解説
白雪ひめ(キュアプリンセス)と相楽誠司はめぐみを通じて第3話で知り合った。
プリキュアとしての秘密を共有していることもあって、ひめにとっての誠司はただの「めぐみの友達」ではなく、「二人目の仲間」というべき大きな存在である(第4話)。
誠司はめぐみと違って、自分から積極的にひめと関わり合いになろうとはしないので、ひめと誠司の関係は「ひめの方から誠司に近づいていく」という側面が強く表れている。
自分の方から友達作りをしていこうというひめの成長の要素が、誠司との友情関係の深まりで表れているのである。
恋愛カップリングとしての誠ひめ
めぐみは誠司のことを異性としてほとんど意識していなかった一方で、ひめは誠司のことを最初から異性として見ている(というより男子に免疫がなかった)。
この点に刺激を受け、ひめが誠司に恋心を抱いたら・・・といおう仮定の二次創作カップリングがこのタグでは初期から活発に行われていた。
ただしこれはあくまでファンアートによる妄想に過ぎず、本編でひめが誠司に恋愛感情を抱くような展開はまずないだろうという声の方が優勢であった。
なぜなら、本作では幼馴染同士のめぐみと誠司が恋愛関係になるだろう(→誠めぐ)という予想が多かったためである。ここでひめが誠司に恋心を抱くことはプリキュア同士の間で三角関係が生まれるわけで、プリキュアシリーズとしてはあまりに重すぎる展開になるからである。
OP映像でブルーを見て頬を赤らめるめぐみを見てむっとする誠司、そこに割って入ってくるひめというシーンがあり、それを持ってひめとめぐみと誠司の三角関係のフラグとする向きもあったが、これはむしろ「初めての友達であるめぐみを、誠司にとられると思って嫉妬してる」という誠めぐを表すフラグとみる解釈の方が多かったようだ。
17話にてひめが誠司と急接近する話が描かれ、その放送後から恋愛カップリングとしての誠ひめのイラスト投稿数も増えてきたが、この話の基本は「誠司がめぐみを大切に思っていて、ひめもめぐみを大好きだから、ひめは誠司の気持ちに強く共感する」という流れであり、誠ひめのコンビを使って誠めぐのカップリングを間接的に描くという、かなり高度な演出が行われている。
25話でひめが誠司に危ないところを助けられたことでひめの誠司に対する見方が少し変化。しかし、同時にその話で「誠司はめぐみを好き」ということをひめが知ってしまうという事件も発生する。
翌26話で、ついにひめが誠司に対して恋心を自覚し、27話ではひめ本人が「誠司とめぐみとの三角関係になることを苦悩する」という、プリキュアシリーズではかつて描かれたことのない視点の物語が展開された。
しかし27話でひめは、めぐみにとっての誠司への思いは恋愛未満なのではなく恋愛感情のさらに先にあるような尊く強いものであることを思い知らされる。めぐみに比べれば自分は「恋に恋していた」だけで、本当の意味で誠司を好きになったのではないと気付き、めぐみと誠司を見守っていこうと決めた。
この一連の流れはかなり多様な解釈が可能な演出が仕込まれており、「ひめの本心」については人によってさまざまな見方がされている(後述)。
公式における恋愛カップリングとしての誠ひめはこの時点でいったんの終結がされ、ひめにとっての誠司は「かつて好きだったかも知れない、大切な人」というかなり達観した関係性で、再び友情がはぐくまれることになる。
表記について
男女カップリングは「男×女」表記が基本だが、受け攻めが逆転した「ひめ誠」タグも存在する。だが「誠ひめ」に比べると少数派で、かつ閲覧者によって後から付けられているものが多い。
作品としては、ひめの片思い要素が強いものや、ひめが積極的に誠司に迫っているものに付けられる傾向にある。「女攻め」の記事も参照。
各話ネタ
- 第3話
誠司がプリキュアについての事情を知り、自分たちの協力者になることになったが、男子と話すことに慣れていないひめは誠司から握手を求められ固まってしまった。
