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ユニー航空873便火災事故

なんでここにがそりんが

ユニー航空873便火災事故とは1999年8月24日に台湾の花蓮空港で起こった航空機火災事故である。犠牲者はこの手の火災としては少なめで済んだが、事故にとある有名人が絡んだ疑惑が浮上して台湾中が大騒ぎとなった。
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事故概要編集


ユニー航空はエバー航空の子会社である。この事故以外死亡事故は起こしてないし、この事故にしてもほとんどとばっちりであるなど、LCCとしてはなかなか安全管理に優れていると言って良いだろう。


発生日時1999年8月24日12時36分
発生場所台湾 花蓮空港
機材MD-90
乗員6名
乗客90名
犠牲者1名(これとは別に一人の妊婦が事故のショックで流産

予想外のタイミングの火災編集


その日の873便は、MD-90の経験が浅い副操縦士が機体への習熟の為に操縦し、機長が計器のモニタリングなどをしながら副操縦士への指導をしていた。

機体の操縦で一番難しいのは離陸と着陸。慣れない機体の操縦というのはやはり緊張するようで、副操縦士は花蓮空港へ着陸させたとき些か機体を揺らしてしまう。これ以上は厳しいと判断した機長は操縦の交代を打診し、副操縦士もそれを了承。操縦の引継ぎがされる。


と、着陸滑走し始めて26秒後、突然客室の上側から爆風と共に炎が噴き出す。

異変を察知した機長は、機体を制止させる操作をしながら管制官に緊急事態を告げ、対処にあたる。副操縦士は機長の指示で乗客の避難誘導に回る。

客室が炎に包まれる中、最後に残った機長は自分が巻き添えにならない範囲で乗客の有無を確認し脱出。その後、消火と救助の為に入った消防隊員も、逃げ遅れた乗客はいないことを確認した。


機体は上部の火災による損傷が酷く、全損扱いとなった。

乗り合わせた乗員乗客のうち28名が負傷し、そのうちの一人は重度の火傷で死亡した。

とはいえこの手の航空機火災としては人的被害は少なく済んだと言っていいだろう。


あまりに謎すぎるタイミングで発生した炎編集


台湾の飛航安全調査委員会(飛安会)は事故調査に乗り出しアメリカからも機材の都合上FAAが応援に駆け付ける。

まず、異様だったのは火災が起きたタイミングである。航空機火災は、大抵が離陸直後か飛行中に発生するもので、着陸直後というのはほとんど例がない(後に着陸作業が無事完了し駐機したタイミングで起きた火災は起こってしまったが)。火災発生が着陸でなければ、犠牲者は1人では済まなかったかもしれない。また、どうやらこの火災はテロではなさそうだった。


数多く生き残った被災者は異口同音に「火災は着陸直後に客室内で突然発生した」と証言する。そして残骸の調査の初期段階で、爆風でめくれ上がった手荷物棚を発見。棚の扉の破損とCVRの記録から「火災は爆薬ではなく気化した燃料で発生した」と推測された。

それと並行し、調査官は天井と客席が焼けただれた事故機から証拠を集める作業を進行させる。


その過程で調査官の一人が奇妙なものを発見した。それは市販で普通に売られている漂白剤の首と蓋部分が本体から千切れ、客室の床に落ちていたものだった…


  …だが、奇妙なのはその姿ではなく、寧ろ匂いだった。なんと、機内に持ち込み禁止のハズのガソリンの匂いだったのである!


