概要
鞘翅目(コウチュウ目)・コガネムシ上科・クワガタムシ科・クワガタムシ亜科の属のひとつ。
学名からコロフォン属(Colophon)とも呼ばれる。
南アフリカ共和国南部の山岳地帯のみに分布が確認されている。
体長は15mm〜35mm程度である。大顎は発達せず、フンコロガシのように前胸が丸く盛り上がった体型を持ち、一般的なクワガタムシと比較して特異な外観となる。種によっては前脚の脛節の湾曲や色の入りが見られる。
大半の種が登山家により発見されており、登山家の名前が付けられた種もいる。
現在は本属に分類される全ての種がワシントン条約(Ⅲ類)により絶滅危惧種として保護されているため、一切の採取・流出が固く禁止されている。この保護措置はクワガタムシでは唯一である。
上記の理由により生体が国内に流通したことはなく、規制前に採集した個体の標本のみが流通する。その上、その標本自体の流通が極稀であり、非常に高額な値段で取引される。そのため、最も入手が難しいクワガタムシの一つとされている。
生態
標高1,000〜2,000mのテーブルマウンテン頂上部に生息している。高山植物の草原や苔が自生している程度で、成虫の餌になり得る高い木々は生えていない。
南半球では夏となる12月〜2月が発生時期となり、曇りや濃霧により強い日差しが遮られ涼しくなったタイミングのみ活動するとされている。
幼虫は土に埋まった植物の根を食べているとされる。
成虫は餌を与えても食べなかったとの記録があるため、幼虫の時期に蓄えた栄養で活動している可能性がある。
後翅は退化しており飛翔能力は持たない。そのため、他種の生息域に踏み入ることができす、テーブルマウンテンごとに異なる種が生息する。
ごく僅かな個体数しかおらず採取が禁止されていることと、生息地への到達が困難なことから、詳しい生態はほとんど解明されていない。
主な種
ウエストウッドマルガタクワガ(C.westwoodi)
本属の基準種で、単にマルガタクワガタと呼ばれる。
大顎は太短く湾曲し、内歯はほとんど発達しない。体色は黒一色となる。
ケープタウンのテーブルマウンテン(テーブルランド)に生息している。
プリモスマルガタクワガタ(C.primosi)
本属最大種。鮮やかな体色を持ち、大顎、頭部、脚が黄褐色を帯びる。
大顎は本属で最も発達し、扁平な形状となり前方に長く伸びる。
標本の流通がほぼ無い本属の中でも入手が最も難しい種とされている。
ケープ州のスワルトベルグ山脈に生息している。
また、どういう訳か本種がいらすとやの素材に採用されている。有名な種は他にいくらでもいるはずなのだが、チョイスが何とも謎である。(参照)
イザルドマルガタクワガタ(C.izardi)
前胸部に一対の赤紋を持ち、前脚の脛節がS字状に強く湾曲している。赤紋が消失する個体も確認されている。
大顎は太短く分厚くなり、先端が二股となる。
脛節の湾曲については、湿った苔の上やぬかるんだ地面の上を歩きやすくするためだといわれている。
ケープ州のレンジベルグ山脈に生息している。
ネールマルガタクワガタ(C.neli)
大顎は細短く湾曲し、基部に内歯が1つ生える。体色は黒くなり、前胸の中央に一対の小さい窪みがある。
標本は最も入手しやすい種とされている。
ケープ州のスワルトベルグ山脈に生息している。
バーナードマルガタクワガタ(C.barnardi)
前脚の脛節はくの字に緩く折れ曲がっている。
西ケープ州のスウェレンダム山脈に生息している。
ヒュートンマルガタクワガタ(C.haughtoni)
大顎は細短く湾曲し、先端が二股となる。体色は黒く、若干の艶がある。
西ケープ州のヘックスリバー山脈に生息している。