ドラゴン(D&D)
どらごん
古今東西、多くの幻想物語で重要な役割を担ってきたのがドラゴンという生物(もしくは生物的ななにか)。
作品タイトルにその名を冠する『ダンジョンズ&ドラゴンズ (Dungeones & Dragons、略称D&D)』はドラゴン族について多くの独自設定を持ち、後代に影響を及ぼしている。
例えばその身体を覆う鱗の色で、そのドラゴンの形質・性質・能力等を文字通り「色分け」する慣例は『D&D』で確立され、現在でも多くの作品に受け継がれている。
『D&D』のドラゴン族は魔法生物であり、爬虫類やその祖先とは別物である。
高い知能を持ち、ドラコニックという独自の言語の他、他種族の言語も操ることができる。
ドラコニック語は魔法の呪文を操るうえで他の言語より有利に作用し、また呪文を用いずに発動する種族ごとの特殊な能力を持つ。
アスゴラスの子供たち
アスゴラス(Asgorath)は『D&D』の舞台となる多元宇宙(multiverse)を創造したとされており、善悪を問わず多くの種族から「世界の形成者(The World Shaper)」として崇拝されている。またの名を「イオ(Io)」という。
必要に応じて巨大なドラゴンの姿を以て顕現することはあるものの、その本質は物理的な宇宙の外側にあり、眷属であるドラゴン族にとってさえ理解を超えるものであるらしい。
現在ドラゴン族の中核を担う三柱の龍神たち(バハムート、ティアマト、ヌル)の父親(もしくは母親)がアスゴラスとされているが、これらの神々の関係が生物的な意味での血縁関係と同じものであるかはわからない。
三柱の龍神たちのうち、『バハムート』と『ティアマト』についてはそれぞれの記事を参照。
ヌル(Null)は「無」という意味で、おそらくは「名されざる存在」というニュアンスを含むと同時に、この神への崇拝や忠誠は自然に「否定される」扱いとなる。
異称として「失われしものの守護者(the Guardian of the Lost)」たるクロネプシス(Chronepsis)、および「略奪者(the Reaver)」たるファルズレ(Faluzure)が用いられるが、逆に別個の存在であるクロネプシスとファルズレがともにヌルと呼ばれているとする説もある。
ヌルは端的に言えば「死」の概念を司る神であり、「怨念」と「不滅の憎悪」を支配する悪神である。一方で、命を失ったドラゴン族の魂をドラゴンエイリー(Dragon Eyrie)へ導き、「何者にも脅かされない永遠の安寧」を齎す存在でもあるため、あらゆる種類のドラゴン族から一定の崇拝を得ている。
その姿は「竜の形をした暗黒の空間」であり、生あるものが接触すれば即死は免れないとされる。
かつては妹であるティアマトと同盟関係にあったが、現在では互いに(バハムートに対する以上の)憎悪を抱き合っているらしい。
その他の龍神たち
ドラゴンエイリーは霜に覆われ雲に包まれた巨山として存在する世界であり、全ての龍神たちの故郷である。
ドラコニックパンテオン(Draconic pantheon)に名を連ねる龍神は上述のアスゴラスと三柱の他に、
- 富と財宝を司る女神アスティラボール(Astilabor)
- 火災と破壊・新生を司るガリクス(Garyx)
- ユーモアと創造力、歓喜を司る女神ハラール(Hlal)
- 魔法を司る女神ケレスカ(Kereska)
- バハムートの意志の代行者クジャタ(Kuyutha)
- 公正と正義を司るレンディス(Lendys)
- 神秘と超常現象を司るサルディオール(Sardior)
- 慈悲と癒しを司る女神タマラ(Tamara)
- 貪欲と利己を司るタスク(Task)
- 種族としてのドラゴンの形質を司るゾルクアン(Zorquan)
等が知られている。
メタリックドラゴン(Metallic dragon)
龍神バハムートが率いる善のドラゴン族。ただし全ての個体が善、というわけではなくごく一部ながらティアマトに寝返る者もいる。上位種としての自覚が尊大さに繋がる事は彼らにもあり、良かれと思って行う行動が巻き込まれる側にとって災難になる事もある。
『プラチナ・ドラゴン』『ゴールド・ドラゴン』『シルバー・ドラゴン』については各記事を参照。
- ブロンズ・ドラゴン…青銅の鱗を持ち雷撃のブレスを吐く。好奇心旺盛で人助けが趣味。
- カッパー・ドラゴン…赤銅の鱗を持ち強酸のブレスを吐く。吝嗇で冗談や謎かけを好む。
- ブラス・ドラゴン…真鍮の鱗を持ち火炎のブレスを吐く。争いを好まない平和主義者。
