ダンジョンズ&ドラゴンズに於ける設定
邪悪なるクロマティック・ドラゴン族の女神として君臨するのが五頭邪竜ティアマトである。
定冠詞のついた「ザ・クロマティック・ドラゴン」とも呼ばれる。
悪竜たちのほか、彼女の意志と欲望から顕現した悪魔たちも彼女の子を名乗り信奉する(デヴィル アビシャイ)。
複数の化身を用いて暗躍しており、漆黒のローブを纏った黒髪の美女 "The Dark Lady" が特に有名。本体は(配下のクロマティック・ドラゴンの能力を具える)黒・青・緑・赤・白の五つの頭と、毒針を有する尾を持つ巨大なドラゴン。
またメタリック・ドラゴン族の王である竜神バハムート、死と憎悪を司る竜神ヌルとティアマトの三柱は創世神アスゴラスの子。
(序列や出生順は不明だが)実のきょうだいであり、互いに根深い確執を持つ敵同士でもある。
次元界のうちの「九層地獄バートル」第一階層「アヴェルナス(アヴェルヌスとも)」の支配者であったが、現在はアーチデヴィル・アスモデウスにその地位を追われ、本来の力を縛られている(外部リンク「ドラゴン―クロマティック・ドラゴン」より)。更に、彼女は九層地獄のザ・ピット・オヴ・ファイヴ・ソロウズ(五悲の穴)から出ることが出来ない状態である。ティアマト崇拝者たちも彼女をそこから脱出させようと試みたが成功したことはない(『フォーゴトン・レルム探訪』の伝説たち)。ティアマトが外界に干渉する際は、自身の力の一片を与えたアスペクト(相、分身)を差し向ける形となる。
アスペクトもまた本体と同じ姿をしている。各色の頭が持つ五種のブレス・ウェポン、無敵を誇る呪文の使い手であり、その鉤爪による攻撃は軍隊をも一網打尽にしてしまう。
彼女の持つ圧倒的なパワーに惹かれる者は少なくなく、前述の通りドラゴン以外にも信徒がいる。バハムート側のように配下の竜を遣わして人型種族のクレリックの教師にさせるのだが、弟子がミスると教師役のドラゴンに喰われてしまうという過酷ぶりである(ティアマト)。
メタリック・ドラゴンにも彼女のもとにくだり信徒となる者がいる(第1章:ドラゴンについての「宗教」の節参照)。
D&Dの版権は1997年にTSR社からウィザーズ・オブ・ザ・コースト(WotC)社に移っており、社屋3階のキッチンにはティアマトの巨大な壁画があるとのこと(ダンジョン語り その2)。
フォーゴトン・レルムのでティアマト
D&Dの舞台の一つ「フォーゴトン・レルム」でもアスペクトの出現例がある。アンサー(Unther)におけるパンテオン(神々のグループ)の一部を占めている。
このアンサーのパンテオンはメソポタミア神話をモチーフとしており、アイマスカー帝国によって現実世界の地球から奴隷として連れてこられた人々であるムラン人(Mulan)から信仰されている。彼らはまたエジプト神話モチーフとするムルホランドのパンテオンの神々の信仰ももたらしている。
両パンテオンの神々の多くは実際に古代エジプトとメソポタミアで信仰されていた本人であり、最高神Ao(エイオー)の働きかけを受けたプタハ神により招かれた。
彼らは地球から攫われた信徒たちを助け、奴隷となっていた彼らはその立場から解放される事になる。
原典のティアマトが戦ったマルドゥクと同名の神がバハムートの化身としてアンサーのパンテオンに存在しており、両者はここでも対立し衝突した。
MTGでのティアマト
現在版権を有するWotC社が展開するトレーディングカードゲーム『マジック:ザ・ギャザリング(MTG)』にも客演している。
登場エキスパンションは2021年7月発売の「フォーゴトン・レルム探訪」。
ドラゴン・神のクリーチャー・タイプを持つ伝説のクリーチャーとして登場するが、前述の事情ににより分身であるアスペクトにあたる。
兄弟にあたる善の竜神バハムートは人間態をとったプレインズウォーカー「花の大導師」として参戦している(プレインズウォーカーなのはあくまでゲームシステム上であり、世界観上でもプレインズウォーカーというわけではない)。
原型
メソポタミア神話に登場する地母神、その姿は「大洪水を起こす竜」と形容され程、巨大なウミヘビである。
名前のアッカド語に於ける意味は「母」であって、彼女の性格も優しく寛大であったとされる。