概要
多くの種別の利用者に適した広い範囲のトイレ、かつては身障者用ともされた。
広い室内を移動するために手すりが取り付けられ、足腰の不自由な人でも利用しやすくなっている。また、オストメイト(病気などにより通常の方法でし尿物を排出できない人)向けの設備、オムツ替えのための専用の大きな台などの様々な設備が設置されているものが多い。
利用者の特性上、入室後一定時間以上経つと異常が起こったと判断され、自動的に扉のロックが解除されたり、警報がなるものがある。
利用上の問題
その形状から身体障害者向けと認知され、健常者の利用が憚られる風潮があり、実際に2000年代初頭辺りまでは設置自治体などから公式に「障害者トイレ」と呼称されることもあった。一方、「広い個室空間」という利点から、通常の公衆トイレ同様に気安く使いたいという人も多い。
特に小学生未満の子連れの母親は、自分が離れている間に子供が迷子になる心配が付いて回るため、多目的トイレの広い空間で監視できるメリットはありがたいものだという。
よしんば我が子を普通の公衆トイレに連れ込めたとしても、通常の個室では手狭になり、扉の前で待たせるにしても大人しく待っていてくれるか、また勝手にトイレを出て迷子にならないかなど、リスクも多い。
似たような事情で、トランクやキャリーケースなど、大型の荷物を抱えて単身で移動する人も利用する。
なにぶん、金品や個人情報の詰まった荷物ゆえ、手荷物を放してトイレを利用した隙に置き引きに遭う不安が付いて回る。だからといって、トランクやキャリーをトイレに持ち込もうとすると場所をとるうえに他の利用者の通行の妨げにもなる。入口に階段があると、引き回して入るのも困難である。
その他、駅のトイレなどでは多目的トイレのオストメイト関連設備以外には石鹸が配備されていない場合もあり、手を洗う時にどうしても石鹸が必要だとの考えを持つ人物が好んで使う、という特殊な場合が存在する。
2020年問題
ところが、2020年の初夏を少し過ぎた頃...。
とある芸能人が多目的トイレを倫理的に推奨されない行為と言ったスキャンダルに利用されたことで、多目的トイレの用途について議論が噴出する事態となった。
さらに現場となった高級百貨店の多目的トイレは、人間のクズの追跡で場所が特定されて野次馬が押し寄せてしまい、店側は警備員を配備して利用者を厳しく制限してしまった。
実際にそうした行為に及ぶと、長時間に亘ってトイレを占拠するうえに、床や室内の設備を汚すことになり、他の利用者に多大な迷惑をかけることに繋がる(中には悪影響を及ぼす動画を観て行った若手の異性等も見かけられる)。
特に長期占拠は、本来想定されている利用者が急を要している場合、その妨げとなって大いに迷惑である。
トイレはあくまで身をきれいに保つ空間であることを、今一度しっかり認識したい。
従来から存在する問題
なお、こうした使い方が発生する以前にも、より大きな問題として横たわっているものがある。
特に市役所や図書館などの公共施設にある多目的トイレは、公的機関の公衆トイレとして比較的よく整備されていることも多く、加えてオストメイト対応設備には前述のような石鹸設備や、シャワーが併設されている場合が多い。
本来はこのシャワーはストーマの汚物洗浄の、石鹸はそれによって大きく汚れた手の洗浄を目的としているはずなのだが、ホームレスや金銭対応をケチる人間がコインシャワー代わりにこれを利用するような事例がいくつか存在している。
更に言えば、キャンプ場周辺での同様設備に至っては鍋などの調理器具をここで洗うような事例まで存在しているという。
こうした利用方法は本来の目的と大幅に異なるため、トイレの管理者によって名指しで同様の行為を行わないよう記してあることもある。
故障の原因にもなり、管理者や本来のオストメイトの方にも大変迷惑となるだけでなく、そもそも汚物の処理を行う場所で(いくら清掃されているとは言え)便器で体や鍋を洗っているのも同然である。やる前に一考をおすすめする。
また、トイレの場合、広い個室内のために洗面所などに併設している清掃用コンセントが届かないことが多く、個室内に専用のコンセントを併設していることが多いが、トイレが新しければ自由な利用を謳っている様な多機能トイレ以外の個室にも近年増加している様な温水洗浄便座を有する場合、通常の個室内にもコンセントが整備されている場合があり、これに繋がる洗浄便座用の配線を引き抜いて個室でもこれを携帯電話などの充電に使用する(ここまで来ると無知では済まされない明確な窃盗行為に問われる可能性が高く、故障のリスクがある)場合、多目的トイレに限らない問題である且つ同様に利用してはいけない。
名称変更へ
国土交通省による建築物のバリアフリー設計指針が4年ぶりに改定される。
これにより障害者ら向けのトイレは「多目的」「誰でも」といった名称を避け、利用対象を明確化するよう求める。