曖昧さ回避
- 1.クワガタムシ亜科の甲虫。本項で解説。
- 2.オオバコ科ルリトラノオ属(以前はクワガタソウ属)の高山植物。旧甲虫王者ムシキング「5周年コレクションカード」では1のミヤマクワガタの背景を飾った。
概要
1758年に分類学の父と呼ばれる生物学者カール・フォン・リンネによってコガネムシ科として記載されたヨーロッパミヤマクワガタ(Scarabaeus cervus)を基準に1763年イタリアの博物学者ジョバンニ・アントニオ・スコポリが設けた属。
学名(Lucanus)からルカヌス属とも呼ばれることもある。
ラテン語ではクワガタムシ科のことをLucanidaeと呼ぶことからもわかる通りクワガタムシの分類学の中心的な位置づけとされており、全てのクワガタの属は本属から分類が進んで分けられたものである。
ヨーロッパ〜南アジア、東アジア、北アメリカに広く分布しており、多くの種は山地に生息している。
ノコギリクワガタ類やヒラタクワガタ類とは違い東南アジアには分布せず、大陸の内陸部に分布する種が多い。
クワガタの中でも特に雌雄の性的二型が顕著に現れ、大型種の雄は共通して大顎と耳状突起と呼ばれる頭部後方に張り出した突起が発達する。
種としてのミヤマクワガタ
最大で78.6mmの個体が得られている、日本を代表する大型のクワガタ。「ミヤマ」は漢字で「深山」と書き、山奥を意味する。その名が示すとおり冷涼湿潤な環境を好む。
北海道〜九州に広く分布しており、雑誌『ビー・クワ47号』では北海道や東北では平地にも生息しているが、関東以西では山地寄りに生息すると記述されている。
同誌では広葉樹の樹液に昼夜問わず集まり、飛翔性が高いため灯火にも集まると載せられている。
学名は「Lucanus maculifemoratus」。
種小名は「脚に斑紋を持つ」という意味で、その名の通り脛節(脚の根本の関節)に橙色の斑紋を有する。
大顎先端が大きく二又に分かれ、先端から根本にかけて内歯(突起)を4〜5つ備える。高標高に生息する個体ほどこの二又の開きが大きくなる傾向が見られ、二又が大きい個体がエゾ型、小さい個体がフジ型、その中間が通常型と呼ばれ区別されている。
この型は幼虫が前蛹になる際の温度で決定付けられると考えられており、地域差はあるものの温度が低いとエゾ型に、温度が高いとフジ型になるとされている。
全身に金色の細かい体毛が生えている。
頭部の中央には台形の突起を持つ。
気が荒く、自分より体の大きな相手にも戦いを挑む。が、マンディブラリスフタマタクワガタのように相手の上から覆いかぶさって挟む戦闘スタイルをとり、それが仇となってカブトムシやノコギリクワガタには下から掬い上げられて負けてしまうことも多い。
身体はあまり頑丈ではなく、寿命も短いため、身近な種類の割には飼育や繁殖がオオクワガタやノコギリクワガタと比較すると難しい。
また、地球温暖化による生息環境の変化や、それに伴い分布域を拡大してきた本来ニッチ(生態学的地位)が微妙に異なるはずのノコギリクワガタとの競合により、主に関東地方などで生息数が減少傾向にあると言われている。
亜種
2亜種に分類される。
原名亜種(ssp.maculifemoratus)
イズミヤマクワガタ(ssp.adachii)
原名亜種と比較して大顎や耳状突起の発達が悪く、大顎根本付近の内歯も短い。
大顎の個体変異は見られず全てフジ型をしている。
日本に分布する他の種
ミヤマクワガタの他に2種が分布している。
アマミミヤマクワガタ(L ferriei)
奄美大島に分布。最大51.0mmとミヤマクワガタよりも小型で、大顎は細く直線的に伸びる。体色は赤褐色で体毛も生えていない。
頭部が小さく、耳状突起が薄く尖っている特徴からヘルマンミヤマクワガタやタイワンミヤマクワガタと近縁と考えられている。
奄美大島の条例により採集が禁止されている。
ミクラミヤマクワガタ(L ganumus)
詳細は当該記事を参照。
海外の代表的な種
ヨーロッパミヤマクワガタ(L cervus)
ヨーロッパに分布する本属の基準種にして最大種。ユーロミヤマクワガタ、ケルブスミヤマクワガタとも。亜種にユダイクスミヤマクワガタ(ssp.judaicus)、アクベシアヌスミヤマクワガタ(ss.akbesianus)等が存在する。詳細は当該記事参照。
ディボウスキーミヤマクワガタ(L dybowskyi)
中国、ロシア南東部、朝鮮半島、台湾に分布。チョウセンミヤマクワガタとも。
大顎先端が前方を向き、ミヤマクワガタが持つ頭部の台形状突起を欠く。
ミヤマクワガタの亜種とされていたが2010年に独立種として再分類された。
四川省のものは亜種チュウゴクミヤマクワガタ(ssp.lhasaensis)、台湾のものはタカサゴミヤマクワガタ(ssp.taiwanus)に分類されている。
タイワンミヤマクワガタ(L formosanus)
台湾に分布。頭部が小さく、耳状突起は薄く尖る。大顎は細長く直線的に伸び、中央やや先端寄りに最大内歯を持つ。
頭楯(とうじゅん、頭部中央の突起)はひょっとこの口のように伸び、先端は弱く二又に割れる。
体毛は生えていない。
