名称
「アダルトビデオ(Adult Video)」は性描写を主とした映像作品を挿す和製英語であり、英語圏では映像以外のジャンルを含む「ポルノグラフィ」の名称で呼ばれる。
略称「AV」(尚、国際的な略称は「PRV」になる事に注意)。俗称「エロビデオ」など。
主に男性視聴者が自慰をするために鑑賞する。
同性愛者、両性愛者向けのゲイビデオや、女性向けの作品も存在する。
その性質上、18歳未満の青少年の視聴および出演が禁じられているが、18歳未満のAVも裏ルートで流通し、報道されるほど社会問題になっている。
概要
1980年代、LDやVHSを用いた家庭用ビデオデッキとともに爆発的に普及。それまでのポルノ映画に取って代わり、映像ポルノの主流になった。
というより、アダルトビデオの隆盛が家庭用ビデオの普及のきっかけとも言われており、日本のビデオ史はそれすなわちアダルトビデオ史でもある(アダルト映画に因んでアダルトビデオと呼ばれる様になったのもディスクやテープを用いたビデオ媒体が一般的になった事から起因)。
1998年から徐々に媒体がVCDやLD、VHSからDVDへ移行すると共に呼称も「アダルトDVD」とも呼ばれ、2008年にBDが一般的になり「アダルトBD」とも呼ばれる存在となったが、一般名詞としてのアダルトビデオ、エロビデオの呼び方も未だ残っている。そもそも「ビデオ」はビデオテープのみを指す名称ではなく、電気信号で表示される映像なのでDVDだろうがBDだろうがなんら問題はない(そもそも再生機で再生出来る場合の規格は「DVD/BD-Video」となる為)。
また、レンタルビデオ店や専門店による販売のほか、社会の変化に沿って通販やインターネットを用いた販売・配信も始まり、そうしたシステムの普及にも一役買っている。
反面、過剰な宣伝や出演者のスカウト活動、果ては無許可でのゲリラ的撮影(例・渋谷駅前ダンプカーAV撮影事件)によって全年齢向けの場に出てくる機会も多く、公然わいせつや死傷者を出すような悪質なメーカーがしばしば刑事事件の被告として報道されてもいるなど、内容以前の段階で悪印象が強い業界でもある。
年齢確認やコンプライアンスの強化等によって環境改善に努めてはいるが、今尚表現規制問題の筆頭に挙がる事は少なくない。業界側の努力だけではイメージアップに限界がある事もまた事実である。
特に年齢確認は年齢を偽った不良未成年からメーカーが騙されて損失を被った事件も発生したことから年々厳格化の傾向にあり、事務所やメーカーとの契約時はもちろん、顔馴染みの出演者であっても毎回年齢確認を行ってから撮影が原則とする流れが主流になってきている。マイナンバー提出を出演者に求めるところもある。
近年では過去の出演者の権利を尊重する意味で、弁護士(志田陽子弁護士や山口貴士弁護士など、表現規制慎重派が主なメンバー)や法学者で構成する「AV人権倫理機構」が発売から5年以上経過した作品については出演女優からの配信停止の申請を仲介している。
これにより、web配信を終了する作品も多い。
配信停止申請を行う理由としては親バレなどの事情の他に「昔の契約がいい加減だった時代の作品であるため一旦降ろしてもらいたい」など、それぞれの理由がある模様。
ただし、メーカーによってはAV人権倫理機構との連携がないところもあり、全作品の停止に応じられている訳ではない。また、パッケージ版については販売自体は停止されても、ユーザーの手に渡ったものの回収はしていない。
業界の中核に位置し、一般的にも連想されやすいのは「男女の性行為を記録したビデオ」である。これに「女性単体での行為」や「女同士の性行為(所謂レズ物)」が続き、それぞれに下位ジャンルが連なっている。
ゲイを扱ったものは「ゲイビデオ」とも呼ばれ、主にゲイの男性を対象としているが、それ以外の層から本来の目的とは異なる使われ方をすることがある(『レスリングシリーズ』、『真夏の夜の淫夢』など)。
前述の「レズ物」はヘテロセクシャル男性向けのファンタジーを主軸とするものであり、あくまでファンタジー。
他にも下ネタやセクハラの題材として、視聴者の側が他人の目に触れさせて回る機会も多い。本来特殊な性癖向けのプレイだったものが、業界での流行を通じて一般人の性生活に普及するという事例も後を絶たない(→例のプール、ぶっかけなど)。
「リアリティ」について
いずれにせよ、他の映像作品同様「演技」や「仕込み」が多々含まれる娯楽の一種であり、少なくとも現在表に流通するものは事前に台本を作って撮影する(一般の映画やドラマ程細かくないことも多いが)し、所謂リョナ系のものでも特撮めいた技術で撮影されている事が多い。
リョナ系でない作品にも登場するものでも、実際の性交渉で女性相手にすると心身にかなりの負担となる行為もある。
