概要
スコティッシュフォールド(Scottish Fold)は、猫の品種のひとつである。
がっしりした体格で、丸い目と丸い顔に、折れ曲がった耳が印象的な中型のセミコビータイプ。
長毛と短毛の二種類がある。
その名の通り『折れ(fold)耳』が特徴だが、生まれた時はどの子猫もまっすぐな耳をしている。生後3週間から1か月程度で耳が折れ始めるが、遺伝的に折れ耳になるのは全体の3割強ほどである。
折れ耳にならなかった立ち耳タイプのスコティッシュフォールドは、一般の猫より小さい、三角形の耳を持つ。
動画サイトYouTubeなどで有名な猫の「まる」は、立ち耳のスコティッシュフォールドである。
毛色は、白、黒、レッド、クリーム、ブルー、及びこれらのシェイデッド(根元が白や淡色で毛先に別の色がついた毛色)やタビー(縞模様)、またこれらの毛色とホワイトの組み合わせなどがある。
性格はのんびりとしていて穏やか。環境の変化にもあまり動じない。
非常に人懐っこいが、後述する遺伝疾患による痛みが原因で、撫でられたり抱っこされるのを嫌う個体もいる。
またスコティッシュフォールドは、鳴き声が小さいことも知られている。
遺伝病のリスクと折れ耳
スコティッシュフォールドは四肢の骨の異常(遺伝性骨軟骨異形成)が現れやすい品種として知られている。通常は生後数ヵ月で発症し、関節可動域の減少や関節痛に伴って、ジャンプができない、歩きたがらない、触ると嫌がる、などの症状が起こりうる。
症状が重い場合、グルコサミンなどのサプリメントで症状を緩和する、鎮痛剤を使い続ける、低線量放射線の照射をして痛みの緩和をする、外科手術を行うなどの治療が行われる。しかし、どれも対症療法のみで、根本的な治療法は見つかっていない。
スコティッシュフォールドの特徴である折れ耳は「奇形」と説明されることもある。ただし狭い場所での活動や耳の異物侵入、感染症リスクを低減するなとの生物学上の利点もあり、否定的な意味での「奇形」という言葉のイメージとは必ずしも一致しない(本来の「めずらしい形」という意味ではその通りだが)。
遺伝疾患のリスクは親に強く影響される。折耳同士の組み合わせを避ければ、子が折耳でも遺伝疾患の発症率は低くなる。ただし、その発症率が問題のない(他品種と同等)レベルなのか、あるいは相対的に低いだけでなお問題となるレベルなのかは論争がある。いずれにしてもスコティッシュフォールドの疾患のリスクを下げるには、適切な交配が必須となる。
個性的な仕草
スコティッシュフォールドが人気の理由は外見だけではない。性格も穏やかで、愛らしいしぐさにもファンは多い。
もっとも特徴的なのは、通称『スコ座り』と呼ばれる、尻をぺたんと床に着けて上半身だけを起こし、後ろ足を前に投げ出した座り方である。人間のようなしぐさが人気で、SNSなどにもよく写真が投稿されている。
この独特の座り方は、脚に体重をかけると関節に痛みを感じる事から、それを避けるために脚を前に投げ出しているものという説がある。
スコティッシュフォールドの歴史
スコティッシュフォールドは1960年代にスコットランドで見つかった一匹の折耳のネコを起源とする。最初のうち品種を確立するべく遺伝病リスクを無視した繁殖が行われ、さまざまな研究機関や医療機関から問題視された。イギリスの猫の品種登録団体GCCFは、1974年から「繁殖すべきではない」とこの種の登録を認めないことを宣言した。
その後欧米ではスコティッシュフォールドの倫理上の悪名を払拭すべく研究や他品種との交配が盛んに行われた。1990年代以降は、適切な繁殖を行えば健康な個体が得られることが研究で示され、いくつかの登録団体で品種として認められた。
ただし問題視する意見は今なお根強い。例えば前述のGCCFは現在も品種として認めていない。
日本国内の流通問題
スコティッシュフォールドの軟骨異常の問題は、日本の愛猫家たちの間でも知られており、一部では問題視されてきた。ところが日本では適切な繁殖についての配慮が十分なされているとは言い難い。
人気品種の猫ということで盛んに繁殖が行われているが、交配に対する規制は今のところ存在しない。ブリーダーの中には、軟骨異常が強く出る折れ耳同士の繁殖を自主的に禁止する倫理を設けているところもある。しかし、ペットショップの多くは、立ち耳タイプは売れ残るため、折れ耳タイプを仕入れたがる。そのため、障害が出てしまう折れ耳同士を繁殖させ、大量に人気の品種を生み出す、という流通が止められずにいる。
近年問題になっている、ブリーダーが飼育放棄する『ブリーダー崩壊』の現場でも、人気品種だからとスコティッシュフォールドを繁殖させたものの、奇形が多く出て、販売できず放棄するという最悪なケースが見られる。
飼う場合の注意点
スコティッシュフォールドは関節疾患などが多いため、医療費がかかり、介護が必要になる可能性が高いことを理解した上で迎え入れる覚悟が必要。
発症した場合、ケアが長期間に渡る事も考慮した上で、金銭面や通院時間のやりくりなどが可能かどうかをよく考え、本当に飼えるかどうかを決める。
発症のリスクを低減するため、また倫理上の観点からも、前述のような不適切な繁殖を行っている業者からは迎え入れるべきではない。
日常の注意点としては、大きく5つある。
- まずは苦痛がないかよく観察をする
- 最低でも年に1~2回は獣医師の診察を受ける
- 太らせないよう体重管理に気をつける
- 猫が上る場所へ何らかのステップをつける
- 床に敷物をしいて柔らかくする
遺伝性骨軟骨異形成が四肢に発症してしまった場合は、グルコサミンなどのサプリメントを飲ませたり、消炎鎮痛剤の処方を受けペインコントロールを行うなどのケアが必要である。そして症状が重い場合には、二次診療施設における外科手術や放射線治療による緩和ケアなど特殊な治療も必要になる事がある。
また、軟骨の問題の他に、尿路系の疾患や心臓の問題なども、他の猫種と比較すると注意が必要である。
関連画像
関連タグ
アメリカンカール…猫の品種。耳がカールしているのが特徴。