ヘルマンミヤマクワガタ(L hermani)
中国南部に分布。タイワンミヤマクワガタとは近縁関係にある。
詳細は当該記事を参照。
カンターミヤマクワガタ(L cantori)
インド、ブータン、チベット、ミャンマー北部に分布。カラカネミヤマクワガタとも。
頭部は大きく耳状突起が横に強く張り出し、大顎も大きく湾曲する。
最大90.0mmの個体が記録されている大型種でかつ古くから図鑑等で親しまれている知名度の高い種にもかかわらず、分類的位置が不明とされている。
インド東部〜ミャンマーのものは亜種カンターコラシミヤマクワガタssp.colasi)に分類される。
エラフスミヤマクワガタ(L elaphus)
アメリカ合衆国東部に分布。アメリカ最大のクワガタ。
雄はヨーロッパミヤマクワガタをそのまま小型にしたような姿をしているが、雌は細身で似ていないため分類的には遠い種と考えられている。
雌雄共に体色は赤みがかっている。
パリーミヤマクワガタ(L parryi)
中国に分布。
飼育下最大記録48.4mmの小型の種で、雌雄ともに基本は黒色だが個体によっては頭部や前胸背板が赤褐色の個体や上翅に黄色い紋が乗る。
ミクラミヤマクワガタとは先祖を同じくすると考えられており、近縁種とされている。
四川省、雲南省、重慶市、湖北省、河南省、貴州省、陜西省のものは大型化し耳状突起や大顎が発達するため亜種ラエトゥスミヤマクワガタ(ssp.laetus)に分類されている。ラエトゥスに関しては当該記事参照。
メディアでの扱い
昔から知名度が高く、そのいかつい風貌から子供人気も高いためクワガタの代表種として扱われることが多い。
仮面ライダーカブト
仮面ライダーガタック及びガタックゼクターのモデル。
暗殺教室
ホワイトアイ(アルビノ)の個体が登場。大型個体であることや学術的な価値から売れば数十万円は下らないと説明された。
また、前述の個体数の減少を踏まえ「今はよりもずっと高い」という台詞が出ている。
なお、ホワイトアイやレッドアイと言った色素欠乏による変異個体はどの種類のカブトムシ、クワガタにも起こり得るものであり、ミヤマクワガタのホワイトアイも毎年ちょくちょく採れている報告がSNSに挙げられている。
甲虫王者ムシキング
5種が登場している。
ミヤマクワガタ
初期シリーズより登場。店頭テスト時にはコクワガタと共にカードにならなかった。
つよさ140、性格はアタックタイプ、必殺技はチョキ。
肩書きは「迫力顔面」。
初期超必殺技は「ローリングクラッチホールド」。
「2005ファーストプラス」で姿を消し、その後「2007ファースト」で新超必殺技「シンザンキョウ」および究極必殺技「スーパーシンザンキョウ」を引っさげて復活。
ちなみに、2007年発売のDSソフト「甲虫王者ムシキング スーパーコレクション」にはスーパーローリングクラッチホールドの没データも存在しており、コードフリークを使って改造すれば、2005ファーストまでのミヤマクワガタおよびセアカフタマタクワガタの究極必殺技として使用することができた。
アダーコレクションは超必殺わざがローリングクラッチホールドのもののみ存在する(2007ファーストではアダーコレクションが廃止されているため)。
新甲虫王者ムシキングでは2015 2ndに登場。階級はR。肩書きは旧作と同じ。必殺技は復活後と同じ「シンザンキョウ」だが演出は旧作の「スーパーシンザンキョウ」に近い。
2016 3rdにて6月1日よりSRに覚醒できるようになる。肩書きが「ド迫力顔面」、必殺技が「スーパーシンザンキョウ」に変わるが、元々の「シンザンキョウ」の関係でアレンジが加えられている。
また、鳴き声は旧作のカウントダウン中に発する短めな音声の方がベースとなった。
この点はノコギリタテヅノカブトも同様である。
ミクラミヤマクワガタ
2005セカンドにて参戦。詳細は当該記事参照。
ヘルマンミヤマクワガタ
2007ファーストにて参戦。詳細は当該記事参照。
ジュダイクスミヤマクワガタ
新甲虫王者ムシキング2016 3rdにて参戦。詳細は当該記事参照。
ラエトゥスミヤマクワガタ
新甲虫王者ムシキング激闘5弾にて参戦。詳細は当該記事参照。
百獣大戦アニマルカイザー
ヨーロッパミヤマクワガタが登場している。
どうぶつの森
初代より登場。シリーズを通してオオクワガタより格下の虫(売価が安い)として扱われている。
「おいでよ」でのみリストラされているが、「街へいこうよ」以降はヒラタクワガタと交代する形で復活。その際には売値が従来作の半額まで下がってしまっている。
世界の昆虫コレクション
今井科学より発売されていたゼンマイで動くカブトムシ、クワガタのプラモデルシリーズ。
ラインナップの一つとしてカラカネミヤマクワガタが選出されている。
後に金型が『昆虫アクションワールドコレクション』や『昆虫物語』、『コンチュウキング』といった他社製品のチープトイにミヤマクワガタ表記で(おそらく海賊版で)流用されている。
関連項目
セアカフタマタクワガタ:旧ムシキングで変更前の必殺技が同じ
ムシキング、エレファスゾウカブト、オオクワガタ、ホペイオオクワガタ…中型甲虫で究極必殺わざが使用可能なムシたち