概要
TRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』に登場するオリジナルモンスター。
手足のない球形の体に巨大な目玉を持ち、その目玉から常に照射される不可視の光線の範囲ではあらゆる魔法が無効化される。更に頭頂部から10本の触手が伸びており、この触手の先にはそれぞれ小さな目玉が付いていて魅了・睡眠・恐怖・石化・即死・分解などの強力な効果を持つ光線を発する。1体で手練れの冒険者パーティーを相手取ることが出来る強力なモンスター。高度な知的種族であり、作品によっては支配的地位にいる。
D&Dの版権は1997年にTSR社からウィザーズ・オブ・ザ・コースト(WotC)社に移ったことでWotC社のトレーディングカードゲーム『マジック:ザ・ギャザリング(MTG)』にも客演している。
登場エキスパンションは2021年7月発売の「フォーゴトン・レルム探訪」。
その他の創作での扱い
RPGや西洋風ファンタジーが日本にも根付き始めた1980年代のこと。
当時の国産のRPGやファンタジー漫画の多くが『ダンジョンズ&ドラゴンズ』と『ウィザードリィ』をネタ元として使っていたのは有名な話であり、端的に言えばパクリが横行していた。
当時の日本はまだ著作権がおおらかな時代であったので珍しいことではなかったのだが、D&Dの日本における販売代理店とアメリカの版元は権利関係に厳しかった。
漫画『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』で登場したビホルダーが単行本化の際には手足がつけられたうえに「鈴木土下座衛門」(正しくは「鈴木土下座エ門」)と言う名称に変更された一件(「鈴木土下座エ門事件」などと呼ばれることも)で、ビホルダーという怪物の扱いが一変した。
- 余談だが「担当の鈴木」氏が土下座したという訳では無く、そもそも鈴木という担当もいなかったらしい。
国産TRPG『ソードワールド』ではビホルダーそっくりの姿と能力を持つモンスターが「バグベアード」の名前で登場している。口が無い分こちらのお方に姿がよく似ていることからの名前であろう。ただしD&Dには「バグベア」というモンスターが別に存在している(大きなゴブリンといった感のモンスター)。
スクウェア社(現:スクウェア・エニックス)のファミコンソフト、『ファイナルファンタジー』の一作目に登場した魔物「ビホルダー」と「デスビホルダー」はリメイクにあたって「イビルアイ」「デスアイ」と改名され、デザインも変更されている(改名自体は海外版発売の時点で行われた)。その流れで、『Sa・Ga』シリーズにおいても「ビホールダー」が「デスアイ」へと変更された。
カプコンの『大魔界村』ではアーケード版に登場したビホルダー(球形だが目玉はない)が、移植版では「バイホルダー」という名前に変更された。
これらの事例から「名前を言ってはいけない魔物」などと揶揄されていたりもするが、実際は
名称を使うだけなら問題ない。
そもそも"behold"(意訳すると注視・ガン見)という一般的に使われている英単語があるので、名前自体は著作権の範疇には入っていないのである。
パクリとみなされるのは、「手足のない球形の体に、大きな目玉を持つというデザイン」「浮遊や攻撃を行う魔力や超能力」を備えたモノに「ビホルダーという名前」を与えることである。
例えば、上記のファイナルファンタジーでは後年の作品で「ビホルダー」という名称のモンスターが登場しているが、これは無数の眼を持つモンスターではあるもののD&Dのビホルダーとは似ても似つかないデザイン。
『ニンジャスレイヤー』に登場したビホルダー(ニンジャスレイヤー)は、名前に加えて眼力も使用するが人間なのでセーフ。
日本ファルコムのPCソフト『ザナドゥ』や『ソーサリアン』などにもビホルダーが登場しているが、後年のリメイクや復刻でも修正されていない。デザイン・能力・名前が揃っていないからだろう(リメイクや復刻の際に話を通したのかも知れないが)。
著作権に関する意識が厳しくなった2010年代後半でさえ、『Fate/GrandOrder』にゲイザー(「gazer 見つめる者」の意味)という「大きな一つ目で手足がなく邪眼で攻撃する、球形のモンスター」が登場しているが、別段問題にはなってない。
なおゲイザーもまたビホルダーの亜種として古くからD&Dに登場しているが、版元が権利を主張していないのでセーフである。
『ゴブリンスレイヤー』では「混沌の眷属であるため、真なる名前を口にしてはならない」というなんともメタな設定で登場している。当然作中では名前が明かされておらず「大目玉の怪物」とのみ呼ばれた。
最後に、『BASTARD!!』においてビホルダーが鈴木土下座エ門に変更された一件の真相は公式には未だ語られておらず(小説『BASTARD!! -暗黒の破壊神- NINJA MASTERガラ外伝』において触れられているが、あくまで噂をまとめた程度の表記)、「D&Dの販売代理店が抗議してきた」という説は風説に過ぎないことは留意しておきたい。