概要
天津影久が「揺籃の師」と仰ぐほどの技量の持ち主で、彼のはとこに当たる。
10歳の時、無天一流の次期統主と目されていた兄を相手に、戯れに剣術で勝負をさせられた。ところが兄は彼女に叩きのめされ、それを恥じて割腹自殺。槇絵は母親と共に春川家から絶縁され、遊女となった母と同じく苦界に落ちていたところを天津に身請けされ、逸刀流に迎えられた。
得物は長刀と三節棍を掛け合わせた独特な形状の「春翁(はるのおきな)」で、普段は三味線型のケースに仕込んである。遠心力を活かしてアクロバティックに相手を切り刻む。
本来優しい人間であり、剣を振るって人を殺す事にも抵抗感を覚えていた。しかし優柔不断で主体性の無い性格が災いし、周囲の状況に振り回され続ける。
後に自ら髪を切って迷いを絶ち、一方的に万次を追い詰めるが、凛が彼を庇った為にとどめを刺せず天津の元からも去った。その後、没落した春川家を訪れて父を殺そうとしたが果たせず、白川郷にて春をひさいでいた所を再び天津に見出され、彼の窮地を救って連れ添う。
儚げな美貌とは裏腹に超人的な身体能力の持ち主で、作中でも最強格の剣客である。しかし、彼女にとって剣の才能を持って生まれたことは不幸でしかなかった。
剣を振るうたびに己の人生と女としての幸せを取りこぼすことになり、愛する天津影久のために戦い続けるも迷いや葛藤が晴れることはなかった。
長く娼婦として生きてきたことと無理がたたったのか、父が患ったと同じ労咳(肺結核)に侵された。
那珂湊での最終決戦で、英于彦配下の「懸巣」の銃撃から天津を庇って致命傷を負い、「懸巣」を全滅させるが死亡した。
余談
作者の最新作「波よ聞いてくれ」にも、城華マキエという彼女にうり二つのキャラクターが登場する。沙村広明にしては珍しいセルフパロディであるが、前世の所行の所為なのか受難体質の薄幸美人となっており、度を超して過保護な兄に束縛されるヘビー級の家庭事情に苦しめられている。
彼女が例外的に前作からカメオ出演しているのは、作者が知人の女性から「槇絵があの性格で現代にいたら相当、厄介な女になる」と言われたことが切掛であり、現代的な”危うい女性”を描くためであったとのこと。
何処まで行っても、因業から逃れられない薄幸な女である。
上記の縁なのか、城華マキエのCVは能登麻美子女史である。