概要
『月前の湖』で白痴の蜘蛛、ロマを倒した狩人の前に現れる謎の女性。
ウェディングドレスのような純白の衣装に身を包んでおり、佇まいには王族らしき気品が窺える。一方、腹部には腹を裂かれた痕と思しき赤黒い染みが残っており、腕には手枷が嵌められているほか、瘦身で頬がこけ、顔や手足も血が抜けたように青白い為、まるで死人のような印象も受ける。
『月前の湖』では彼女が空を見上げると天に浮かぶ満月が赤く染まり、謎めいた赤子の泣き声と共に地上へ迫り寄ってくる。これと共にヤーナム各所では異常事態が多発し、かろうじて生存していた民間人たちも狂気に陥っていくなど、獣狩りの夜は破滅的な様相を呈し始める。
事実上のラストステージにあたる『メンシスの悪夢』ではメルゴーの高楼上層部でヤーナムの影を突破した先で佇んでいる。ひたすら「乳母の月見台」の方向を見上げているだけで会話もできないが、メルゴーの乳母を倒して赤子が眠りにつく声を聞いた後に戻ってくると、感謝の意を示すかのように一礼して消え去っていく。攻撃して殺害することも可能だが、悲鳴一つ上げず、血の遺志やアイテムなどは一切ドロップしない。
考察
ヤーナムの都市が築かれる以前、この地には「トゥメル」と呼ばれる古代文明が存在し、そこを治める王は代々同じ名を継ぐ女性だったとされる。つまり、彼女がヤーナムという街の名と同じ名前を持っているのは偶然ではなく、むしろ彼女こそが街の名の由来になった女王(の一人)と考えられる。
また、『ビルゲンワース』の学者たちはヤーナム地下の神の墓『トゥメル=イル』を暴いて「聖体」と呼ばれる何かを持ち帰り、それが医療教会誕生のきっかけになったと言われている。この「聖体」が何なのかを明言する資料はないが、前述の描写から女王ヤーナムこそが上位者メルゴーの母であることが推測できるほか、ヤーナムの腹が裂かれていることを考えると、墓暴き達が彼女の胎内から摘出したメルゴーの肉体、すなわち「ヤーナムの石」(後述)こそが「聖体」の正体と考えることが出来る。
つまり彼女はビルゲンワースや医療教会の欲望に運命を狂わされた犠牲者であり、同時にヤーナムの街が「獣の病」に冒された原因であるとも言えるだろう。
聖杯ダンジョン
本編では単なるNPC扱いのヤーナムだが、通常聖杯ダンジョン最終ステージ『トゥメル=イル』最下層ではボスとして登場する。胎内のメルゴーを摘出される前の姿なのか腹部が膨らんでいるほか、一言もしゃべらなかった本編とは異なり、不気味な笑い声を上げている。
聖杯ダンジョンは周回プレイを想定されている為か、DLCラスボスにあたるゴースの遺子(一周目)より高いHPを誇る。華奢な見た目通り連続攻撃で簡単に怯ませることが可能な反面、狩人がヤーナムに近づくと胎内のメルゴーが泣き始め、数秒後に神秘で拘束され行動不能になってしまうのが特徴。
第一形態では噴水のように劇毒の血を飛ばして攻撃してくる。拘束と状態異常ゲージの蓄積に気を配る必要があるほか、時おり周囲を吹き飛ばす爆風攻撃も使用する。
HPが80%以下になると手枷を引きちぎり、ナイフによる近接攻撃が可能となった第二形態へ移行する。この形態からは姿を消したあと2体の分身を召喚して三方から攻撃を仕掛けてくるほか、遠距離戦では狩人の足下に血の槍を召喚する攻撃、接近戦では狩人を空中へ吹き飛ばす念動力なども使用可能になる。
更にHP40%以下になるとナイフに血を纏わせて大剣にした第三形態になり、近接攻撃がより凶悪化。地面に剣を突き刺して多数の血の爆発を発生させる広範囲攻撃も解禁される。
特に第二形態から使用する分身と血の槍攻撃が厄介だが、分身は妊娠していない姿なので判別は容易であり、攻撃を一発でも当てれば消し去れる。血の槍も左手に手をかざす事前動作中に銃撃で怯ませてキャンセル可能。近接攻撃も銃パリィからの内臓攻撃を使用するチャンスと言えるので、発砲の速い獣狩りの短銃を持っておくと役に立つだろう。また、拘束を回避するためヒットアンドアウェイで戦う策のほか、重打武器などでひたすらダウンを取り続ける手もある。
弱点属性は炎と刺突。血を操るので血族のように見えるが、対血族属性は無効である。ボス部屋前ではは古狩人「女王殺し」を呼べるので、彼の手を借りるのも良いだろう。
撃破すると聖遺物「ヤーナムの石」をドロップする。血の塊が結晶化した赤子のようなデザイン、「女王の死により、そのおぞましい意識は眠っているが、眠っているに過ぎない」というテキストなど意味深なアイテムだが、残念ながらゲーム中に使用する用途はない。
余談
没データでは漁村入口の司祭に「ヤーナムの石」を渡すイベントが用意されていた模様。司祭はこの時、渡されたヤーナムの石を「ゴースの赤子」と呼んで感謝の意を示しているが、ならばこの石はメルゴーではないのか、何故それをヤーナムが持っていたのかという新たな疑問が生まれる。謎は深まるが、没になった以上その真相が語られることはないだろう。
先述の通り通常聖杯ダンジョンのラスボスとも言えるのだが、聖杯ダンジョンの真価は汎聖杯と追加儀式によるダンジョンのランダム生成、レアな血晶石ドロップを目指してのダンジョン周回にある。つまり『トゥメル=イル』の突破はその為の前提条件(「不吉なるトゥメル=イルの汎聖杯」の入手場所)に過ぎず、「ここからが本当のBloodborneだ」と評する声もある。