K-POP
けーぽっぷ
韓国のポピュラー音楽を指す言葉。
日本において国内のポピュラー音楽を「J-POP」と呼ぶことから、日本国内における比較語として日本メディアが「K-POP」という言葉を使うようになった。「K」は韓国を指す「Korea」の頭文字。
元々の韓国は大まかに表現しても総人口が日本の半分ほどで、内需がほとんどない経済構造もあってか、海外進出を最初から意識したプロモーションが行われ、大手事務所では下積みのうちからダンスや体型維持のみならず英語・日本語などの外国語習得も必要となるが、中小規模の事務所でもその限りではない。
大手事務所だと日本デビューの際も大々的に地上波の番組に売り込むこともあるが、小規模の事務所などだと日本で地下アイドル的な活動から始めることもあり、新大久保などのライブハウスで活動する小規模韓国グループを「しのくぼアイドル(「しのくぼ」は新大久保を連音化した韓国語的発音)」とも呼ぶ。
一般的にはダンスグループを指すことが多くソロシンガーやバンド、シンガーソングライターは原則K-POPに含まれないが、ヴィジュアルやアイドル性といった外見上が加味された評価で組み込まれたりする。
韓国出身のロックバンドやラッパーなども少なからずいるが、これらはK-POP扱いをされず、大手事務所もあまり取り扱わない傾向にあるため、前述したしのくぼアイドル同様「日本などの外国でデビューしたのち本国でデビューする」という迂回ルートを辿る場合もある。
ただし、ロックバンドを積極的に扱う芸能事務所が韓国にないわけではない。
楽曲も日本を含めた海外市場への輸出を前提にしているため、楽曲はEDMやダンスミュージックにラップパートを絡め、女性については露出の多い衣装を着用、カル群舞(グンム)と呼ばれる群集で織りなす刃のようにスピード感とキレのあるダンスパフォーマンスなど、ある程度パターン化されている。
基本的には各所属事務所がオーディションなどで候補生を選抜し、練習生としてレッスンを受けた者を事務所がコンセプトに基づいて選抜しグループが結成される。オーディション番組での選抜もある。
第1・2世代の頃は韓国にルーツを持つ外国籍メンバーを加えるグループもいたが、第3世代以降より多国籍グループが増えており、日本人でもK-POPアイドルグループに所属する例も少なくない。これは特に男性グループだと徴兵制によるメンバー途中離脱のダメージを軽減させる目的もある。
また、XGやNiziU、JO1のように日本などの国外の事務所やメディアが参加し、マネジメントを担当するグループも増えつつある。
一方、練習生時代から前述のプロモーション準備や体形維持を筆頭に過酷なスケジュールを組まされるなど労働条件が非常に悪いため心身に支障をきたす者もおり、最近ではメジャーデビュー後のメンバー活動休止発表が恒例行事となっている。
運よくデビューできても当面は多額の育成費用を返還しないといけないためまともに給料がもらえるようになるまで売れっ子でも数年かかるのが当たり前で、ヒット曲が出て「やっと精算金(ギャラから育成や売り込みにかかる諸費用を引いた金額)を受け取れた」と話す者も珍しくない。2008年に法改正が行われるまでは借金を背負う状態になっているアイドルもザラだった。近年でもデビュー半年以内で精算を済ませているグループはTWICEやNewJeansなどごく少数になる。
また、デビューの確率も針の穴レベルであり、練習生から三ヶ月程度でデビューする人がいる一方、10年近く芽が出ない人も当然ながら存在する。練習生は学業との両立は当然できないため、極端な例だと30近くで学歴もソーシャルスキルも何もない状態で社会に放り出される人もいる(この辺は同じ韓国のスポーツ選手育成に近いものがある)。
活動は日本のように全国もしくは世界ツアーといった巡業を行うグループもあるが、基本的に音楽番組やメディア主催の音楽賞への出演がメインとなっている。その音楽賞も80年代の日本を彷彿させる乱発状態かつ運営の不備が目立ち、ステージセットの稚拙な設営からメンバーが怪我をした例もある。