- マーキュリー・ドラゴン…水銀の鱗を持ち猛毒光線のブレスを吐く。気まぐれで新しもの好き。
- アイアン・ドラゴン…鉄の鱗を持ち稲妻のブレスを吐く。知識の探求のため世界を巡る。
- スティール・ドラゴン…鋼の鱗を持ち酸と毒のブレスを吐く。人間に変身し彼らの社会で過ごすことを好む。
- エレクトラム・ドラゴン…エレクトロン(琥珀)に由来する名を持つ、銀を含んだ金鉱石エレクトラム(琥珀金、山金)の鱗を持ち、衰弱と混乱の効果を持つガスのブレスを吐く。平和的かつ哲学的で、文明から離れて暮らすが、訪問者は歓迎する。
クロマチックドラゴン(Chromatic dragon)
邪竜ティアマトが率いる悪のドラゴン族。凶暴でない知的種族だろうが、こちらに害を与えない個々人だろうが平気で餌にする。ただし利用価値を見いだす等して食べる事を控えることもある。
『レッド・ドラゴン』『ブラック・ドラゴン(別名スカル・ドラゴン)』『ブルー・ドラゴン(別名ストーム・ドラゴン)』『グリーン・ドラゴン』『ホワイト・ドラゴン(別名アイス・ドラゴン)』『イエロー・ドラゴン』については各記事を参照。
ジェムドラゴン(Gem dragon)
善悪の戦いからは距離を置く、排他的で内向的なドラゴン族。
境界ドラゴン(Planar dragon)
"planar" は「面・平面」を意味するが、『D&D』では多元宇宙を構成する様々な「界」を "planes" としている。
通常の生物が属する「物質界(Prime Material plane)」とは別の界に移り住んだクロマチックドラゴンが、その環境に適応した結果生まれたのが境界ドラゴンである。
- フロストフォージドワイアーム、デスマスクドラゴン(アビス)
- バトルドラゴン、パクトドラゴン(アストラル海)
- ブレイズワイアーム、ドラゴンイール、テンペストドラゴン、パイロクラスティックドラゴン(エレメンタルカオス)
- フェアリードラゴン、ミラージュドラゴン、レッチドラゴン(フェイワイルド)
- ブライトドラゴン、シャドウドラゴン(シャドウフェル)
これ以外にも多種多様な境界ドラゴンが確認されている。
オリエンタルドラゴン(Oriental dragon)
東方世界カラトゥール(Kara-Tur)で崇拝されているドラゴン族。現地語に因んだ「ルン・ドラゴン(Lung dragon)」の表記も用いられる。
ドラコニックパンテオンとは異なる「天の帝国(Celestial Empire)」という神界に属しており、 "Chiang lung" "Li lung" "Lung wang" "Pan lung" "Shen lung" "T'ien lung" "Tun mi lung" "Yu lung" の八種が知られている。
カタストロフィック・ドラゴン(Catastrophic dragon)
「災害竜」とも訳され、「アースクエイクドラゴン(地震竜)」のように天変地異の呼称を冠した種類名で分類される。その起源には諸説あるが、その一つによると、遠い昔、神々とその敵対者のプライモーディアルが戦った際、神を崇めていた一部のドラゴン族から現われた離反組とされる。
あるとき神々が大きな惨敗を被り、それを見た彼らの祖は神々にもはや勝利はないと認識した。バハムートもティアマトも従うに値しないと考えた者達をプライモーディアルは自陣に引き込み、その姿と性質を変容させたのだという。
プライモーディアルの尖兵と化し襲いかかってくる彼らに対し、クロマティックドラゴンとメタリックドラゴンは共同戦線を張ってでも彼らを滅ぼし尽くそうとしたが、混沌の元素のただ中に逃走する等して生き残った。
鞍替えした主君たちは最終的に神々に倒されてしまったが、彼らは自分自身を主とする方向に切り替え、これ以降も気ままに暮らしている。
スカージ・ドラゴンと同様に、それぞれの世界とその住民を相手に好き勝手にやる事こそがドラゴンの崇高な使命だと認識している。一部の者は一般ヒューマノイドが暮らす次元界に住んでおり、遭遇すれば文字通りの「災害」となる。
ドラゴン(MTG):現在D&Dの版権を持つウィザーズ・オブ・ザ・コースト(WotC)社のTCG『マジック:ザ・ギャザリング(MTG)』におけるドラゴン。偶然にも作中の五色のマナと代表的なクロマティック・ドラゴンの五色が一致した為、エキスパンション「フォーゴトン・レルム探訪」でクリーチャーカードとして採用された。その他様々なドラゴンのネームドキャラクターが参戦している。