例えば手マンで触れる女性器は外部に露出した粘膜、臓器に等しい部位であり男性主観で「激しい」でない勢いでも傷つけ激痛をもたらす危険がある。
顔射も、精子の入った精液が目に入ると結膜炎や失明の危険がある。また、精液には「プロスタグランジン」という成分があり、これを飲み込む(精飲)とおなかを壊すおそれがある。
その内容を無批判に現実に持ち込む事は大人として褒められた態度では無いだろう。
事実、制作側やかつての出演者達(加藤鷹や紅音ほたるら)やしみけんら現役出演者達も「AVはあくまで演出のあるフィクションであり、教科書にすべきではない」と強調している。
女性向けアダルトビデオ
異性愛者向け
女性向けの作品も徐々に作られ始めているが、逆に話題に上る事はほとんど無く視聴を公言する者もほぼいない。
表にはでにくい話だが宝島社の雑誌『steady.』の2017年1月号によると57%の女性が女性向けAVを視聴したことがあるという。
とはいえ、異性愛者男性向けのAVと比べるとその市場はかなり小さい。
日本ではソフトオンデマンドのグループ会社「シルクラボ」などが制作している。「シルクラボ」の場合、会員数は2012年に1万人だったのが2017年に7万人となっている。
パッケージDVDと配信の双方で展開するが、割合は3:7と大きな開きがある。
別の制作会社「ラ・コビルナ」代表とのインタビューによると、こちらの制作作品では男性の身体がメインに映されるが、性器には接写されない。顔射シーンやフェラシーン、また精液そのものを映すカットが無いか、最小限である。
男性には好きな人が多いフェラチオのシーンは女性からは好まれないとのこと。
ストーリー性、前後の自然さが重視されており、シチュエーションとしては恋愛モノが多い。
タイトルや製品パッケージもポルノとわかりにくいものが多く、一般作品と同じ棚に収めても違和感が出にくい形となっている。
配信系ではその限りでは無い。成人の方はFANZA等の配信委託サイトで実例をみるのも良いかもしれない。
女性から見て自然なポルノ、という作品テーマは海外でも追求されている。フェミニストである監督エリカ・ラストらが制作する「クラフト・ポルノ」は男性の視聴者も多く、60パーセントにもなるという。
同性愛者、両性愛者向け
異性愛者男性向けの「レズ物」でない、同性愛者、両性愛者向けの作品も存在する。しかしその規模は異性愛者女性向けよりもさらに小さい。
ヘテロセクシャル女性向けと異なり、日本語ではまだ、制作者側のインタビュー記事がネットにあがることもない。
メーカー
クリスタル映像 ソフトオンデマンド(SOD) coat GIGA MUTEKI TMA等。
撮影機材と出演者一名揃えれば製作が可能なジャンルであるため、企画=監督=カメラ=出演=営業=販売のような零細メーカーも無数に存在する、裾野の広い業界である。
極端な例では露出趣味を持つ者が趣味と実益を兼ねて公開・販売をしている作品さえ存在する(→自撮り、ハメ撮り)。
pixivでの扱い
pixivは主に二次元を題材とするサイトであるため、三次元のアダルトビデオが話題になることはあまりない。稀に出演者(主にAV女優)のファンが似顔絵を投稿している程度である。
先述のネタ目的での使用を除けば二次創作が作られる事もほとんど無い。せいぜいパッケージのパロディや、撮影風景を題材とした漫画やイラストにタグ付けされるくらいであり、それも具体的な行為名の方が優先される傾向にある。
なお、略称の「AV」の方が使用例が多い(「AV」で完全一致検索)。
ちなみに前者より後者の方がR-18作品の比率が高いという逆転現象が発生している。
また、業界の動向と二次元の動向は必ずしも一致しておらず、pixivでメジャーなフェティシズムとなっている足裏はほとんどSM作品でしかピックアップされていないといった差異もある。
二次元と実写AVの関係
世の中には「二次元の二次創作やパロディを行ったアダルトビデオ」という物も存在しており、下手な同人誌を凌ぐクオリティでカルト的人気を博していたりする。
これらの多くは版権元に無許可なので、バレて怒られたのかいつのまにかお蔵入りするものも多い。
しかし、エロ漫画やエロゲを原作としてきちんと版権元に許可をとって実写化した作品も少なからず存在する。
また低予算なのをやりくりしつつ特撮などを取り入れた実験作もある。
仕事ではなく趣味としてコスプレに興じる女優も現れており、ジャンルや次元の敷居は下がる傾向にある
。
主な二次元作品の公認実写化AV
→AV化も参照。
関連タグ
アニマルビデオ(こちらも略称AV)
GIGA特撮ヒロインAV:GIGAがリリースしているAVのシリーズ。
AV新法:アダルトビデオ(AV)出演の契約をめぐる被害防止と救済に関する新たな法案。