そんな象徴的な例として、2014年にガールズグループのLadie’sCodeが高速道路での移動中に交通事故に巻き込まれメンバー2人が亡くなってしまう大惨事が発生したが、この背景にもマネジメントの不備(マネージャーの過重労働)を指摘する人もいる。(尤も韓国は運転マナーの悪いお国柄のせいか、グループが移動中に交通事故に巻き込まれる案件は頻繁に発生している)。
また、後述するようにファンが投票や音源を多数買う(所謂「積む」)推し方が推奨されることが多い上に、イベント参加権を目当てとしたCD大量購入による廃棄が問題になるなど、廃課金になりやすい構造や各々が掲げる理念から外れたトラブルも提起されている。
ニュースなどで紹介される際に「第〇世代」と付く事があるが、デビュー年や世界的展開を時代区分にしたもの。評論家や媒体によりまちまちなので参考程度に留めてほしい。
第1世代
1996~2005年辺り。
代表的なグループはH.O.T.、S.E.S、神話、SECHSKIES(ジェクスキス)、FIN.k.l(ピンクル)など。また、COOLやKoyoteなどの男女混合グループが多く活躍していた。
大手芸能事務所のパワーバランスが強かった時代で、J-POPをロールモデルにしていたグループが多かった。
第2世代
2006~2012年辺り。
代表的なグループは当時5人組として活動していた東方神起やBIGBANG、少女時代、KARA、2NE1などがある。日本においてK-POPブームを牽引してきた世代で、現在も長いスパンでの活動や再結成などで活動しているグループも多い。
第3世代
2013~2017年辺りにデビューしたグループを指す。
防弾少年団、TWICE、BLACKPINK、SEVENTEENなど、日本を始め世界で絶大な人気を誇り、K-POPにおいて最も知名度がある世代がデビューした時期でもある。IKONが韓国初となる日本レコード大賞最優秀新人賞を獲得した。YouTubeやSNSを駆使したコミュニケーションでより多くの国で広まっていった。
第4世代
2018年~2022年にデビューしたグループを指す。
(G)I-DLE、StrayKids、TOMORROW X TOGETHER、ATEEZ、ITZY、ENHYPEN、TREASURE、NiziU、aespa、IVE、Kep1er、NMIXX、LESSERAFIM、NewJeans等が代表例。
第3世代による世界的な知名度の獲得の成功により、ワールドワイドなファンが多い世代となった。また、ガールズグループが豊作の世代でもある。
第5世代
2023年以降にデビューしたグループを指す。現在のK-POP界において最も新しい世代。この世代の代表グループとしてBlock Bメンバーでありソロ歌手のZICOがプロデュースするBOYNEXTDOOR、BOYS PLANET出身のZEROBASEONE、SM ENTERTAINMENT所属のボーイズグループRIIZEが挙げられる。またデビュー曲のMagneticが世界的ヒットを巻き起こしたILLIT、BLACKPINKの妹グループにあたるBABYMONSTERがデビュー。
ガールズグループが豊作であった第4世代とは違い、ボーイズグループが豊作であることが特徴。
その一方でMAVE:や異世界アイドルなどのヴァーチャルK-POPアイドルグループも登場し、一定の成果を挙げている事で注目されている。
男性グループ
女性グループ
韓国の制度や文化などの関係上、独特の用語や文化がある。
純韓国のグループだけでなく、LAPONE所属グループ等の日韓合同事業グループのファンも使うことがある。
- カムバック
韓国の音楽界は活動期と準備期間がはっきり分かれており、「準備期間を終えて新曲をリリースし、その販促期間に入る」ことをカムバック(略してカムバ)という。これに合わせてテコ入れを行うグループも多い。また、ファンには公式から下記の「スミン」「ミュス」の呼びかけがされることもある。
この期間は一日12時間以上の労働を2~3週間繰り返すのが当たり前で、そのためメンバーによっては生放送で泣き出すなど、精神的に崩壊する例も。
- スミン
ストリーミングの韓国語的な略称で、転じて音楽配信サイトでの再生回数を増やす推し活のこと。韓国音楽業界では韓国内のランキング形式音楽番組で上位や定期的に行われる賞を取ることが重んじられ、ランキングの算定にサブスクリプションサイトでの再生回数もカウントされる。
