概要
アニメ『キラキラ☆プリキュアアラモード』におけるノワールとルミエルのカップリングタグ。
元々100年前のいちご坂を舞台にいちからの代まで影響を及ぼしたキラキラルをめぐる敵対関係であることが示されていたが、本編46話でルミエルとノワールが100年ぶりに相対したことで意外な事実が判明した。
(現代のルミエルはすでに故人だが、自らのキラキラルの全てをいちご山の祭壇に封じることでその魂は地上に残り続けており、46話ではそのキラキラルの力を全て凝縮させることで一時的に肉体を伴った姿で蘇っていた)
今より100年と少し前のこと。
人間の男性だったノワールはかつて戦場で生まれ育ち、決して許されない罪と孤独感を抱えながら流浪者として彷徨っていた。
ルミエルはいちご坂の工房(のちのキラパティ)に定住しながらスイーツで人々を笑顔にするプリキュアとしての使命を全うしていた。
そんな2人は、ノワールが工房前で倒れていたところを看病されたことがきっかけで一緒に暮らすようになる。
ある日ノワールがルミエルに教わりながらスイーツ作りを試したところ、これまで抱え続けた闇のキラキラルの影響からスイーツの灰化現象を起こしてしまう。
自分自身に対する決定的かつ残酷な事実を突きつけられた彼はルミエルに詰め寄る。
「私はお前とは違う。私は戦場に生まれ許されない罪を犯してきた。私の心は深くて暗い闇に染まっている」
「それでも私を笑顔にしたいと言うなら、私だけにスイーツを作れ」
戦争で人々の愛を受けられず、むしろ己も含め人間の残忍さを見続けてきたノワールにとって真正面から優しくしてくれたルミエルの愛が非常に有り難かったことは想像に難くない。傲慢な態度に見えるこの言葉は、愛を知らずに育ったノワールの不器用な告白だったのだ。
が、ルミエルはあくまでもみんなの笑顔を守るプリキュアである。
困惑しながらも「それは……ごめんなさい」と一言振り絞るしかなかった。
とうとうこの世の全てから見放されたと認識したノワールは絶望し闇の力を一気に解放してしまう。
いちご坂はあっという間に闇に染まり、ノワール自身もまた精神と肉体を分離し肉体側を闇のキラキラルを集めるための端末にすることで更なる力を得ようと画策するようになった(エリシオの正体がその端末である)。
そしてルミエルも「みんなを笑顔にする」というプリキュアの使命を背負うがゆえにノワールを敵と認識し、光と闇の熾烈な戦いが始まることになった。
しかしルミエルはあれからずっとノワールに対して罪悪感も背負い続けている。ノワールから告白を受けたとき、彼女の困惑の表情と言葉はノワールを「嫌い」だと誤解されるものだったかも知れない。少なくともノワール本人は「大嫌い」をぶつけられたと感じたはずである。別にルミエルはノワールを否定したいわけではなかったのに……
だが、闇に染まり切ったノワールはもはやルミエルの言葉を聞く耳は持たない。言葉で誤解を解くことはもはや不可能だ。
ルミエルとノワールの本当の思いは棚に上げられたまま、光と闇の戦いはルミエルの後継者であるキラキラプリキュアアラモードの6人に引き継がれることになったのである。
最終回
ノワールの人形であったエリシオの裏切りにより、46話でノワールとルミエルの2人はエリシオのカードに封印されてしまう。
エリシオはプリキュアとノワール一派の戦いは拮抗しており永遠に終わらないと悟っており、そもそもこの世界から光と闇の双方がなくならなければならないと極端な結論に至っていた。
エリシオがノワールとルミエルをカードに封じたのは2人の光と闇の力をカードを通じて我が物とするためだ。そしてエリシオは反発する2つの力を混ぜ合わせることで虚無の力を生み出す。その力で全人類の心から光と闇の双方を消し去り、誰もが感情を持たない「空っぽの世界」を作り出した。
しかしプリキュアの活躍により、48話で紆余曲折の果てにエリシオは人間の心の存在を認める。
そして、エリシオはノワールとルミエルのカードを捨て去りいずこかへと去っていった。エリシオの呪縛から解放された2枚のカードは風に乗って宙を舞いながらキラキラルの輝きへと分解されていき、世界へと溶けていった。
