概要
主に外見的特徴から判断した人間の分類とその集団。
「人種」という概念は欧米の人々の価値観によって決め付けられた部分が大きく、ヨーロッパ中心主義的な世界観が影響している。
遺伝学的な見解からは人間をその中で別種として分類できる科学的根拠は存在せず、全人類は同じホモ・サピエンス種に属している。
所謂白人、黒人、アジア人などをそれぞれを別種の生物学的存在形態だと見なすことは「人種主義(racism)」と呼ばれ、19世紀以降世界に人種差別的な政策、思想の展開に大きな影響を及ぼしてきた。
遺伝学志向の強い学者の中には、人種という概念自体を認めない者も多い(25万年以上前にアフリカ大陸で生まれた現生人類はアフリカのみに生息していた期間がかなり長い。そのためアフリカ内の人間の遺伝的多様性は他地域を圧倒しており、同時にアフリカ以外の地域の人間の遺伝的多様性は全てまとめたところでアフリカ内に比べて圧倒的に低い。遺伝学的にみれば遺伝的多様性・差異が大きいのにアフリカの人間を一つにまとめたり、それよりずっと小さな遺伝的多様性・差異しかないのにユーラシア大陸やその周辺の地域の人間を幾つもに分けたりするのはナンセンス、ということになる)
一般に、人類のDNAの変異や多様性の約85%はアフリカ大陸のサハラ砂漠より南にも見られるものであり、それ以外の地域でしか発見されていないものは、わずか15%に過ぎないと言われている。
良く使われる喩えに「人間の人種間のDNAの差異は、アフリカのある川の両岸に住んでいる2つのチンパンジーの群れのDNAの差異より遥かに小さい」というものが有る。この喩えが適切かは別にして、現生人類という種そのものの遺伝子上のばらつきは他の霊長類に比べて異様に小さいのは確かである。(現生人類は一度絶滅しかけて、そこから増えたので、ボトルネック効果により遺伝子のばらつきが小さくなった、という説も有る)
一方で人類がその身体的、外見的類似性を共通した集団が地域ごとに分布している事もまた事実である。(とは言え、同時に、白人やアジア人特有の外見を決める遺伝子は、上記の15%の更に一部に過ぎない)
人種とは曖昧なものであり、同じ人種集団が必ず同じ身体的特徴を備えているわけではなく、同じ人種集団が同じ社会的文化を保持しているわけでもない。よって外見的特徴から人を分類する事は厳密性、正統性に欠けるとされ、近年では「人種」よりも「民族集団」あるいは「クライン」という概念が用いられる事も増えてきている。
例えば白人以外を「有色人種」と呼ぶ場合があるが、北方系の黄色人種は地中海系白人(南イタリアの人など)より色白な場合もある。中東系が有色人種扱いされる場合もある。
主な人種
主に4つに分けられ「四大人種」と呼ばれてきた。