芸能事務所も契約更改にあたってこれらの音楽番組の成績を重視する傾向がある。
このため、ファンの間では再生回数を増やすための呼びかけがカムバックの時期は特に激化し、サブスクサイト側の大量投票防止策を掻い潜るノウハウや各番組の算定基準もよくSNSで拡散されている。
- ミュス
ミュージックビデオストリーミングの韓国語的な略で、主にYoutubeで公式MVの再生回数を増やす推し活。上述の「スミン」と同じような運動が行われている。
- ファンダム
「ファン」「領地や勢力範囲などを意味する接尾語「dom(ダム)」を組み合わせた言葉で、各グループのファングループを指す。上記のスミンやミュスを組織的に先導したりファングループ主導の社会活動を支援したりする一方で、過激な界隈では推しの私生活に口出しをしたり不祥事を起こしたメンバーや運営に対する行き過ぎた抗議行動(葬儀用の花輪を並べる嫌がらせやトラックデモなど)を起こしたりする。
- マスター
ファンの中でも目立った存在で、公式ではない写真を撮ったりのファン活動をする。日本のドルヲタで言うところの「トップヲタ」に近い。マスターが非公式のグッズを作って販売することもあるが、日本を含めた諸外国ではこのような行為はアウトである。そのため海外進出する事務所だと著作権などの問題でマスターの活動と対立することもあり、中には儲けすぎて国税当局から手入れされたり事務所からストップがかかることも。
- センイル広告
ファンがお金を出し合って推しの広告を出す文化。元々「センイル」は誕生日の意味で、推しの誕生日を祝う意味から始まった。
地下鉄の広告スペースが主な場所だが、バスラッピング、バス停、デジタルサイネージなどでも行われている。
センイル広告専門の代理店もあるが、公式に無断で行われることも多く上述のマスターがお金を取りまとめることもあるため、金銭トラブルが発生することもある。
近年では日本国内でも同種の広告を掲示する例もある。
- ヨジャグル
女性のアイドルグループのこと。「ヨジャ」は韓国語で「女の子」を意味する。「ヨジャドル」とも言い、本国ではさらに略して「ヨグル」「ヨドル」と呼ぶことも多い。
- ナムジャドル
男性アイドルグループのこと。「ナムドル」と略すことも多い。「ナムジャ」は「男の子」を意味する。
- ペン
ファンのこと。韓国語での発音ではFで始まる英単語がパ行になる傾向が強い為こう呼んでいる。
- ペンカフェ
日本流の発音だと「ファンカフェ」になる。公式ペンカフェは事務所が運営する公式FCで、韓国内の公式には国民番号(マイナンバーに相当)登録が必要なことが多く、海外では現地の企業が別途公式FCを運営することが多い。私設ペンカフェも存在する。
- 7年目のジンクス
韓国では公正取引委員会が定める「標準契約書(約款)」芸能事務所との契約は7年一区切りが通例であり、このため7年目に契約更改の交渉が折り合わずメンバー脱退やグループの消滅が起こりやすくファンを戦々恐々とさせる材料の一つである。
売れ行き不振のグループはこれを機に切り捨てられることも多く、売れていても利権を目当てに親族が首を突っ込むトラブルによりグループ分裂が起こる場合がある。しかし最近は商標権争いといった過去の紛争で傷付いた業界全体のマイナスイメージ改善を目的に「大所帯のグループが全員7年目の更改を完了」「一部メンバーが移籍してもグループは存続」という事例もできてはいる。
- ヨントン
韓国語の「映像通話」を指す「ヨンサントンファ」という言葉の略で、ビデオ通話アプリでアイドルとファンが短時間1対1で会話できるイベント。もちろん営業イベントであるため、参加するには音源の購入などが必須である。
- イル活
韓国語で日本を指す「イルボン(일본)」のイルから取られた言葉で、日本でのリリースや販促、ライブ活動のこと。
日本デビューのことを「イルデ」と呼ぶこともある。
ファンネームに載せて「イル(各グループのファンネーム)」と呼ぶときはそのグループの日本のファンを指す。
例えばStrayKidsのファンは「STAY」と呼ぶため日本ファンは「イルステ」と呼ばれる。
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