どこからガソリンが持ち込まれた!?編集


ガソリンは燃料の中でも気化しやすく、火花があればあっと言う間に引火して燃え広がってしまう。例の漂白剤の蓋には接着剤で封がしてあったが、そんな安直な密閉方法では気化したガソリンは容易く外に漏れてしまう(本来ならこういったガソリンは専用の金属製のタンクなどで厳重に保管しなければならない)。上記のCVRのデータとも合致する。


そこで今度は”どうやってガソリンが機内に持ち込まれてしまったか?”に調査の焦点が当てられ、当該機の手荷物検査の様子を撮影したビデオが確認される。


と、調査官の目に些か物騒すぎる手荷物を持った男性乗客の姿が映し出される。なんと、その乗客は殺虫剤やキャンプ用燃料といったスプレー缶といった危険物を機内に持ち込もうとして没収されていたのだ(当然双方とも機内持ち込み禁止である)。唖然とする調査官の目の前で今度は例の漂白剤そっくりのボトルが二本鞄から出てくる。が、当時の規則でも、液体は蓋を外して匂いを嗅ぎ、中身を確認する規定となっていたのだが、映像内の手荷物検査官は、男性客と少々会話しただけでアッサリと鞄に戻してしまっていたのだ。


早速担当した手荷物検査官を聴取すると、本人曰く「漂白剤と本人も言ってたので通しました」とザル監視ぶりをカミングアウト。呆れた調査官が相手の特徴を窺うと更に意外な答えが返ってきた。


 「はい、すぐにわかりました。台湾の嘗ての陸上のエース、古金水です」


どうやら相手は有名人だったので、中身を偽っているとは思いもしなかったらしい。


気を取り直して原因究明編集


 元陸上スター、旅客機に爆発物を持ち込む!?


調査により予想斜め上の疑惑が浮上し台湾中が大騒ぎに(ちなみにこの事故の唯一の犠牲者は古金水の兄である古金池という人物)。世間の驚愕の中、飛安会は気を取り直して今度は”火花”の捜索に乗り出す。

配線の不備を疑うも天井には通っておらず、また、別の事故の原因となった”酸素発生装置の取り扱いの誤り”も調べた結果空振りに終わる。ユニー航空はかなりしっかりと航空機を管理していたようだ。


が、残骸を調べたところ今度は”銅線が剥き出しのコードがつながったバイクバッテリー”が発見される。映像を確認しても持ち主が特定できなかったことから、事故当時の航空検査官は相当検査が適当だったせいで、色々な危険物が機内に持ち込まれてしまったようである。


そこで”気化したガソリンの充満した空間の中で立てたバッテリーを転倒させたら火花が発生して引火するのでは?”という仮説を立て、実験を繰り返したところ、やはり火災が起こった。機体に慣れない副操縦士が着陸間際に練習がてら機体を揺らしてしまったことによりバッテリーから火花が発生し、それが気化したガソリンに引火したのが事故原因と推定された。民間航空局の爆発物の取り扱いの甘さによる空港検査官の検査の不手際さが重なって、偶然にも爆弾のようなものが出来てしまった事故といえる。事故以降航空局に「手荷物の検査をもっと徹底するように」と勧告されたのは言うまでもない。


自分の担当&練習した便に密かに爆発物が積まれていたとは知りもしない乗務員や、事故が起きないように丹念に整備した機体を台無しにされたユニー航空にとっては、とんだとばっちりといってもいいだろう。


で、例の有名人はどうなったの?編集


古金水はというと、機内にガソリンを持ち込むという民用航空法違反の疑いで起訴され、一審では懲役10年の有罪を言い渡された。が、彼はこれを不服として控訴を繰り返し、だんだん刑期が縮小され、2004年の第五審では「古金水がガソリンを持ち込んだという証拠は確認できない」という理由で最終的に無罪となった。その後古金水は2016年に白血病で死去している。


バイクのバッテリーがノーマークで機内に持ち込まれてしまった以上”古金水の持ち込んだボトルは正真正銘の漂白剤で、本当にガソリンが入っていたボトルの方は空港検査官が見逃してしまっていた”という可能性も確かに否定はできない。但し手荷物検査時にスプレー缶という危険物を持ち込もうとしたことが映像でバレてしまっている以上「ひょっとしたら何らかの理由でガソリンを密かに持ち歩いていたのでは?」と疑われても仕方がないであろう(それにスプレー缶がうっかり機内に持ち込まれた場合別の事故が起きたかもしれないのだ)。そういった点では彼は些か軽率だったかもしれない。やはり、念のために、検査官に中身を確認してもらった方がよかったかもしれない。


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