ブルーがめぐみと誠司に「二人は付き合っているのか」と質問した際にひめが赤面している。二人は否定するが、ひめは「本当に付き合ってないの?」と疑っている。
- 第4話
ひめの初登校の日。登校の道中でひめが「もう二人も友達がいるんだから、もっとつくれる」と期待に満ちたことを述べる。誠司は「(一人はめぐみとして)二人って誰だよ」と尋ねると、ひめは笑顔で誠司を指さす。めぐみは「友達の友達は友達でしょ?」と誠司に述べ。誠司も別に何も言わずに受け入れた。
しかし当のひめはクラスでのみなからの好奇の視線に耐えられず、そのまま卒倒して倒れてしまうという失態を犯してしまった。めぐみはひめにもっと前向きになろうと無責任な励ましをするが、誠司は「めぐみは自分の考えをひめに押し付けているだけだ。ひめはめぐみみたいにガンガン行動できるタイプじゃないんだから、もう少し、相手の立場になって考えてみろ。」とめぐみを諭した。
- 第6話
昼食を食べ損ねて空腹のまま町を彷徨うことになったひめは、たまたまジョギング中のゆうこと誠司に遭遇。誠司に「腹でも減ってるのか」と図星を突かれ、「シャー!!」と奇声を発した。まるで懐いていないネコである。
- 第9話
プリキュアとして手っ取り早く強くなりたいと誠司に空手を教えてもらおうとするが、誠司は地味な防御の型しか教えてくれず、ひめはあからさまに不満を述べる。すると誠司がブチ切れして空手の神髄について滔々と説教しだす。普段は相手にあわせる誠司だが、空手のことでは一過言あるようだ。
- 第12話
誠司も一緒に勉強すると言ったときにひめが一瞬顔を赤らめるシーンがあった。
- 第13話
大使館のテレビで王子様とお姫様が出てくる番組を見て、プリカードでお姫様になりきりはしゃぐひめ。その際誠司に「テレビ見るのに着がえる必要無くね?」と突っ込まれる。
- 第17話
初の誠司とひめメイン回。
誠司の空手大会の応援に行こうともりあがるめぐみ達のテンションについて行けないひめ。
いつの間にかみんなで誠司のためにお弁当を作ることになり、ひめも巻き込まれる。
その日の夜にキュアラインでめぐみとガールズトーク。
誠司は相手がどんなに無様な失敗をしても笑ったり見下したりせず、むしろ相手が頑張る姿を応援してくれる絵に描いたような好青年であるが、自分のダメな部分に強いコンプレックスを持つひめはそんな誠司の態度が自分を馬鹿にしてるようにも感じるようだ。でも妙にくすぐったいような微妙な気持ちにもなるらしい。
「本当、誠司ってイヤミよね。うー、…思い出したらモヤモヤしてきた…」
そして、前々からの疑念もあって、ひめはめぐみに「やっぱりめぐみって誠司のこと好きなんじゃないの?」とストレートに問い詰めてみるが、めぐみは幼馴染を応援するのは当然といつも通りの返答。そして誠司が今まで本当に空手を頑張ってきたことを伝える。しかしひめはそんなに頑張る理由やそれを応援することの意味が理解できない。めぐみは「ひめも誠司が頑張る姿を見れば、応援したくなると思う」というのだが……
翌日、手に怪我をしながらもお弁当の練習をするが、だし巻き卵がうまくつくれず練習用の卵を全部つかいきってしまい、新たに調達のためにひめに買い出しが任される。その道中で河原でイメージトレーニング中の誠司と出会い、イライラが募っていたために誠司に「あんたのために苦労してる」と八つ当たりしてしまった。
しかし誠司はその理不尽に怒ることなく、逆にひめを気遣い謝意を述べる。練習が終わったら手伝うから、と言う。ひめは待っている間その姿を見ながら、どうしてそんなに頑張るのか疑問に思うが、ふと誠司の手足の包帯や顔の絆創膏に気づき、自分の手の怪我と見比べる。
「なぜ誠司はそんなに空手を頑張るのか」と聞くと「元々興味があったし、強くなれる気がしたから」と平凡な答えの後に「きっかけはめぐみだったかもしれない」と意外な答え。
