概要
1993年から実施されている、韓国の大学入試における年1度の共通試験(初期は年2回だったことがある)。
日本のセンター試験に相当し、大学入試の中でも配点が高く、これで点を取らないと志望校合格はおぼつかない。
韓国では高校までは総合選抜による振り分けなどのため、事実上入試が殆どない。
また、内部進学が可能な大学附属校も存在しない。
このため、実質的に大学入試の一発勝負で学歴が決まることになり、男子の場合は特に兵役との関係で浪人が難しいため極力現役で勝負しなければならない。
また、超学歴・学閥社会であるため少しでも上位の大学に入ることがその後の人生を大きく左右するため、子供達は幼い頃から修能に向けて猛勉強を強いられるため苛烈な受験戦争となっている。
特に頂点のソウル大を含む「SKY」と呼ばれる名門大学3校(ソウル大、高麗大、延世大)の受験は熾烈である。
とはいえ、長引く不況から最も上位とされるソウル大学に入学出来てもコネの無い家庭出身者の就職はラクではなく、運良く財閥系企業に入れても社内での出世競争に破れれば40代でリストラの憂き目に遭うなど、大学入試を突破できても韓国の若年層には苦労が絶えない。
現在は国民的一大行事の様相を呈しており、受験学年は夜遅くまで学校での自習「夜間自立学習(ヤジャ)」や塾通いをおこなっている。家族も一生を左右するだけにピリピリしており、在韓日本人妻のブログでは受験生を抱える既婚女性同士のママ友付き合いの気苦労なども時々書かれている。
試験当日には親はもちろん、受験生の後輩達も開場前で応援を行ったりするのが恒例だったがCOVID-19のパンデミック下では4年近くこの応援が禁止された。
受験生用にバスや電車が増便され、遅刻しそうな受験生には白バイやタクシーが送迎する光景は最早定番。
後述するような験担ぎやカンニングを目論む者達との攻防も激しく、試験当日は交通規制が敷かれ国内は修能一色となる。
英語のリスニング試験の時間帯は飛行機の離発着も禁止となっており、各企業や株式市場も業務開始時間が遅らされる。
カンニングを防止するため、試験会場は直前にならないとわからない。
このため道に迷って白バイに送迎してもらう受験生が多発するのである(警官側も迷っている少年少女を見かけると「受験生?」と声をかける)。
試験は概ね11月中旬に行われ、結果は12月上旬に通知されこれに基づいて三校までの上限で志望校に申請を出す。
問題が難しいと「火修能」と言われ、これが転じた形で「大変な状況」全般をさした例えで使われることもある。
例えば、2017年のFIFAワールドカップの予選リーグでは韓国が強豪国だらけのブロックになってしまったことからこう呼ばれた。
特に難しい年度は「不修能(修能できない、の意味)」とも呼ばれる。
逆に問題が簡単と言われる年度は「水修能」と呼ばれる。
問題の難易度についても度々論争の種になり、尹錫悦政権下では「キラー問題」と呼ばれる難解すぎる問題が禁止された。
ただし、受験生全員が修能を受けるわけではなく、「随時選考」と呼ばれる日本の推薦入試に近い大学入試枠の場合、修能より前に結果が決まるため随時選考で合格した者は修能を受けないこともある。
特に売れっ子芸能人の場合、随時選考での合格を狙って活動に支障が出ないようにする者もいる。
ただし、随時選考でも学校によっては修能受験を必須としそちらの得点と合わせ合否判定を行うこともある。
また2017年からは学生簿総合選考という、サークル活動や高校在学時の成績を重視した入試枠もスタートしたが、これはこれで「裕福な家しか入れないような高校の方が有利ではないか」という疑心暗鬼の発生にも繋がっており一筋縄では行かないようであり、修能の割合をどれくらいにするかというのは政策論争にもなっている。
厳重なカンニング対策
スヌンは、国家規模の大規模入試な為、カンニングなどについては厳重に対処している。
