概要
アンバーハルク(Umber hulk)とは、『Dungeons & Dragons (以下D&D)』に登場する架空の種族(昆虫人間)である。
名前は直訳すると『琥珀色のデカブツ』であり、『褐色巨獣』とも訳される。
初登場は最初期のサプリメント『グレイホーク(Greyhawk)』で、以降D&D及びAD&Dの多くの版で登場している。
形態・生態
一般的なアンバーハルクの体長は8フィート(約2.4m)、体重は800ポンド(約340kg)。
二足歩行の人型生物だが、全身が硬い甲殻に覆われており、口には左右に開くクワガタムシのような大顎を持つ。
また一対の複眼と、その内側にヒトのものに似た一対の単眼を持つ。複眼は地底でも確実に獲物を捉える熱感知能力を有し、単眼は精神錯乱を引き起こす凝視攻撃を繰り出す。
D&D第3版(2000年)以降のアンバーハルクは昆虫らしさを強調したデザイン(特に顔面と前脚、および全体の体型)になっているが、初期の版における(ヒトとも獣ともつかないずんぐり体型の)デザインも人気がある。
アンダーダーク(「暗黒世界」ともThe Underdark)の深層に棲息。
頑丈な爪で地底を掘り進み、複雑な迷路のようなトンネルを形成している。
凶暴かつ貪欲な捕食者であり、特にヒト型生物の肉を好む。見た目に似合わず悪知恵が回り、落盤や落とし穴などの罠を設置して奇襲攻撃を行い、いざ戦闘となれば爪を振るい、両手で掴んで大顎で噛み裂こうとする。
属性は『混沌にして悪』だが、暗黒世界の住人の中にはアンバーハルクを飼いならしているものもいる。餌が十分に与えられていれば比較的従順である。
亜種
アンバーハルクには多くの亜種が確認されている。
- ヴォジャノーイ(Vodyanoy)
AD&D第1版に登場した水棲種。東欧およびロシアに伝わる水の精霊(妖怪)から名前を取っている。後年、『死海のヴォジャノーイ』なる上位種も登場。
D&D第2版。亜種というよりはアンバーハルクの別称か。鳥のような顔と鉤状の前肢を持つフック・ホラー(Hook Horror)も参照。
- 宇宙仕様アンバーハルク
AD&D第2版におけるキャンペーンセッティング『スペルジャマー』に登場。
- 真に恐るべきアンバーハルク(Truly Horrid Umber hulk)
D&D第3.5版。体長16フィート(約4.8m)超、体重は8000ポンド(約3.6トン)。
D&D第3.5版。
- アンバー・ラヴィジャー(Umber Ravager)
- アビサル・ハルク(Abyssal Hulk)
D&D第4版。デーモンが棲む奈落(Abyss)にまで掘り進み、魔界の住人と化した。
- アストラル・ハルク(Astral Hulk)
D&D第4版。アストラル海に棲む。
- シャドウ・ハルク(Shadow Hulk)
- アンバーハルクのトンネル掘り(Umber hulk Tunneler)
- アンバーハルクの『困惑させる者』(Umber hulk Bewilderer)
- ディープ・ハルク(Deep Hulk)
D&D第4版。
逸話
D&Dの創造者の一人であるゲイリー・ガイギャックス(Ernest Gary Gygax)は、D&Dの前身でもある戦略SLG『チェインメイル(Chainmail)』の駒として多くのミニチュアフィギュアを購入しており、その中にあった『大顎を持つ二足歩行の怪物』の人形からインスピレーションを得てアンバーハルクの設定を確立させた。
そのミニチュアはメイド・イン・香港の「そこらで袋づめで売ってたプラスチック製怪獣フィギュア」だったそうだが、後の時代になってなんとこれが日本の特撮ドラマの怪獣からデザインをパクったパチモンフィギュアだったことが判明した。
アンバーハルクのモデルとなったパチモンフィギュアについては有志の考察から『ウルトラマン』に登場する磁力怪獣アントラーが元ネタではないかとされている。
(ただしこのパチモンフィギュアはデザインのトレースしたのではなく融合させたりアレンジさせたりしているので、パチモンの元ネタについては考察に過ぎない)
ちなみにこのパチ怪獣フィギュアから考案された他のD&Dモンスターにも元ネタ考察がある(参考)