そこにオレスキーが率いるサイア-クとチョイアーク軍団が現れる。誠司はチョイアークたちは任せて、ひめはサイアークを倒すのに集中するように指示。実際に空手の技でチョイアークたちと対等に渡り合える誠司に関心して、その言葉に従う。
しかし、やはり二人だけでは限界があり大ピンチ、というところにキュアラブリーとキュアハニーがやってきて窮地を救った。ラブリーの荒ぶる様子を見ながら誠司は「めぐみは小さい頃から、皆のためにいつも全力で頑張る。その姿を見てると自分も負けてられないと発奮せざるを得ない」と吐露する。ゆうこもそれに同感。
そしてひめもまた同じ思いを心の中に秘めている。誠司の告白を聞き、自分もめぐみに負けないように頑張ろうと決意を新たにしたひめは、キュアプリンセスの新技「プリンセスゲンコツツインマグナム」を開眼させ、ラブリーとともにサイアークを撃退した。
空手大会のときはひめが作った様々な種類のだし巻き卵を大量にお弁当にもってきた。ひめは口では「感謝しなさいよね」と上から目線な言い方をしたが、誠司はすごい量だと言いつつも呆れるような顔は見せずに、ちゃんと食べたうえでおいしかったと満面の笑顔でひめに述べる。いつもなら犠牲者を助けたら出てくるプリカードが、そのとき出現。ひめの幸せな気持ちに反応した…?その後ひめは優勝した誠司を見て、「頑張る人のために頑張るって、一番の応援かもね」と考えるほどの成長を見せた。
- 第18話
めぐみ達四人でウェディングドレスの話をする中、ひめが誠司にお嫁さんに着てもらうならドレスか着物か尋ね、誠司がドレスと答えると、「誠司はドレスだって!」とわざわざめぐみに言う。めぐみはきょとん顔。
- 第25話
合宿所にやってきたクラスメイトの石神りんが、誠司を好きだという。ひめは彼女から誠司は好きな人がいるのかと問われ、それをゆうこに尋ねると「好きな人はいる」と答える。ひめはそれは誰なのかと興味津々だが教えてくれない。その後、ひめは誠司が貝採りに海へ潜るところを尾行し、驚かすために人魚姫になって潜るも、魚につつかれ勢い余って肘を怪我してしまう。それに気がついた誠司に助けられる。
誠司に絆創膏を貼ってもらい「貝採りを手伝ってくれたんだよな」とフォローされ、ちょっぴり紅く染まるひめの頬。
日も暮れかけるころ、りんが誠司と二人きりになったところで告白をする。誠司は断り、りんも誠司は好きな人がいるのだと察する。その一部始終を見ていたひめとゆうこ。ひめが誠司の好きな人をゆうこに再び尋ねると、「そんなのめぐみちゃんに決まってるでしょ」との答え。いおなも同意し、ひめもやはり分かっていたようで「やっぱり!?」と言っている。
- 第26話
二度目の誠司とひめメイン回。
強化合宿から電車で帰還中、皆疲れて眠っている中ふと目を覚ましたひめは、一人起きてめぐみを見つめる誠司に気付く。その様子を面白がって茶化すひめ。
水筒が空になりのどが渇いたひめは途中の駅で誠司にジュースを買ってもらうが、自販機の当たりが連続している間に電車が出発してしまい、二人は無人駅に残される。プリチェンミラーもキュアラインも車内に置いてきてしまった二人は仕方なく公衆電話を探すが、見つからずに歩いていると、途中でひめが足を痛めてしまう。そこで誠司はハンカチを濡らしてきてひめの患部に巻いてあげ、更におんぶしてくれる。しかしひめは「めぐみには黙っていてあげる。あんたの好きなめぐみが誤解したら困るでしょ?」とまたも誠司をからかい、誠司の方は「なんで俺がめぐみを!」と顔を真っ赤にしてごまかす。
そこへホッシーワ達が現れ、変身できないひめの代わりに誠司が身を呈して戦う。
「心配するな、俺が守ってやる!」
その勇姿と途中のセリフにひめは顔を赤らめる。
しかし誠司は敵からダメージを受け、倒れてしまう。そこへめぐみ達が駆けつけ、ひめもプリキュアに変身してサイアーク達と戦う。3話で傷ついた誠司を見たラブリーのように、プリンセスも激怒して、プリキュア4人でも苦戦したサイアークを一人で浄化する。
電車に戻った際、ひめは誠司に対しての恋を自覚する…!?
