ブルミラ
ぶるみら
約300年前、ブルーとキュアミラージュは地球の神とそれに仕える巫女の関係であり、プリキュアとして共に戦うパートナーだった。二人は愛し合っていたが、ブルーは自分の神という立場からミラージュの「ずっと一緒にいたい」という想いを受け入れようとせず去っていった為、ミラージュは傷心(尚、左目の下にある涙マークはこの時に誕生した)。彼女は絶望の淵に沈み、ブルーを激しく憎悪するようになる。
そして現代。
ミラージュは幻影帝国の首領・クイーンミラージュとしてこの時代に復活を果たす。ブルーを苦しめるために彼が統治するこの地球の侵略を開始した。
そしてブルーもまたミラージュを倒すべき敵として割り切り、幻影帝国から地球を守る戦士であるプリキュアを生み出すことになったのである。
夫婦喧嘩は犬も食わないなどというもののの、この痴情のもつれこそが「世界中を侵略する幻影帝国と、無数のプリキュア軍団による大戦争」を生み出した原因である。
心の奥底では二人とも互いのことに未練があるのだが、世界と全人類の命運を賭けて戦う善悪二大勢力の長同士という立場である以上、もはやよりを戻すこともできないでいる。
プリキュアシリーズではかなりレアな「大人の男女関係」の複雑さを強調したカップリングである。
このカップリングの視点で本作の世界観を一言で語ると「地球全土を巻き込んだ壮大な痴話喧嘩」ということになってしまう。史上最強のはた迷惑カップルであるが、神様たちの夫婦喧嘩は時として人類や世界を滅ぼすのは世界中の神話を見てもよくあることである。ブルーがプリキュアを次々生み出すのに対抗し、ミラージュがファントムを使ってプリキュアたちを次々封印しているという構図は、イザナギとイザナミの離縁の神話も想起させる。
ブルーが「恋愛がこじれると大変なことになる」という理由でプリキュア恋愛禁止令を発令しているのも、このように神話級の規模の皆様は失恋の恨みや悲しみから本当に世界を滅ぼしかねないので、ある意味で仕方ないかも知れない。
序盤のころは、ミラージュとブルーの因縁は隠されており、互いに敵同士という視点が中心だった。
だが、ミラージュはブルーという個人に対して強い憎悪を持っていることは度々見せていた。
そしてブルーもまた、ミラージュを敵とみなしながらも、そこにためらいがある様子が常々窺えた。
このことから、この二人は過去に深い因縁があったのではないかという推測は容易ではあった。
8話にてぴかりが丘には「千年前に神様と巫女が恋に落ちた」という伝承が語られ、13話でのミラージュの回想シーンにより、その神様がブルーで巫女がミラージュであることがほぼ確定的となる。
24話でミラージュとブルーは邂逅し、「愛、勇気、優しさ、幸せ… それら全てが幻だと教えてくれたのはブルー、あなたよ」と激しい憎悪を見せたことで、この二人の過去に特別な因縁があったことが示される。
ブルーは本当はミラージュと戦いたくないということを愛乃めぐみはうすうす気づいており、29話では仲間たちとともにブルーに詰問。ブルーは観念して、かつてミラージュと自分は恋人同士であったこと、そして今でも本心ではミラージュを諦めきれていないが、彼女が世界に不幸をバラまいている以上はミラージュを許していいわけでもないと、神としての立場ゆえに苦悩していることを告白した。
一方ミラージュもブルーのことを憎悪しつつも、今まではブルーに直接的に危害を加えることを禁じていた(13話でのブルーとファントムのやり取りから推測される)。
この点については、ミラージュがブルーへの未練が残っているからと見ることもできるが、世界が不幸に染まっていくのを見せつけられる方が、ブルーにとっては殺されるより苦しいことだろう、と考えてのことかも知れない。実際、ミラージュによって世界が穢されていくことにブルーの心はずっと苦しめられることとなった。
