ヨーロッパミヤマクワガタ
よーろっぱみやまくわがた
ヨーロッパ全域〜中東に分布するミヤマクワガタ属(ルカヌス属)の基準種にして最大種。ユーロミヤマクワガタとも。
学名は「Lucanus cervus」。
1758年に分類学の父と呼ばれる生物学者カール・フォン・リンネによってコガネムシ科のScarabaeus cervusとして記載された後、1763年イタリアの博物学者ジョバンニ・アントニオ・スコポリが本種を基準としてクワガタムシ科及びミヤマクワガタ属を設けた。
種小名はラテン語で鹿という意味で雄の立派な大顎を雄鹿の角に例えたものである。
雄は横幅が広く体高も分厚い体型をしており、特に頭部と耳状突起と呼ばれる頭部の突起が肥大化する。
大顎は太く、カンターミヤマクワガタほどではないものの強く湾曲し、やや先端寄りに1対の大きな内歯を備える。大顎先端は二又に分かれる。
日本のミヤマクワガタなどに見られる頭部や前胸背板、上翅の体毛は生えていない。
なお、体の裏側は白い微毛に薄く覆われている。
雌は日本のミヤマクワガタに比べ大柄で、雄同様に横幅や体高のある体型をしている。
知名度・人気ともに高い種であるが、ヒラタクワガタやノコギリクワガタ、ツヤクワガタなどインドネシアから大量に輸入されてくる種と比較すると流通は少なめで高価。
ミヤマクワガタ全般に言えることだが、蛹化〜羽化後約半年間は低温(10〜18℃)で休眠させることが必要で、この休眠期間中に高温だと内臓が上手く固まらず繁殖に支障をきたしたり最悪死亡することもある。
また、乾燥にも弱い。
ただ、その点のみに気をつければミヤマクワガタの中では飼育(ブリード)しやすい部類とされている。
大顎の形状や触角の片状部(触角先端の幅広い部分)の関節数から6亜種に分類される。
ポントブリアントミヤマクワガタ(L pontbrianti)、ラティコルニスミヤマクワガタ(L laticornis)も亜種に含まれていたが、2016年の研究での遺伝子解析により別種とされた。
原名亜種(ssp.cervus)
ヨーロッパ全域に分布。ケルブスミヤマクワガタとも。
亜種中最も大顎が太くなる。触角の片状部の節数は個体差があり4〜6節。
イギリスでは保護動物に指定されている。
トルキクスミヤマクワガタ(ssp.turcicus)
原名亜種と比較してやや扁平で幅広い体型をしている。触角片状部は6節。
近年の遺伝子研究では原名亜種の地域変異にすぎないという見解も見られている。
プジャードミヤマクワガタ(ssp.poujadei)
シリア、レバノン、イスラエル、イラク北部、イラン西部に分布。
大顎の発達が悪い。触覚片状部は原名亜種同様4〜6節と個体差があるが、シリア高原(ゴラン高原)以南の個体群は安定して6節となる傾向が見られるとされる。
2020年の雑誌『ビー・クワ75号』ではアクベシアヌスミヤマクワガタ(後述)、ユダイクスミヤマクワガタ(後述)の分布域よりも東の個体群を全て本亜種に含めており、今後の研究よっては細分化される可能性があると記している。
アクベシアヌスミヤマクワガタ(ssp.akbesianus)
トルコ中南部〜シリア北西部に分布。飼育下にて103.5mmの個体が記録されている2番目に大型になる亜種。
大顎はやや細めで湾曲も比較的弱く、先端の二又に分かれる部分が強く開く。触角片状部は6節。
ユダイクスミヤマクワガタ(ssp.judaicus)
トルコ南東部〜シリア北西部に分布。ジュダイクスミヤマクワガタとも。本種最大亜種。
詳細は当該記事参照。