「うそでしょ…、私、誠司のこと、すすすす好きに……!?」
- 第27話
夏休みの宿題をみんな一緒に片付けようということになってハピプリメンバー全員で大使館で勉強会が開かれる。
しかしひめは前話の件から、妙に誠司を意識してしまいまともに目をあわせられず、あきらかに挙動不審な様子を見せる。ゆうこ、いおな、リボンの三人は心配して何か悩みでもあるのかとひめに尋ねると、自分の気持ちを整理できず困っていたひめは藁をもつかむ気持ちで三人に「誠司に恋をしてしまったかも知れない」と相談する。
しかし、リボンは「ひめに恋愛なんて早すぎる」として拒否感を示した。いおなは「誠司がめぐみを好きである以上は、この恋はチームワークの乱れを生む」として懸念を見せる。ひめ自身も妙な三角関係でめぐみや誠司とギクシャクするのは嫌だと大いに悩む。あたかも、ブルーが危惧した「恋愛がこじれると大変なことになる」というリスクがここにきて表面化しつつあるようだった。
その後、リビングでめぐみを含めたみんなで雑談していたとき、めぐみには好きな人とかいないのかという話題が振られる。3話や17話のときのようにあっさり否定する……かと思いきや、めぐみはなぜか赤面してテンパりながら必死に否定。いつもとの様子の違いにひめはいぶかしむ。そう、3話や17話では「めぐみは誠司のことが好きなのか」という質問だったが、今回は相手がだれかを限定しなかったのだ。ということはめぐみは誠司以外の誰かを……?
ゆうこは「めぐみはブルーに惹かれつつある」ということを看破し、そのことをひめだけに説明した。めぐみと三角関係になったらどうしようと悩んでいたひめは、「めぐみを巡ってブルーと誠司が争う三角関係がすでにできあがってる」と思い込んで大騒ぎするが、ゆうこはそういうことにはならないだろうと静かに説明した。誠司はめぐみを本当に大切に思ってるからこそ、めぐみが自分以外の誰かを好きになったら、それを温かく見守るだろう、と。
「本当にその人が大好きだったなら、自分のことを相手に好きになってもらえなくても、相手の幸せを見守りたい」
これがゆうこの恋愛哲学だという。そして、自分もかつてすごく恋をしたことがありそういう結末で終わらせた、と衝撃の過去を告白する。
「ひめちゃんは? 相楽くんとめぐみちゃんがカップルになったら見守らない?」
「わからないよ。でも、めぐみのことも誠司のことも好きだし… 」
恋愛初心者のひめは、ゆうこや誠司の達観した恋愛観はよくわからず逆に困惑を深めてしまった。
その頃、当の誠司はブルーの方がめぐみをどう考えているのかを問いただしていた。だが、ブル-はあくまですべてを見守る神の立場として誰か特定の人物のみをより愛することはしないと言う。
このことは誠司を深く悩ませ、河原で悶々としていたところをナマケルダに襲われ、サイア-クにされてしまう。誠司を取り戻すため果敢に戦うプリキュアたち。ナマケルダは「この少年は恋に悩んでいたようだ。恋愛なんかにうつつを抜かすからこんな目にあう。」として恋愛なんてくだらないと見下す。さらに、ラブリーとプリンセスに「この少年の恋のお相手はあなたですかな」とからかい、煽った。
プリンセスはその煽りに赤面して半ばパニクりながら必死に否定したが、ラブリーの方は「恋とか愛とかよくわからない。けど、誠司は私の大切な人なの」と迷いなく答える。
その様子を目の当たりにしたひめは、何かが吹っ切れたようだった。
「ラブリーの言葉、ズシンと来たわ! 誠司は私にとっても、大切な人だから!」
誠司を取り戻すという共通の思いで二人は心を合わせ、合体技でサイアークを浄化。
元に戻った誠司にめぐみは駆け寄るが、別段心配した様子もみせず、笑顔でハイタッチをする。
「おかえり!」
ひめはその様子をほほえましげに見守る。この二人を見ているとこちらも幸せになってくるから応援したい。その気持ちに嘘はないことを確信した。
だけどそれならば自分は失恋したことになるのかなと呟くが、「誠司を異性として好きになったのではなく、恋の憧れに恋をしていただけ」とリボンは保護者目線で言い聞かせた。
そこでゆうこが吊り橋効果のことを例に出して、「危機的状況での胸のドキドキを恋と錯覚することもある」と補足。
