!」と気付いた人もいたが、これまでの浦沢脚本では殺人事件が一度もなかった為、浦沢脚本と気づかなかったファンもいた。
因みに、この回の前の回である第1027話『カーテンの向こう側』は、浦沢氏の弟子である大和屋暁氏が脚本を担当しており、あっちもあっちで小五郎本人を使わずにに眠りの小五郎の推理ショーをし、推理の最中に小五郎の様子がおかしくて犯人から「大丈夫?」と心配されてしまうなど、カオスな展開を見せているが、次回予告に全てを持って行かれたのは言うまでもないだろう……(それ以前にも両者がコナンの脚本に関わる以前にも小五郎本人を使わずに推理ショー…と言うより殺人を思いとどませる為の説得に使われていた回もある。エピローグでは本人は何故か納得していた)。
また、浦沢氏脚本の回は基本的に小五郎登場回と探偵団登場回が交互で放送されているが、本作は浦沢脚本で小五郎と探偵団が同時に登場した唯一の回(2024年時点)でもある(なお、小五郎回と探偵団回では展開が大きく異なり、探偵団回では小五郎回と比較してコナンがピンチになる傾向が強い)。
2000年の『ベイ・オブ・ザ・リベンジ』で事件を担当した現地警察(千葉県警)は、小五郎を「沖野ヨーコの歌に合わせて踊りながら推理する」と言う間違った情報を言っていた。約20年後に本当に踊りながら推理する事を予想するのはおそらくいなかったであろう。
浦沢氏が本作の次に脚本を担当したのは『わるいやつら』だが、こちらは腕時計型麻酔銃を喰らったにもかかわらずすぐに目覚めるという小五郎や黒の組織のジンよりも麻酔耐性が強い犯人が登場している(コラボ作も含むなら銭形のとっつあんも小五郎より麻酔耐性が強い)。
なお、本作以外の浦沢脚本で殺人事件が発生したのは2024年に放送された『4人だけの同窓会』と『逆上せあがった探偵』であり、どちらも次回予告でそれらしき要素が一切なかった為、終盤まで浦沢氏の脚本だと気づかなかったファンもいた。