概要
日本で最も有名な音楽賞。スポーツ新聞を含む各新聞社の記者が中心となって選出する。
番組としての名称は『輝く!日本レコード大賞』。通称「レコ大」。
主催は日本作曲家協会と日本レコード大賞制定委員会。後援および放送はTBSが担当しており、授賞式はテレビやラジオで中継される。
放送日は、2006年までは毎年12月31日(大晦日)、以降は毎年12月30日となっている。
歴史
日本レコード大賞(以下、レコ大)は、音楽家の古賀政男氏と服部良一氏が、アメリカの『グラミー賞』を参考に1959年に創設した。
歴史が長く、特に1970年代には大きな人気を誇り、授賞式の視聴率は30%から50%を記録した。当時は、NHKの『紅白歌合戦』と並び、大晦日の恒例行事として人気を博していた。
レコ大の人気を受けて、TBS以外の民放局が持ち回り放送を提案したが、TBSが拒否したため、他の4局が持ち回り企画として『日本歌謡大賞』を立ち上げたことでも知られる。
このように、当時のレコ大は音楽界で圧倒的な存在感を持っていた。
「日本で最も権威ある音楽賞」として信頼され、受賞者が感激のあまり涙を流して喜ぶ姿も名物となっていた。
しかし、権威が高まるにつれて、選考方法や結果に対する疑問の声が出るようになった。
たとえば、ホイチョイ・プロダクションが記したテレビ暴露本には、「本当にいい曲に投票する選考委員は萩昌弘さん※しかいない」との記述がある。
(※映画評論家で、当時TBSで放送されていた『月曜ロードショー』の解説を担当)
また、1980年代に入ると「音楽賞に縛られたくない」という理由で受賞を辞退するアーティストが増え始めた。
さらに、1989年以降、紅白歌合戦の放送開始時間が午後7時に繰り上がり、レコ大は完全に裏番組となってしまった。
そのため、同時放送中は受賞会場から渋谷のNHKホールまで移動するシーンを中継するのが名物となっていたが、歌手への負担が相当かかるため、2006年から大晦日ではなく12月30日に変更した。
選考に関する問題点
レコ大の選考には、長年「なぜこの曲が選ばれたのか分からない」という不透明さが指摘されている。
21世紀に入るとその傾向がより強まり、「結果が最初から決まっている出来レースではないか」と批判されることが多くなり、国民からの信頼を失う要因となった。
この問題は全盛期も存在しており、たとえば、山口百恵氏は一度も大賞を受賞していない。
また、1994年に大賞を受賞しながら授賞式を欠席したMr.Childrenが後に発表した楽曲、『光の射す方へ』の歌詞にも、「出来レースでもって勝敗がついたって拍手を送るべきウィーナーは存在しない」とレコ大の審査を揶揄し皮肉る表現が含まれている。
また、レコ大では、洋楽をカバーした楽曲は対象外となるというルールがある。このため、西城秀樹氏の『YOUNG MAN』やDAPUMPの『U.S.A』など、大ヒットした楽曲であっても受賞の対象とはならなかった。
こうした選考基準も、批判の一因となっている。
1億円買収問題
2015年の大賞を受賞した三代目JSOULBROTHERSの『Unfair World』に関して、2016年に週刊文春が「1億円の買収があった」と報じた。
この報道では、芸能プロダクションのバーニングプロダクションが、三代目JSOULBROTHERSが所属する株式会社LDHに1億円を請求していたことが明らかにされた。
これにより、「レコード大賞はお金で買える」という批判が広まり、賞の信頼性が大きく揺らいだ。
逆にネット民は、「やはり」と納得する結果となった。
レコ大の選考には各新聞社が関わっているため、このニュースがテレビで報じられることは一切なかったが、日本作曲家協会会長の叶弦大氏は週刊文春で謝罪。
この報道後、2016年のレコ大ではLDH所属のアーティストの各賞エントリーが完全になくなり、同社の社長であるHIRO氏は年内で辞任した。
このような対応については「火消し」との見方が強く、世間の失笑を買う結果となった。
これらの問題を受け、選考基準の見直しが求められるようになった。
2019年にはFoorinの『パプリカ』、2020年にはLiSA氏の『炎』が大賞を受賞するなど、その年を象徴する楽曲が選ばれる傾向が見られた。
これにより、改善の兆しが感じられるようになった。
2021年の問題
しかし、2021年に週刊文春が「Da-iCEが大賞を受賞するよう、エイベックス代表取締役会長・松浦勝人氏がレコ大関係者に働きかけていた」と報じ、この報道の翌日にDa-iCEが実際に大賞を受賞した。
ネットでは「またお金で決まったのか」といった声が多数寄せられた。
また、同年、レコ大運営との調整役を担当していたSonyMusic役員のTBS社員への暴行事件とその隠蔽も発覚した。
(『モニタリング』内の『THE FIRST TAKE』パロディ企画を当人の許可なく放送したことが原因。当該役員は役員職を取り上げられる形で担当を外されたうえ、人事異動で系列会社へと左遷された)
この影響でSonyMusicはレコ大への出資を控え、2022年以降は関連アーティストの受賞が大幅に減少する事態となった。
最近の動向
こうした問題を受け、審査員側も信頼回復の必要性を強く感じるようになった。
第64回ではSEKAI NO OWARIの『Habit』、第65回ではMrs.GREEN APPLEの『ケセラセラ』、第66回では同じくMrs.GREEN APPLEの『ライラック』が大賞を受賞するなど、実績や人気を重視した選考が行われるようになっている。
これにより、かつて失われた信頼を取り戻す兆しが見られるものの、問題の完全な解決には至っていない。