「ひめちゃん。相楽くんのことを思って、胸に手をあててみて。そのドキドキは本当に恋?」と問いかけた。ひめは言うとおりにしてみて、数秒の後「ドキドキしない」と語った。
ひめは皆の説明を一応受け入れて、本当の恋じゃなかったのかも知れない、と誠司への気持ちにいったんの区切りをつけることにした。
そしていつものような明るい笑顔で、吹っ切れた様子で語る。
「よかった! これでこれからも仲良くやっていける!」
元気を取り戻したひめの姿に、リボンは一安心。三角関係の懸念もなくなっていおなもほっと一息ついたのだった。
しかし最後に…(詳細は後述)
- 第37話
前話で誠司がめぐみがブルーに抱き付くシーンを目撃。それ以来、誠司はめぐみとブルーの二人が一緒にいるのを見るのがつらくなってきた(詳細はブルめぐの36話参考)。
そんな中、ぴかりが丘でハロウィンまつりが始まる。「二人で半分こすると二人とも幸せになれる」という名物のカップケーキを誰とわけるかという話となる。誠司は当たり前のようにめぐみに半分を与え、めぐみも毎年のことと当たり前のように受け取る。その後、同じようにブルーもめぐみに半分を与えるが、あきらかにめぐみの反応が違う。顔を真っ赤にし、それをブルーに悟られないように飲み物を買ってくるといって逃げ出す始末。それは誠司の知らないめぐみの姿。それを目撃した誠司は自分の中に芽生える感情を拳を握りしめて抑え込む。
ひめはそんな誠司を見ていられず、珍しく本気で誠司に詰め寄る。
「ねぇいいの? 神様にめぐみとられちゃうよ! ねぇ!?」
その様子は26話で誠司をからかっていたときとは全く違う。今のひめは、誠司とめぐみの二人が幸せを共有してくれることを望んでいるのだから。
誠司はそんなひめの真剣さを悟ったか、これまた26話のようなごまかしはせずに本音で答えた。
「よくねぇよ」
だがそのあと、それでも誠司は「めぐみの気持ちは取るとか取られるとかじゃない」と、自分からめぐみに気持ちを伝えるべきでないという態度を貫く。めぐみがブルーに惹かれつつあるならば、その芽を摘むようなことは控えるべきなのだ。誠司は何よりもめぐみの幸せを望んでいるのだから。憎むべきは、二人を温かく見守る覚悟ができていない自分の弱さ。たった今、ひめに吐露してしまった本音がそれだ。
そして自分を心配してくれたひめに「ありがとな」と感謝を述べる。
そのときの微笑む誠司の表情に、ひめは逆にショックを受け、瞳を潤ませた。
その後、飲み物を買ってきて戻ってきためぐみにちょっとイラついた表情で詰め寄るひめ。「神様とカボチャのケーキ、半分こしてたでしょ」
恥ずかしいところを見られたと思っためぐみは照れた顔で「うん…」とうなずく。これも、ひめの知らないめぐみの姿。めぐみが逃げるようにひめの元を走り去ったあと、ひめは「めぐみはブルーのことが好きだ」と確信する。
いおなやゆうこは「現状では、恋愛というより親戚のお兄さんへの憧れのようなもの」として、まだ決定的な段階まではいってないと分析していたのだが、ひめは浮かない様子。
「でもなぁ…… う~ん…… 誠司、どうするんだろう……」
(この後の誠司はブルめぐの37話を参照)
「本当に大切な人」
ひめが誠司に恋したかもしれないとしてドタバタ劇が描かれた27話は、結局それは「恋に恋していただけの錯覚」だったという形で決着がついたが、最後の最後に流れたシーンが物議を醸している。
これは恋じゃなかったのかも知れないと仲間たちに宣言をした後、仲間たちからはなれた場所で、一歩先を並んで歩いているめぐみと誠司をじっと見つめながら、
「本当に大切な人…か」
と少し寂しげに、だがどこか慈しげに呟き、もう一度、胸に手をあてるのだ(その瞬間のひめの表情は見えない)。そして画面がフェードアウトして話が終了する。
この数秒のシーンはさまざまな解釈が可能であるが、これを、誠司への恋心は錯覚ではなかったのではないか、と見る声がいくらかのファンの間から出ている。
めぐみと誠司の二人ともに幸せになってほしいゆえに、この恋心を「なかったこと」にして封印したのではないかということである。
この場合、ゆうこの恋愛哲学をひめなりに実践したということになる。
