概要
サルディニア島に到着したブチャラティ一行。
トリッシュから得た情報を鍵に、ボスの正体を探るべく行動するが、思わぬ敵襲を受ける。自分達にメスを投げてきた者の正体を調べるべく、ブチャラティとナランチャが調査に、ジョルノとミスタは別方向でボスの正体を探る為の手がかりを探し、アバッキオは自身のスタンドのムーディー・ブルースの再生(リプレイ)能力で調査を開始した。
15年前まで遡る為の再生が完了するまで、かなりの時間を要する(アバッキオ曰く「8分から10分はかかるだろう」)が、ブチャラティからは「5分でやるのだ」と言う無茶振り(?)を受けていた。
ブチャラティの調査で1人の男が流血して倒れていた事が判明、ナランチャは集合の合図を出してジョルノ達に伝えた。
だが、ブチャラティは更に調査を続けると【もう1人居る】事に気づいた。流血して倒れている男の傷には、エアロスミスによる銃創だけでなく、別の傷があったからである。
ブチャラティはナランチャと連携して、岩陰に隠れている者に対して姿を現すように伝える。が、反応がなかった為気になって調べてみると、口が塞がれ手首から流血している状態の1人の少年が居た……(よくよく見ると、少年の口を塞いでいるのは靴の紐で、彼は半裸だった)。
再生の準備をしていたアバッキオは、サッカーの最中たまたま木に引っかかってしまったサッカーボールを少年達にとってやり、感謝される。だが……
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【警告】
これより先、ある男にやってくる運命が記載されている為、閲覧に注意されたし
『 タイマーはもう25日だ・・・6月も終わっちまう 』
子供達が通り過ぎようとしたその瞬間、自分の身体が貫かれたような感覚が走る。
その去り際に1人の少年が「 やはり生まれ故郷はいい…ついてる 」と呟いた。
自分の身体を貫かれたその刹那、少年に視線を向けて確信した。自分達が倒すべき相手の顔を。
胸の風穴から止めどなく血を流し、力なく座り込むアバッキオ。
ムーディー・ブルースのヴィジョンは今にも崩れそうなほどにひび割れ、本体のすぐそこに迫る運命を静かに物語っていた。
気が付くと、1人どこかのオープンカフェで食事をしていた。不自然なほどに静かで、人っ子1人通らないその場所で目立つのは、一台の交通バスだけだった。
と、どこからかカチャカチャと何かを探すような音が聞こえてきた。
音のする方向──向かいのテーブルの下へ目をやると、1人の警察官が大量のガラス瓶の欠片を調べていた。
「強盗事件の犯人の指紋を捜しているんだ」と言い、ガラス瓶の破片をその山の中から、ピンセットを使って1つ1つ捜している警察官に、アバッキオは問いかける。
『もし見つからなかったらどうするんだい?「指紋」なんてとれないかも… いや…それよりも見つけたとして 犯人がずる賢い弁護士とかつけて無罪になったとしたら あんたはどう思って…そんな苦労をしょいこんでいるんだ?』
それは、自分が味わった挫折と絶望から来る質問だったのだろう。
しかしその警察官は、
『そうだな…わたしは結果だけを求めてはいないよ 結果だけを求めていると人は近道をしたがるものだ…近道した時真実を見失うかもしれない やる気もしだいに失せていく 大切なのは真実に向かおうとする意志だと思っている』
と、落ち着いた、しかし確かな自信の込もった口調でハッキリと答えた。
かつて、自分も彼のように高潔な意志を持ち、警官としての職務を全うしようとしていた。だが今は違う。
「何に打ち込んでも中途半端で終わってしまう」と悔やむが……
『そんなことはないよアバッキオ お前は立派にやっているじゃあないか…』
警官が自分の名前を知っている事に驚くアバッキオ。同時にさっきまで何をしていたかを思い出し、
『仲間の下へ戻らなくては…!!』
と近くのバスに乗るべく駆け込もうとするが、自分の意思に反して足は進まない。いや、進めないのだ。そして警官は、アバッキオに真実を告げる。
『お前はあれに乗ってここに来たのだ ここは終点なんだ…… もう…戻ることはできない』
仲間の許へ戻ることは出来ない。即ち、自分は死んでしまったと言う真実に辿りつく。そして、自分の目の前に居る警官が何者であるのかに気づく。
『あ…あんたは…!!そうだ!!あんたはッ!!あんたはオレがワイロを受け取ったせいで撃たれて殉職した……!!』
かつての相棒との思わぬ再会に、アバッキオの目から涙がこぼれ落ちる。
彼は、アバッキオが貫いたその意志を静かに褒め称えた。同僚は死してなお、アバッキオを見守り続けていたのだ。
