概要
幼少時からの映画好きで『ホフマン物語』(1952年イギリス製作)に感銘を受け、映画制作の夢を志す。ベラ・ルゴシ主演の古典的名作『魔人ドラキュラ』(1931年)、ボリス・カーロフ主演『フランケンシュタイン』(1931年)なども非常に好きだったようで、それが後年のゾンビものなどのキャラクターの設定やホラー映画製作にも大きな影響を与えた。
1959年、地元ピッツバーグの大学在学中に、アルフレッド・ヒッチコック監督のサスペンス映画『北北西に進路を取れ』の撮影現場でアルバイトをするが、効率性重視なハリウッド流の映画製作に疑問を抱くようになる。
大学卒業後、地元で1963年に友人とともに映像製作会社「ラテント・イメージ」を設立し、主にCMや産業用フィルムの製作や監督を手掛ける。しかし劇場用映画製作の夢を捨てがたく、会社勤めの傍ら友人のジョン・A・ルッソやラッセル・トレイナーら有志らとお金を出し合い、週末などを利用して映画を作ることを決意する。物語はかねてよりリチャード・マシスン原作のSFサスペンス小説『アイ・アム・レジェンド』に感銘を受けていたロメロがその作品をヒントとして、1968年に『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を製作した。この映画は興行的に失敗したが、後にドライブインシアターやテレビの深夜放送でカルト的人気を得る。
この映画により、あくまでブードゥー教術者の引き立て役でしかなかったゾンビが、映画におけるメインのモンスターとして扱われるようになった。
1973年に製作者リチャード・P・ルビンスタインと出会い、ローレル・プロダクションを設立。同社製作の現代吸血鬼もの『マーティン呪われた吸血少年』(1977年)がヨーロッパで話題を呼び、この作品でロメロに着目したイタリアホラー映画監督ダリオ・アルジェントが共同出資を申し出て、1978年に『ゾンビ』(「ZOMBIE」原題:Dawn of the Dead)を完成させる。
ロメロ自身は最初から続編の構想はなかったが、友人の身内が経営しているショッピングモールを訪れた際に続編の発想がひらめいたのと、同じタイミングで来たアルジェントからの申し出を「運命的な物」と語っていた。
代表作となったこの映画は150万ドルという低予算ながら、世界中で大ヒットした。
その後二人は続編の構想を練るも、アメリカドルの高騰と、アルジェントの先輩格に当たるルチオ・フルチが『ゾンビ』の便乗映画『サンゲリア』(原題は『ZOMBI2』で「E」が抜けている)をさも続編のように制作したため、企画はとん挫、アルジェントの支援を受けられないまま『死霊のえじき』をスケールダウンさせて作ることになった。
その後、ロメロはホラー映画監督の殻からの脱皮を図るべく他ジャンルの作品に意欲を示し、社会派ドラマやラブ・ストーリーなども監督するが、興行的には失敗している。
1982年には、盟友スティーブン・キングの脚本で『クリープショー』の製作を皮切りに再びホラー映画を監督するようになった。『ゾンビ』は2004年にリメイクされ、『ドーン・オブ・ザ・デッド』(監督:ザック・スナイダー、原題は1978年版と同じ)の邦題で公開された。そして、2005年にはデニス・ホッパーやアーシア・アルジェントら有名スターを起用しての久々のゾンビ映画『ランド・オブ・ザ・デッド』を監督したが、興行は振るわなかった。しかし、ロメロの生み出したホラー映画は世界中のゲームや映画などの映像クリエーターらに、現在でも多くの影響を与え続けている。
『マーティン』や『ゾンビ』では俳優として出演しているほか、ジョナサン・デミ監督からの熱烈なオファーにより『羊たちの沈黙』(1991年)ではFBI捜査官役で出演している。また、ホラーゲーム『バイオハザード』の映画版を監督する話もあったが、製作段階で降板してしまう。
(ゲームのCM制作では監督を務めていた)
ハリウッドとの関連については『モンキー・シャイン』や『ダーク・ハーフ』をメジャー・スタジオで監督して『The Mummy』に抜擢されるが、こちらもメジャー・スタジオの製作方式とロメロの作風が相容れず、実現せずに終わった。ちなみに、『The Mummy』は後にスティーヴン・ソマーズ監督により『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』として製作された。
映画『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』(2007年)や『サバイバル・オブ・ザ・デッド』(2009年)を経て2010年に発売されたゲームソフト『コール オブ デューティ ブラックオプス』におけるゾンビモード追加コンテンツでは、ロメロ自身がゾンビとなって出現。ステージタイトルは『Call of the dead』(コール・オブ・ザ・デッド)である。
2017年7月16日に肺がんにより死去。77歳没。
余談
中学生の時に父親から買ってもらった8ミリカメラで自主撮影作品『The Man from the Meter』製作。この作品の撮影の際、火を点けた人形をビルから落として警察に大目玉をくらったという逸話がある。