最終回(49話)のエピローグではそれから数年後の世界が描かれたが、中東らしき何処かの国を描いたシーンにて、ルミエルと髪色がそっくりな外国の少女(CV:安野希世乃)が登場している。声優までルミエルと同じであることから、視聴者の間では「ルミエルが転生したのでは?」と囁かれている。
同時にノワールと髪色がそっくりな少年(CV:鈴木みのり)も登場している。ノワール(CV:塩屋翼)と声優が異なるが、ディアブルのような犬を連れていたためこちらも「ノワールが転生したのでは?」と囁かれている。
この男の子が女の子のことをいじめて泣かしていた時、現地でキラパティを開いていた、大人に成長した宇佐美いちかが通りすがり「気持ちはわかるけどさ、そんなやり方じゃ伝わらないよ。好きなんでしょ?」と男の子を諌めていた。このセリフは非常に示唆的であると言えよう。「好きなんでしょ?」の言葉に男の子はテンパって否定しようとしていたが、いちかはそんな二人の目の前にうさぎデコレーションを施した自作のカップケーキを差し出す。それを受け取った二人は仲良く笑顔になって仲直りができたのである。
この2人の名前は作中では明かされておらず、EDのクレジットでも「男の子」「女の子」としか表記されてない。ノワルミを意識させる演出になっているのは疑いようはなく、書籍類では二人はノワールとルミエルの転生体であることが明言された(ノワールの転生体が連れていた犬もディアブルが転生した姿である)。
人間は思いと思いがすれ違えば互いに傷つけあう生き物だ。それでも、同じ「大好き」を共有できれば人は繋がることができる。それはいちかがルミエルの思いを受け継いてプリキュアを続けてきたことで習得できた信念である。今ここにいる男の子と女の子も、また「大好き」を共有できたことで仲直りができた。
子供達にスイーツをあげたら仲直りしたなんてことは、いちかにとっては特になんでもない日常の当たり前の光景に過ぎない。
だけど、この何でもない光景こそが、100年の呪いが解けた奇跡の瞬間であったのかも知れない。
そして本作の物語はこの子供たちの笑顔を映して完結した。
ファンからの反応
この突如発生した美男美女の悲劇的なロマンスを大きなお友達が見逃すはずもなく、46話放送終了直後からネット上では様々な反響が書き込まれた。
その中でも、フラれた腹いせに世界を巻き込んだというややネタ的な解釈がよく見られるが、第一次世界大戦期という時代背景で戦場で育ったことを考えたらノワールの価値観は現代日本人の感覚とはかけ離れていることも容易に想像でき、フったフラれたという軽い解釈に抵抗感を覚える視聴者もいるのは注意。
オフィシャルコンプリートブックのスタッフインタビューでは、ノワールの闇落ちの直接的な原因として「ルミエルという個人に振られたからというより、自分という存在を誰も救ってくれないと絶望したことが原因」と答えられている。
シリーズ構成の田中仁が(映像以外のところで説明しすぎるのは良くないと思うのですが、という前置きで)一応の補足という形で語ったことによると、ノワールは戦場での罪の意識により、自分がこの世界で普通に暮らすことは許されていないと自分で自分に枷をかけていたため、ノワールにとってのルミエルは恋愛対象である以前に「あなたもここにいていいんだ」と言ってくれた唯一の存在であり、そのルミエルがノワールの不器用すぎる告白に困惑の表情を浮かべてしまったことは、ノワールにとっては世界そのものから拒絶されたことと同義だった、としている。
ルミエルが自分に慈愛の笑みを浮かべてくれなくなったら、もうこの世界の誰も自分を救ってくれることはない。そう強く自覚してしまったことがノワールを闇の化身に変えたのである。
また彼らはどの姿だろうが名前が一切変わらないため、pixivだと全形態の組み合わせをサムネイルやタイトル、作品説明で区別する必要があるのも注意。これは単独であっても同様だが。