『アバッキオ…お前は立派にやったのだよ
そう…わたしが誇りに思うくらい立派にね…』
【今にも落ちてきそうな空の下で】
【エメラルダ海岸】
ブチャラティ一行が見たもの……それは右胸に風穴を開けられて殺害されたアバッキオの亡骸だった。
アバッキオの死──それはボスの手がかりを探る最も有力な方法が喪われただけでなく、組織の追手がすぐそこまで迫っている事を意味していた。
もはや長居をしている余裕はなく、「これ以上ここに残ることは危険だ」とアバッキオの遺体を残して立ち去ろうとするが、ナランチャはジョルノに蘇生するよう訴えかける。
既に手遅れである事を誰よりも分かっていたジョルノは、苦渋の末にブチャラティの指示に同意する。しかしそれでもナランチャは「敵がいるならここで迎え撃つ」とミスタやジョルノにも同意を求めるが、2人は何も言わない。そして、思わずナランチャはジョルノに掴みかかるが、ミスタに止められた際に触れた、アバッキオの遺体が黙って横たわる。
アバッキオはもう、何も言わない。
ぶっきらぼうで、それでいて面倒見がよく、いつもブチャラティの片腕としてまとまりの悪いチームを戒めてくれていた男はもう動かない。怒ってくれない。注意してくれない……そんな残酷な事実を再認識したナランチャは涙ながらに叫んだ。
「ここにおいていくのかよオオオオブチャラティ〜〜〜〜〜〜〜〜 アバッキオをひとりぼっちでおいていくのかよオオオオォーーーーおいてくなんてオレはヤダよオオオオオオオオ」
それは、自身が孤独の苦しみや悲しみを味わったがゆえの悲痛な慟哭だった。しかし、ブチャラティは「アバッキオも覚悟の上ここに来たのだッ!」とナランチャを叱る。
が、ブチャラティもすでに血の気の失せた唇を出血するほど強く噛み締め、アバッキオを失った悲しみに耐えていた。いつもなら前向きな発言をするミスタでさえ、苦楽を共にしてきた仲間の死を前に、無言になるしかない程のショックを受けていた。
感情を抑え、一行は歩を進めようとする。だが、アバッキオの遺体に最も側にいたジョルノは、彼の右手に石の欠片が握られているのを発見する。不自然に握られたそれに、アバッキオの遺志を感じ取ったジョルノは、ゴールド・エクスペリエンスで欠片をてんとう虫に変えた。
てんとう虫が元の場所へ帰った先……そこにはアバッキオが仲間達のために最後の力を振り絞り、ムーディー・ブルースがリプレイしたボスの素顔のデスマスクが石碑に叩きつけられる形で存在していた。
アバッキオは最後までジョルノに心を開く事はなかった。だが死の間際に掴んだ手がかりを託したのは、他でもないジョルノ。決して表に出さなかっただけで、心のどこかで彼はジョルノを信頼してくれていたのだ。
遺志を託し、倒れたアバッキオ。その亡骸は、自らの誇りと正義を全うした達成感に満ちた、どこか穏やかな表情を湛えていた。
そして仲間達は、アバッキオから受け取った遺志を胸に前へ進んで行く。
アニメ版では一行が立ち去った後、アバッキオが倒れていた場所には、彼を弔うように無数のイエローサルタンが咲き誇っていた。恐らくジョルノのスタンド能力だろう。
イエローサルタンの花言葉。それは、「強い意志」。
『アバッキオ…おまえは立派にやったのだよ おまえの真実に「向かおうとする意志」はあとの者たちが感じとってくれているさ 大切なのはそこなんだからな…』
『あの日』以来ずっとアバッキオの心の十字架となっていた元相棒は、最期まで貫かれた彼の意志を静かに讃え、アバッキオの心は救われたのであった。
そしてアバッキオが遺していったデスマスクは結果としてボスの正体には繋がらなかったものの、ブチャラティ達がボスを倒そうとする意思を持つ若者達を待ち続けたある男と接触するきっかけを作ることになる。アバッキオが抱いていた「真実に向かおうとする意志」は確かに実を結んでいたのである。
トリッシュはアバッキオの死を受けて彼に手を下したボスに静かながらも「許してはいけないわ…!」と完全に怒りを爆発させており、ボスに立ち向かう決意を彼らはより強めることになる。
チョッピリ余談
「今にも落ちてきそうな空の下で」というサブタイトルはアバッキオ視点であり、彼が死亡し天国に向かう、つまり空へと昇っていくことで、相対的に空との距離が縮んで見え、「落ちてきそう」という表現となった、という説が囁かれている。
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ブローノ・ブチャラティ ナランチャ・ギルガ グイード・ミスタ ジョルノ・ジョバァーナ トリッシュ・ウナ