しかしこの膠着状態にも変化が訪れる。29話で、側近のディープミラーに誑かされて「ブルーが愛する女であるキュアラブリーを使って、憎んでいるあなたを抹殺するつもりだ」と思い込まされ、ついにブルー討伐をファントムに命じた。この計画は失敗に終わったが、それ以降のミラージュはブルーを攻撃することにためらいがなくなる。しかし、この時点からブルーを守る「ハピネスチャージプリキュア」がシャイニングメイクドレッサーの力を手に入れたため、下手にブルーを襲っても返り討ちにあうだけというリスクをかんがみて、「奥の手」の投入までは静観していた。
そのミラージュの奥の手が開帳されたのは38話。キュアテンダーを洗脳して、邪魔なハピネスチャージプリキュアと戦わせたのだ。相手が同じプリキュアであるために本気で戦えないハピネスチャージプリキュア。逆にキュアテンダーは圧倒的な強さで猛攻し、それをかばおうとするブルーにも容赦なく攻撃が向けられる。これはミラージュが完全にブルーを捨てる決意をしたことに等しい。
最終的に、思いを歌に乗せて相手の心に直接語り掛ける合体技「イノセントプリフィケーション」の覚醒によってテンダーは洗脳から解放されるが、その余波で、テンダーを操っていたミラージュの心にブルーの思いが直接届く。ブルーの「本当はミラージュを誰よりも愛していた」という本心を叩き込まれ、ミラージュは心が大きく揺らぐ。
そしてブルーがさらに何かを伝えようとするが、それをディープミラーに邪魔されてブルーの思いは最後までは届かなかった。ミラージュは半狂乱になり、ブルーは何を言おうとしていたのかとディープミラーに激しく問い詰めた。それは女王の威厳など欠片も感じられない、恋する少女の姿に過ぎない。
しかしディープミラーはミラージュに「ブルーの思いが過去どうだったとしても、最終的に恋愛より神の使命を優先した事実は変わらない。つまりあなたはブルーに捨てられた」と囁き、ミラージュは再び「愛は幻」という楔を植え付けられてしまう。
これらのことから、ここまで二人の関係がこじれてしまったのはディープミラーが影で暗躍した結果ではないかとも思われるが……。
ついに迎えた決戦、ブルーはミラージュが愛や幸せを否定するようになったのは自分の責任だと認め、それでも本当の想いを伝えようとするが、ミラージュはブルーがラブリーを使って自分を倒しに来たと思い込み全く耳を貸さない。
ラブリーとミラージュは激しい戦闘を繰り広げるが、その中でラブリーはミラージュの本当の気持ち、ブルーを愛している気持ちを感じ取る。
激闘の末ミラージュはイノセントプリフィケーションにより浄化される。ボロボロになったミラージュをブルーは強く抱きしめた。
「ミラージュ、君を愛している。300年前からずっと。ミラージュ、もう君を離さない!絶対に!」
ミラージュはブルーの腕の中で涙を流し、元の巫女の姿に戻った。二人は見つめ合って微笑み、そっと唇を重ねた。
それからミラージュはブルーのブルースカイ王国大使館でブルーとともに暮らすようになる。
ブルーとの関係は非常に落ち着いた感じのもので、常にブルーの傍にいながらも適度な距離感をもって、あまりベタベタしたカップル的な様子は見せず、ある意味で長年付き添った老夫婦のような自然な関係性が保たれていた。
最終話でブルーが地球を離れて惑星レッドの復興に勤めることを決意したときは、何もいわずにブルーについていくことを表明する。ブルーもそれを柔らかに笑って受け入れた。
しかし、これは実際にはミラージュにとっては過酷な運命でしかない。生命のまったくない荒れ果てた惑星で骨をうずめることになるのだから。そして、そんな過酷な運命をブルーは止めなかったのも示唆的である。ブルーにとってミラージュはもはや「自分が守るべき人間」ではない。神としての自らのあり方に巻き込んでも構わない相手なのだ。
「神の嫁」として見込まれた巫女が、常世に迎えられて人の世を去る——— 幽玄とも言える構図が最後に完成し、二人は始まりの男女となった。
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