その規模は凄まじく、中国の大学入試に相当する高考顔負けのレベル。
まず、試験会場の教室は28名の受験生に対し、2人から3人の試験監督が配備される。又、試験監督には無線機などを備え付けており、いざという場合などには運営本部まで通報することができる。
更に試験で不正行為を確認した場合は試験自体を一時中断し、犯人を廊下へ連れ出し書面による注意を行った後答案用紙を無効化する処分を下され、試験会場から追放される。
また、携帯電話などの大規模カンニングを防ぐ為に、試験会場に入る前に厳重なボディーチェックが行われる。金属探知機も使用され万が一反応があった場合は取り上げられ、試験終了まで預かられる。更に念を押すかのように、試験会場周辺には妨害電波が常に発信している。更に電波の発信先も難なく特定可能であり、発覚した時点で警察に通報され、容疑者は逮捕される。
おまけに処分も凄まじく重く、より重いカンニングをした場合は翌年の受験資格が停止されたり、最悪の場合は刑務所行きになる。
問題作成
問題作成を担当する出題委員は運営元である韓国教育課程評価院が選んだ大学・高校の教員達約300人が就任する。
担当者はその年度毎にリストの中から選ばれて一方的に通知を受け、厳重な手続きの後問題作成の合宿に参加する。
問題漏洩を防ぐため出題委員になったことは全てが終わるまで誰にも口外してはならず勤務先の上層部のみが知ることとなる。家族にも「海外出張に行く」などの嘘をつかされる。本番の1ヶ月前から人里離れた宿泊施設を借り上げ食事などの世話をするスタッフや警備担当を含む全員が缶詰生活を送り、問題作成と修正作業を行う。授業の代講の人員も国家が用意する。
その生活はコンクラーベも顔負けの監禁っぷりであり、外部との連絡や外出は1ヶ月絶対厳禁でスマホを触ることもできず、窓も目貼りされ捨てたゴミも全てチェックされる。
問題作成のためネットで調べる時も横に保安員の監視がつき、親の葬儀などどうしてもといった事情での外出時も警察官が監視として同行する。
出題委員の給料はかなり良いが、非常にプレッシャーのかかる仕事のため必ずしも選ばれて喜ばしいものでもないようであり、2012年には心労からかこの監禁生活中に心臓発作をおこして死亡した教員が出ている。
参照:在韓日本人の大学教員が2003年に日本語の問題作成委員に選ばれたときのエピソード
外に出られるのは修能の本番の試験が全て終了してからであるが、なんらかの理由で修能が延期になるとそのぶん監禁期間が延長になる。
2017年は地震の影響で試験の期日が1週間後になり、委員たちの解放も1週間お預けとなった。
問題の流出を防ぐため、配送担当者も配送直前のわずかな期間ではあるがこのような監禁生活となる。
ただ、ここまでやっても流出事件が起こることがあるなど不正を目論む業者との攻防はいたちごっこである。
験担ぎ
受験生やその家族が人生をかけるといっても過言でない試験のため、験担ぎやそれに便乗した商法も非常に多い。
宗教団体による合格祈願集会やミサ、親が学校の前で祈るなどは当たり前。
語呂の関係で合格を連想させるようなものを縁起ものとして持つことも多く、定番の品は
「問題を上手く解く(シホムルプルダ(시험을 풀다)」」と鼻をかむの「プルダ(풀다)」をかけた連想から。
甘いものの為、勉学に集中できるから。
・垢すり用タオル
合格を背中から後押しする為に受験生になでる。
・フォーク
「正解を突き刺せ」という意味から。
「志望校にくっつく」という祈願から
その他にも多数の合格祈願グッズが各企業から売り出されている。
逆に「滑る」ということから縁起が悪いとしてわかめスープを避けるという向きもある。
Pixivでの傾向
韓国語の수능タグとともに、殆どが韓国人ユーザーによる投稿。
受験生への応援イラスト作品で占められている。