概要
第二次世界大戦末期(1945年8月)、とある島で捕虜になってしまった二人の日本兵を描いたゲイ向け漫画。山川純一の作品の中でも比較的シリアスな作品で、相変わらず多少強引な展開はあるものの、比較的生々しい人間ドラマが展開されている。
作品のモチーフ自体が『戦争』という重いテーマであることも、少なからず影響していると言えるだろう。
ニコニコ動画などでは本作を朗読した動画が投稿されており、興味がある人は一度見てみることをオススメする。
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登場人物
嶋本
主人公。
上官である小早川と共に連合軍(「米国」という単語が出てるのでおそらくアメリカ軍)の捕虜になり、獄中で日本が太平洋戦争に負けたことを知る。小早川とは相思相愛であり、絶望的な状況でも互いを心の支えとしている。
基地内からダイナマイトを1本くすね取っており、これで脱出しようと試みるが…。
階級は不明。ちなみに部隊の連中は作戦を無視して突撃した結果全滅したらしい。
小早川大尉
嶋本の上官。28歳にして大尉にあるためかなりのエリート軍人と思われる。
芯の通った性格で、嶋本を一途に愛している。
ある日牢獄の中で嶋本とキスしているところを目撃され、ゲイであることを見抜かれてしまう。
そしてこれを面白がった基地長のバゥアーズ大佐により、副官のバリグザー大尉を通して「今夜本国へ帰還する前夜祭を行うから、そこでホモセックスをして見せろ」と要求されるが、その心は盛ってる間に自分たちを始末する算段だろうと察知。嶋本から「ダイナマイトで奴らを道連れにしてやろう」と提案されるが、「導火線が短すぎてそんな余裕は無い」「敵の武器を使ってまで生き延びようとは思わない」としてこれを却下。だが黙って殺されるつもりもないようで、ある妙案を思いつく……。
※20代後半で大尉というのは異例の高階級で、余程の大手柄を挙げたか、高学歴なエリート層である。故に本来前線に出されることはないのだが、対戦末期で余程の人手不足だったのか、何かしら嫌われて左遷されたのかは不明。
バゥアーズ大佐
嶋本たちがいた戦線におけるアメリカ軍の司令官で、舞台となった基地の責任者。カタコト。
強面のスキンヘッドという人相通り冷酷非情な性格らしく、小早川は「情け容赦のない氷のような男」と評する。
"用済み"となった捕虜である小早川と嶋本をさっさと殺すでもなく、わざわざ「帰投の前夜祭の余興」として自分達の前でホモセックスをさせている辺り、単なる辱しめというよりはコイツの趣味も兼ねていたのかもしれない。
当初は顔色ひとつ変えずに見守っていたが、こいつ自身もゲイなのか、次第に興奮を抑えられなくなりバリグザーに奉仕を要求。彼のデカマラを「美シイ」と感嘆しながらシゴいたあと対面座位で掘った辺り、ホモセックスではタチ(責め役)気質と思われる。
「オオ…イイゾ モット動ケ!」
バリグザーを掘って曰く。上官の威厳か、単に年だから自分が動くのはキツいのか……。
バリグザー大尉
アメリカ軍の副司令官。ケツアゴで毛深いハンサムガイ。
作中の会話シーンなどの描写から、日本語は堪能なようである。
左手の薬指に指輪を嵌めておりおそらく既婚者と思われるが、バゥアーズから奉仕を命じられた際には素直に従い、堂々とそそり立つデカマラをシゴかれた後ホモセックスに至った。ノンケだが命令に従わざるを得なかったのか、それとも彼自身バイなのかあるいは同性愛者で結婚自体が偽装なのかは物語中では語られていない
連合軍部隊の皆様
カタコトの下っ端兵士たち。
嶋本と小早川の関係を上官に報告したようで、その際「コイツらホモダゼ」とか「バウァーズ大佐が効いたら見物だな」とか茶化しているが、ラスト手前の大ゴマ(シルエット)ではこいつらもサカッているのが確認できる。やっぱりホモじゃないか(呆れ) 。
なお野郎しかいない環境では女の代替としてホモセックスに走るやつが出る事があるのだが、この部隊がホモの集まりなのか、単に捌け口を求めてかは不明。どっちにしろ「日本男児の心意気」に触発されたのは上官だけではなかったようだ。
関連項目
あおおーっ!!:掘られた嶋本の雄叫び。
サウスパーク:劇場版「無修正映画版」のテレンス&フィリップがUSOショーで公開処刑にされる展開が、本作のバゥアーズが小早川と嶋本を前夜祭で公開処刑しようとする目論みを彷彿させる。
ウルリカ殿…愛しておりました…:フリーゲーム「阿部鬼」の台詞。「地獄の使者たち」のラストの台詞が元ネタである。
ネタバレに注意しなさい
- どうなる嶋本小早川
小早川の考えた作戦、それはなんと自身の肛門にダイナマイトを隠し、タバコで着火して自爆というトンチキであった。冷酷なバゥアーズが自分達を生かして帰すはずがないと読んだ小早川は、嶋本がくすね取ったダイナマイトで捨て身の報復を考えたのだ(あと会場にはフンドシ一丁で連行されてきたので、服の中に何かしら仕込むのも無理だった)。
※そもそも末期の日本軍は神風特攻隊とか人間魚雷とかトチ狂った作戦を決行したくらいだし……
「タバコを一本喫わせてほしい」
「クク…最期ノ一服ダ 喫ワセテヤレ」
バゥアーズにタバコを求める小早川、余興として肛門でタバコを吹かすという特技を見せた後、そのタバコを刺したまま嶋本と堂々たるホモセックスを行う(尻に仕込んでいるのを悟られないためか、小早川がタチとして嶋本を掘る形に)。
そして……
ジ… ジジ……
「どうやら導火線に火がついたらしい 肛門の中で湿(し)めなけりゃもうじき爆発する あとは気づかれない事を祈るだけだ」
ジジジ……
「……怖いか?」
「いいえ…」
「いいえ、大尉どのと一緒なら…」
ジジジジジジジジ…
「嶋本よ、お前を愛していたよ お前とめぐり逢えたことで、おれの二十八年の人生も悔いなく閉じることができる」
「あの世でまた逢おう」
ジ…
(小早川大尉どの 愛しておりました……)
最後のコマは白黒反転しており、まさにその瞬間を示すかのよう。だが物語はこのシーンで終わっているため、最期は各自の想像に委ねられている。死を受け入れ、神妙ながらも安らかな表情を浮かべる二人の姿が涙を誘う。