概要
てんとう虫コミックス18巻及び、藤子・F・不二雄大全集19巻に収録「スパイ衛星でさぐれ」にて初登場。
羽虫ほど小さいスパイ衛星。宇宙に打ち上げるのではなく、使用したい対象者に投げてその人物を軸に軌道にのせるとモニターする機器でその人物の周囲の映像や音声を視聴できる。衛星の軌道修正をすることもできる。衛星は1ダースがモニター装置の引き出しに収納され、各々にはカメラが6つ付いている。
ストーリー
よその家の玄関のブザーをこっそり押して逃げるといういたずらの犯人を抑えようとしたのび太は、ドラえもんの出したひみつ道具『スパイ衛星』でスネ夫の動向を調査していた。予想通り、犯人はスネ夫であることが判明した。
のび太が「あそこを通る子どもがみんな疑われて、迷惑してるからやめろ」と注意すると、スネ夫は「そんなくだらない卑怯ないたずらをするもんか」と居直るので、スネ夫にいたずらの決定的な写真を見せつけた。
「今度やったら、あのおばさん(家の住人)に写真を見せるから。」
もっといろいろ試したいというのび太に対し、ドラえもんはいつもの如くのび太が調子に乗ってこの衛星を悪用しそうなので、「きみには貸さない!」と宣言した。が、のび太は前もって装置に釣り糸を結びつけておいたので、ドラえもんが部屋を出るとき四次元ポケットから取り出すことに成功している。
スパイ衛星は一ダースあったので、のび太はのぞき見ではなく、人を助けるためにこれを使おうと心に決めて出掛けた。そして、のび太はジャイアン、しずか、安雄、はる夫、スネ夫などに全部の衛星を取り付けることができた。
最初にモニターに写ったはる夫を追跡すると、散歩中に落ちていた財布を拾い、「財布がもうかった」と喜んでいたので、現場まで走り、「それは、交番にとどけるべきだと思うよ」と注意した。
「どうしてわかった⁉」
続いて映ったしずかはお風呂に入って、「また太ったみたいだわ、ごはんを減らそうかな」とつぶやいているので、早速電話をかけて、親切に「太ってなんかないよ、安心してごはんを食べなよ」と(デリカシーのない)アドバイスをしている。
そしてジャイアンをモニターで見ると、土管のある広場で歌の練習をしており、「日曜の朝から夜まで、休憩二回をはさんで、ぶっ通しのワンマンショー!!」とひとりはしゃいでいた。
それを聞いて、のび太は大きなショックを受け、「あの有毒音波を一日中聞かされたら死んじまう」と大騒ぎ。
みんなと相談するために出掛けると、スネ夫がドラえもんからなにかを借りて、みんなのすることを見ているんだという話が聞こえてきた。それに対して、しずかやはる夫も「それがほんとなら許せないわ!」「今に証拠をつかんで…」と猛烈に腹を立てて、抗議していた。ドラえもんに相談するわけにもいかず、頭を悩ませるのび太。
モニターで確認すると、ジャイアンは「夢のリサイタル」の入場券を完成し、着々とリサイタルの準備を進めていた。「一人でも、もらいそこねるやつがいたらかわいそうだ」と言いながら、入場券を配りに出掛けようとしていた。
一度は遠くへ逃げようと思ったのび太だったが、「友だちが災難に遭うのを見捨てて、自分だけ逃げるなんて、卑怯だぞ」と思い直し、モニターを見詰めると、ジャイアンはかあちゃんに買い物を頼まれていたが、足が痛いといって買い物を断っていた。その後、舌をペロリと出して、左手に靴を持って、窓から出ようとしていた。
のび太は早速、タケコプターで現場に出かけ、屋根の上から、往来を歩いているジャイアンに対して、「リサイタルを中止しろ」「やめないと嘘をついたことを、かあちゃんに教えるぞ」と厳かに語り、窓から出ようとしているジャイアンの決定的な写真を足下に落とした。
こうしてリサイタルを阻止することに成功したのび太だったが、隠れて行動していた以上真相が伝わるわけもなく、スネ夫やしずかたちは冷たい表情で、のび太のことを「ヒソヒソ」と噂していた。のび太が「ぼくのおかげで助かったのも知らないで。恩知らず!!」と叫んでも、全く真意が通じないのだった。
アニメにおける原作との主な相違点
大山版は1980年11月20日に、水田版は2020年11月21日にそれぞれ放送している。
1980年版
- サブタイトルが「スパイ衛星」に変更。
- のび太がスパイ衛星を飛ばした時、しずかはピアノを弾いていた。そしてこの後に登場した少年は、この後財布を拾った少年だった。
- ジャイアンのセリフのうち、「秘密に進めて来たが」の部分はカットされている。
- スネ夫は証拠を掴んだ後は、ギュウギュウに挟んでとっちめると言っていた。
- ラストでのひそひそ話では、スネ夫は「のび太の奴に近づかない方がいいぞ」、しずかは「そうよ、何か私達を見張ってるみたいなのよ」と言っていた。
- 本編終了後のショートアニメは、ハエたたきを持ったドラえもんが飛び回るスパイ衛星を必死で叩き落そうとしていて、叩き落とせると、安心してどら焼きを食べるというものだった。
2020年版
- のび太は「毎朝用もないのにあの家のチャイムを押しているだろ!これは立派な犯罪だぞ!」ともスネ夫に言っている。
- ドラえもんは実際のスパイ衛星についても説明している。また「君には貸さない」は「もうおしまい」に変更されている。
- ジャイアンはトイレットペーパーの芯をマイク代わりにして歌を歌っていた。
- 衛星が飛んできた時、しずかはイケメンが出ているドラマを見てにやけていた。
- のび太ははる夫に忠告した後、ミーちゃんと一緒にいるドラえもんを発見したため、彼にも衛星を飛ばしている。
- しずかの入浴シーンは、ドレスを着た自分を鏡で見ていたシーンに変更されている。
- ジャイアン台詞のうち、「ぶっとばしのワンマンショー」は「ロングリサイタル」に変更されている。
- ジャイアンが始めに作っていたのは、皆に売りつけようとしていた直筆サインだった。
- ドラえもんは衛星に気付いてのび太の話も聞かずポケットにしまおうとしたが、その時ミーちゃんが犬に壁際まで追いつめられているのを衛星のおかげで気づけたため、今回だけは多めに見ることにした。また逃げようと言い出したのはドラえもんで、どこでもドアでペンギンのいる南極まで避難したが、のび太が引き留めた。
- ジャイアンは始め写真を破り捨てたが、写真が複製されていたため、これが大量に降って来て観念して逃げ出した。
- 上記の通りドラえもんはのび太から訳を聞いていたため、ラストでは困った顔をしている。
余談
後に「のび太のなが〜い家出」でも名称こそ出ていないが、家出中ののび太がママの偵察に活用した。
映画『のび太の魔界大冒険』にも「スパイ衛星」という同名の道具が登場し、敵の城へロケットで飛ばして使用していた。ただしこれは当エピソードとはモニター装置の形も異なり、同名だが別型の道具という可能性がある。リメイク版である『のび太の新魔界大冒険』にも「スパイ衛星セット」という名称で登場し、これも形が異なっている。