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概要編集

大韓民国国軍(だいかんみんこくこくぐん、漢字表記:大韓民國國軍、韓国語:대한민국 국군、読み:テハンミングク グッグン)は、大韓民国が保有する軍隊。基本は陸海空軍の3軍制で、他に海兵隊・予備役・民間防衛組織(ただし民兵とは異なる。)もある。米韓相互防衛条約を締結している事からアメリカ軍が駐留しており、同国とは同盟関係にある。その為緊密な連携体制によって共同軍事演習を繰り返している。


1948年8月の建国当時に創設され、この当時は微弱な規模だったが、1950年6月に北朝鮮との朝鮮戦争が発生すると60万人に増大した。1953年7月に休戦協定が締結され、それ以来常時臨戦態勢を続けており、方針の重点も対北朝鮮が中心になっている。


組織編集

軍種編集


特徴編集


徴兵制編集

韓国は徴兵制をとっており、18歳になった男性は徴兵検査を受ける義務がある。約2年の兵役を受けて兵務庁が徴兵関連の業務を司るが、区分によって多少期間は異なる。


兵役に適さない障害や病気のある者や、国家に特別な貢献を果たして兵役を免除される者もある。強度の近視などごく軽度の障害の場合は、兵役の代わりに市役所などでの補助業務を「公益勤務要員」として行う事で兵役の代わりにする事も可能である。


兵役に適すると判断された者は19歳から29歳の間に希望する期間に兵役に就く。現状では20代のうちに入隊する者が多く、K-POPの男性アイドルグループなどではメンバーが兵役のため一時離脱する事が時々ある。かつて芸能人は「芸能兵」という楽な広報のみを担当する事も多かったが、同枠の芸能人が何人か風俗店遊びや公務中のデートなどの不祥事を起こしたため廃止された。


適格者の兵役拒否は原則として認められておらず、違反者は軍刑法44条抗命罪・兵役法88条入営忌避罪が適用され、3年以下ではあるが実刑を課される場合もある。


また在日韓国人のように、外国に定住している韓国籍の者に対しては基本的に兵役が免除されているが、2012年7月に兵役法が改定され、「1994年以降に出生した者で韓国への滞在期間が通算3年以上、もしくは親が1年間に通算90日以上滞在した事のある者は韓国での兵役義務を持つ。」とされるようになった。これの時効(免除される年数)は明確にされていない為、いくら他国に居ようと発覚すれば強制送還される可能性がある。


他の国同様発給やいじめ問題を抱えており、また貴重な青年期を長期間費やすことになる兵役を嫌って忌避しようとする者は多い。しかし、韓国社会における軍の社会的地位は高く、兵役は男性にとって一種の通過儀礼ともいえる立ち位置にあり、兵役逃れ発覚すると社会から激しいバッシングを受ける。また、兵役を受けていない若者を採用しない職場も多く、兵役忌避者への社会的圧力は強い。


士官を目指す者は、17歳から21歳で受験出来る4年制の韓国陸軍士官学校に入学する。一方で女性には徴兵が無く、志願制のみであるが、少子化から兵役に適する男性が不足していることもあり女性の徴兵制に肯定的な意見は増えつつある。


兵力編集

2022年時点での現有総兵力は約50万人、うち陸軍約36万5千、海軍約7万人(海兵隊2.9万人含む)、空軍6.5万人、予備役310万人である。 これに加え民防衛隊と呼ばれる、予備役からも退いた成年男性で構成される後方支援を前提とした組織を合わせると、全国民の1割以上が何かしらの形で軍事組織に属しているというかなりの軍事大国と言える。

装備は西側製の物も多い一方、朴正煕政権より国産兵器の開発に力を入れており、K2戦車などの高度な兵器の海外輸出も盛んにおこなわれている。


歴史編集

1948年8月に創設され、同年4月3日に前身の南朝鮮国防警備隊が済州島朝鮮労働党員狩りの名目で「済州島四・三事件」という大虐殺を起こし、村の大半を焼き払う。このため島民の多くは韓国による虐殺を恐れて日本に逃亡して在日韓国人となった。


1950年6月に「保導連盟事件」などの自国民の大虐殺を度々実行した他、南朝鮮労働党に派遣された軍部隊の反乱が何度も発生し、軍幹部や兵士が大量に粛清された。その他にも1951年1月に幹部が兵糧を横領した結果、兵士9万人が餓死するという無能ぶりをさらけ出した。このように朝鮮戦争初期の韓国軍は大戦末期の極限まで追い詰められていた帝国陸軍並のグダグダぶりであった。


また共産政権への楽観論から装備も当初は警備隊程度の物で十分とされ、それが原因で初期は総崩れを起こした。白善燁将軍らの奮戦はあったものの、赤化統一を免れたのは全くアメリカ軍の支援によるものに過ぎない。一方で朝鮮戦争中に若者を中心に愛国心の高揚が起き、志願兵の殺到・綱紀粛正が起きたりと皮肉にも戦前に比べて軍内部が安定化していき、彼らは後に軍事政権の強固な支持基盤になった。