そしてもうひとつ特徴的な点として、この話ではハピプリチームの多くが誠司とめぐみをベストカップルと考えているがゆえに、ひめが誠司に恋愛感情を持つことを歓迎しない空間であることが如実に表れていることがある。
どうあがいてもこの恋がこじれるとひめが失恋して傷つくことは既定路線であり、リボンやいおなはひめのことを思うからこそ、それを強く心配していた。
そもそも「誠司への恋心は錯覚だ」ということはひめが言い出したことではなく、すべて仲間たちが言い出した解釈である。ひめの恋愛感情を「なかったこと」にしたがっているのはひめ自身ではなく仲間たちだという構図になっている。ひめは、周囲の仲間たちの不安を解消させるためにも、その解釈に乗っかったとみることもできる。
なお、この話では、ゆうこだけはひめの恋愛を否定しない中立の立場をとっているように見える。
しかし一部の視聴者からは、ひめが自発的に恋を諦めるように誘導しているのではないか、と指摘されている。
そもそも「大好きだからこそ、身を引く」という哲学をひめに教えた張本人はゆうこである。「相楽くんならそうする」との言い方で誠司のことで悩むひめの共感を得たうえで、私もそうしたと経験者としての目線を語るところもなかななか高度である。
吊り橋効果の件を持ち出して、「胸に手をあてて、ドキドキするか」と儀式のようなことをひめにつきつけたのもゆうこである。
最後のカットを目撃せずにこの場面だけ見てしまうと、ひめがまだまだお子様だなと苦笑が漏れるようなオチになるのであるが、そのおかげで、誠司との恋愛が終わったという結果を、痛々しくならずに仲間たちの前で宣言できている。失恋の痛みを少しでもやわらげてあげようと思ったゆうこなりの優しさ……なのかも知れない。
逆にひめを「失恋して可哀想」と小さいお友達に感情移入させる形で決着させると、めぐみへの反感が生まれかねず、それこそブルーの言う「恋愛がこじれて大変なことになる」が視聴者レベルで発生してしまう。そういう意味ではひめはめぐみのためにも痛々しさを見せるわけにはいかなかっただろう。TVの前の子供たちが大人になって見返す機会があったときに、ひめや仲間たちの気持ちを改めて考えることができるように、多様な解釈もできる演出になっているのかも知れない。
実際、恋愛関係としての誠ひめは進展しても報われぬ恋となることの予兆はかなり初期からそこかしこに見える。
誠ひめのフラグが初めて明確化した17話は、「めぐみのことが好きな誠司を、ひめは好んでいる」という話であり、この時点でとひめにとっては誠司とめぐみを切り離せないという結論が最初に出てしまっている。ひめが誠司に対して初めて異性としてのトキメキを感じたのは24話で溺れかけたところを助けてもらった場面であるが、これがアンデルセン童話『人魚姫』のオマージュである時点で、恋愛ネタとしては最悪のフラグとしか言えない。
作品テーマ的な視点でみると、恋愛関係としての誠ひめは「失恋にどう対処するか」を描くための要素であるとさえいえる。27話はひめだけでなく、ゆうこ、誠司、ブルーの三人もが「どのようにして恋を終わらせるか」という視点をもって描かれている。従来のプリキュアシリーズで恋愛ネタが出てきたときは、明るい未来を予兆させる視点でしか描かれなかったため、誠ひめはかなりユニークな描き方がされているといえよう。
そしてこの後の44話では、めぐみがブルーに失恋してメンタルがぐちゃぐちゃになってしまうというプリキュアシリーズ史上でも伝説に残る展開が描かれた。翻って誠ひめ回を見てみると、ひめは本当に上手に恋を終わらせたことがとてもよくわかる。
ひめの誠司への感情が、本当に恋ではなく錯覚だったのか、それとも「恋ではなかった」という形で収めることをひめが決意したのか、その答えを公式から語ることはまずないと思われるが、ひめが誠司への恋愛的な感情を「止めた」ことは変わらないことだろう。
恋心を封印せざるを得なかったのなら、石神りんのように思いを伝えて玉砕するよりもつらいことなのかもしれない。しかしだからこそ、この経験がひめの恋愛観を大きく成長させることになったのは間違いない。
27話放映直後に発売された雑誌『アニメディア』では、「本編ではひめの恋愛が勘違いという形で終わったので、秋の映画ではひめの恋愛も掘り下げようと思っている」との趣旨をスタッフが語っている。