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※ 漫画『逃げ上手の若君』の登場人物についてはこちらを参照。


概要編集

生 没:不詳

別 名:高繁、右衛門太郎

官 位:右衛門尉


鎌倉末期の武士の一人。史料上では高繁と称される場合もある。

五大院氏は、時期こそ不明ながらも北条得宗家の被官、即ち御内人として活動してきた家柄であり、宗繁以前には五大院高頼(九郎)が、嘉元の乱の折に主君・北条貞時の内意を受け、一族の重鎮である北条時村の殺害を実行した後に、その責を負う形で処刑されたことが伝わっている。


宗繁もまたその例に漏れず、御内人として仕えるだけでなく姻戚関係までも結ぶなど、北条得宗家とは深い繋がりを持つ人物であったのだが、後述の通りそうした関係の一切を私利私欲のためにぶち壊した結果、因果応報とも言える末路を辿る格好となった。


生涯編集

宗繁の史料上における初出は、元亨3年(1323年)に鎌倉円覚寺にて執り行われた、北条貞時の十三回忌でのことである。ここでは禄役人として参列した者の中に「五大院右衛門太郎高繁」の名が残されており、少なくともこの時点までに元服を済ませていたことが窺える。

宗繁には妹(娘とも)がおり、正中2年(1325年)以前までにその妹の常葉前が北条高時に嫁ぎ、長男の邦時を儲けている。しかし元弘3年/正慶2年(1333年)、新田義貞らを中心とした倒幕軍が鎌倉へと押し寄せると、宗繁は自身の甥である邦時の身柄を高時から託され、同時に「いかなる手段を使っても匿って守り抜き、時が来れば立ち上がって亡魂の恨みを和らげてほしい」と頼み置かれたという。


鎌倉陥落の後、しばし市中に潜伏していた宗繁と邦時であったが、程なくして残党狩りに当たっていた新田軍が、残党を捕らえた者に褒賞を与えると知り、宗繁はその褒賞欲しさに恩義ある主君の遺児にして、甥に当たる邦時を裏切ろうと画策する。

その手口も悪辣なもので、直接自らの手で邦時を捕らえるのではなく、一旦伊豆山へ向かうように進言し送り出した上で、新田軍にその動向を密告。相模川で待ち伏せさせ間接的に突き出した・・・と『太平記』には記されている。その結果、捕らえられた邦時は鎌倉へ送られ処刑の憂き目に遭うのだが・・・事は宗繁の思惑通りには行かなかった。

宗繁のこの裏切りは、巷間から「不忠」の誹りを受ける格好となり、新田軍もそうした声を受けて宗繁を処断することを決した。先んじてそれを知った宗繁はすんでのところで逃亡し、褒賞を得るどころかそのまま追及を逃れる日々を送る羽目になってしまう。

そんな宗繁に、旧友も含め誰一人として救いの手を差し伸べる者はなく、最期は飢えに苦しんだ末に路傍にて野垂れ死んだと伝えられている。


評価編集

宗繁が、主君への裏切りの末に悲惨な末路を辿ったのも無理からぬ話で、そもそもこの行為自体が、当時の通念から見ても完全にアウトなものであった。


一口に「寝返り」と言っても、この当時から既に作法というものがあり、事前に内通などで立場をはっきりさせない裏切りは「土壇場でわが身可愛さで裏切った」と悪印象を持たれ、敗残側の人間として処罰されることもざらであった。さらに言えば武士の間で「御恩と奉公」が重視された鎌倉期において、北条得宗家への御恩も深く姻戚関係まで結びながら、正当な理由もなく奉公を果たさずに裏切るという行為は、根本的に論外と言える立ち回りでしかなかった。

要するに、現代においても(創作を含めた)ダブル不倫からの再婚や企業間の背信行為において時折言われる「不倫するような奴とよく結婚できるな」「一度金で裏切ったやつを信用したのが悪い」といった感覚が、既に当時からあったということである。武士の原則たる「御恩と奉公」をないがしろにし、土壇場で我が身可愛さに裏切るような奴は、次は自軍に対してやりかねないと取られても何ら不自然ではない。

有り体に言えば、「考え無しの馬鹿のやること」に他ならないのである。


このような経緯ゆえか、宗繁の事績も『太平記』にわずかに記されるのみで、人によってはあまりにも嫌われ過ぎて、現在では専門家以外には忘れられていると解釈されるレベルでその存在を忌避されるという状況が、実に700年近くに亘って続く格好となった。

要するに、歴史上に数多存在する裏切り者たちとは異なり、その振る舞いのあまりの鬼畜さが祟って「悪名」すら残すこともできないままに歴史に埋没した、という訳である。


関連タグ編集

鎌倉時代 南北朝時代

北条氏 得宗

北条高時 北条邦時 新田義貞


逃げ上手の若君松井優征の漫画作品の一つ。数百年単位で忘れられていた存在である宗繁の知名度を、ある意味で向上させる一因となったのが同作であるとも言える

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