1960年4月に李承晩大統領が失脚した後、朴正煕と金鍾泌ら一部の軍人が軍事クーデターを起こし、韓国軍は突然政治の舞台に踊り出る。その後の韓国は軍事独裁体制が敷かれ、KCIAによる恐怖政治がしばらく続く事になる。ベトナム戦争にはアメリカから援助を引き出すため派兵し、対ゲリラ戦を朝鮮戦争中から行っていた経験からアメリカ軍よりも奮戦して能力を高く評価された一方、現地で様々な残虐行為を起こし、1998年12月に金大中大統領が謝罪を行った。


1979年10月26日に朴正煕が腹心であったKCIA部長金戴圭に暗殺されると、「ソウルの春」とも呼ばれる民主化ムードが高まりを見せたが、これに対し後に大統領に就任する全斗煥を中心とする「新軍部(ハナフェ)」は12・12粛軍クーデターを実行し、軍の実権を掌握すると1980年5月にこれに強く反対する民主化デモを武力鎮圧し、とりわけ民主化運動の中心的な人物であった金大中の地盤であった全羅道の中心、光州においては学生だけではなく市民も参加する大規模なデモへと発展し、これを鎮圧する過程において「光州事件」と呼ばれる事件を引き起こした。光州事件は韓国社会に根強く残る地域対立の一因となっている。


大統領に就任した全斗煥を中心とする第5共和国体制下でも軍は絶大な権力を掌握し、戒厳令の解除・プロ野球リーグの創設・ソウルオリンピック招致成功などの動きがある一方で、軍事政権による恐怖政治は続き、暴力団・犯罪者・社会的弱者・共産主義者などの矯正という名目で半ば強制的に送り込まれ、激しいリンチ行為によって多くの死者や精神障害などの重大な後遺症を与えるに至った「三清教育隊」・民主化運動に対しての厳しい弾圧による拷問・「緑化事業」とも称される学生への民主化運動家に対してのスパイ行為の強要などが行われていた。


政権末期の1988年には取り調べ中に死亡者が出た事やデモ隊の学生が頭部に催涙弾を受け、昏睡状態(後に死亡)になった事が世論に火をつけて激しいデモとなり、その中で全斗煥は退陣する事となった。


1988年4月の大統領選挙では野党の候補者一本化が不調に終わり、金泳三、金大中等候補者乱立の結果、成立した全斗煥の後継である盧泰愚政権はそのバックに軍部出身者等前政権で中枢であった人物を抱えながらも激しい民主化要求と全斗煥政権時代の汚職などへの厳しい世論に晒される事となり、結果民政へと移行を余儀なくされ、全斗煥夫妻は首都ソウルから追放措置を受け、政治的に排除される事となる。


1993年2月に金泳三大統領政権が成立すると、全斗煥政権への清算が進められ、裁判の結果12・12粛軍クーデターや光州事件などに対する裁判で全斗煥に死刑判決(後に無期懲役となり、金大中政権時に恩赦を受け釈放)、盧泰愚は懲役刑の有罪判決を受けた事もあって軍の政治的影響力はある程度排除されたが、現在も軍は保守派の支持基盤となっている。


北朝鮮との休戦後は多少の波風がありつつ大規模戦闘は控えられていたものの、2009年11月の大青海戦や2010年11月の延坪島砲撃事件などの小規模戦闘はある。


日本とは間接的同盟国として自衛隊と連携し、自衛隊は韓国軍からの留学生を受け入れている。一方、独島級揚陸艦や最新鋭潜水艦など対北朝鮮用としては明らかに過剰な海軍兵器も配備しており、対日戦を想定しているのではないかという観測もある。ただし、友好国や同盟国をも仮想敵国として国防計画を策定するのはどの国でも普通である。


ただ現状では、韓国軍が日本と戦争する可能性よりも、むしろ日韓のアメリカとの同盟関係を根拠に、韓国の対北朝鮮戦争に日本が参戦する可能性の方が高いと思われる。日本における集団的自衛権の法整備は、アメリカが対北朝鮮戦闘を日本に代行させる意図があるとも考えられる。

韓国軍を題材にした作品編集

  • フォーナイン~僕とカノジョの637日(莉ジャンヒュン)

韓国人漫画家が「ビッグコミックスペリオール」で連載した作品。

徴兵を迎えた青年(日本人留学生の彼女持ち)である主人公が軍隊で「テガリパックァ」と呼ばれるしごきを受ける描写があり、時代による徴兵の風習の移り変わりや悲喜こもごもが描写されている。



関連タグ編集

軍隊 軍事 ミリタリー 韓国

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