AV女優
えーぶいじょゆう
AV(アダルトビデオ)にて性行為を見せることで対価を得ている女性のこと。
海外におけるポルノスターとほぼ同様の職業ではあるが、日本におけるかつてのポルノ女優、ピンク女優とは異なる職業である。
専業の者と兼業の者がおり、中には学生だったり主婦だったりする場合もあるが、総じて「AV女優」と呼ばれる。
法律の関係上、18歳以上でないとなることができない。2010年代後半以降は業界の自主規制によりさらに厳しくなっており、後述のAV人権倫理機構加盟メーカー加入の事務所やメーカーにおいては事実上20歳以上からと規定されており、2022年の「成人年齢引き下げ」にあたってはAV人権倫理機構代表理事の志田陽子弁護士から改めて加盟メーカーに「AV女優としての契約は20歳以上が原則」との公開通知が出ている。
ほとんどが事務所(このジャンルでは「プロダクション」「ダクション」と呼ばれることが多い)に所属し、それからメーカーの面接回りをして仕事を得る。
トップクラス人気の「単体」と呼ばれる者は制作会社(メーカー)と専属契約をし、ギャラも高い。
単体女優よりややランクは落ちるが出演数で稼ぐ「企画単体(キカタン)」、さらにそれよりランクが落ちる「企画」と呼ばれる十把一絡げ的に扱われる者達がいる。
そのような人を含めると、2016年の時点で年間約3000人がAVデビューすると言われており、2011年の時点では延べ20万人のAV女優がいたと言う。名義を換えて再デビューするものも多いため正確な数値は測れないが、数万から数十万人いる/いたことは確かであろう。
AVに否定的な立場からは、エキストラとしての出演や盗撮の結果であっても「ビデオに映っていればAV女優」とする考えもある。
また、ビデオ販売という性質上「仕事」の後も半永久的に行為が保存されることになるため、「一度でも出演すれば死ぬまでAV女優」という考え方も存在する。
実際、元AV女優という肩書きはついて来がちである。
そのため賛否両論ある風俗産業の中でも特に風当たりが強く、長年ヤミ金融に頼ってしまった多重債務者や、知的・精神障害者等を強制的に出演させたり、盗撮映像や枕営業などを盾に女優になる他ないと脅迫するといった事案が後を絶たない職業でもあった。
反面、積極的ななり手が少なかったことから風俗産業の中でも多くの収入が得られた仕事であり、(日本では法律上性器にモザイクをかける必要があるが)合法的に自らの行為を不特定多数に見せられる数少ない手段でもあったことから、露出系の趣味を持つ者が趣味と実益を兼ねて出演するということも多々あった。
業界の体制の問題について、詳しくは後述する。
一般芸能界や他業界への進出
かつてはほとんどの女優が完全な日陰者として自らを扱ってきたが、飯島愛が一般芸能人への転身を成功させたの皮切りに、テレビへの出演や歌手活動などのタレント・アイドル化、二次元コンテンツとのコラボなど、積極的に日の当たる所に進出しようとする者も見られるようになっている。
業界としても「セクシー女優」「セクシーアイドル」などと呼称を変えたり、年齢確認やNGチェックシートの厳格化、業界団体の組織化など職場環境を改善したりといったイメージアップに取り組んでおり、現在は選考落ちも出るほどには人気の産業になっていると言われる。
一般芸能界に完全に転身するほかにも、10年前後の長期にわたって活動する者、歌手活動や非アダルト映像作品、バラエティ番組などの一般芸能活動と並行してAVを続ける者などもいる。
ほかにも、ヌードで仕事ができるということで一般からだとなり手の少ない絵画やデッサン用ポーズ集、カメラ雑誌などの(ヌード)モデルを請け負ったり、YouTuberなど単独でネット上の活動を行ったりする者もいる。
引退後
引退後は、仕事の性質もあって一般人に戻る(芸能界そのものから引退・廃業する)女優が大半だが、一般芸能界への転身の他に、一部は制作会社や芸能事務所のスタッフ、ヘア・メイクなど(AV以外も含めた)裏方に回ることもある。
また近年では真咲南朋のようにAV監督に転業する者もおり、現役で監督や脚本と女優を兼業するケースも増えている。
AV出身であることを明らかにした上で作家(例:川奈まり子)や漫画家(例:峰なゆか)に転身した者もいる。
異例のケースとして、新聞社在籍中にかつて女優として活動していたと告白し、退社後に社会学者(※社会学者としての査読論文は修士論文のみのため、事実上作家兼タレント)となった鈴木涼美(佐藤るり)がいる。
しかし、人気がそれほど得られなかった者に華やかな一般仕事は回って来ないのが実情で、数作で仕事が来なくなって消えたり、先細りの仕事をなんとか繋ぐためハードプレイを解禁しても長持ちしない者も多い。
「AV出身」ということに限らず、あまたいる芸能人の中で長期的な成功を収めることができるのはあくまでごく一部であり、多くの女優はAV周辺の狭いメディアで短〜中期間活動するのみで、正式な発表もないまま引退することも少なくないのである。
中には何度も改名して再デビューを繰り返したり、一般職に再就職できず水商売・風俗産業などで細々と食いつないだり、といったケースもある。
また、もともと本業が風俗嬢や水商売のホステスだった者も少なからずおり、特に風俗嬢の場合は「本業である性風俗業の営業のために出演する」ケースも珍しくなく、こうした女優の在籍する風俗店の中にも「AV嬢在籍」を売りにする店もある。
元が暴力団も闊歩する風俗産業であることから、きな臭い話題が無くなったわけではない。
特に芸能界との関係強化はそのまま芸能人→AV女優という逆の流れが出来上がったことをも意味しており、売れなくなったアイドルやタレントが安易に送り込まれてくる例が後を絶たない。
まともにデビューさせることを念頭に置かず「訓練費」や「宣伝費」の名目で多額の借金を負わせ、それでもAVへの出演を承諾しないと「違約金」としてさらに借金を増やすという、現代の債務奴隷としか言いようの無い手段を用いる事務所すら存在することも明らかになった。
一方で、元が有名であるほど転身後の人気も高くなる傾向にあることから、現役アイドルユニットの中から何人かを強制的に脱落させるという本末転倒な手段も現れ始め、最早二つの業界の垣根は無くなったと言っても過言では無い状態となっている。
またアイドルグループ在籍時に不祥事を起こして実質クビになったり、地下アイドルなど(運営状態が原因で)解散したりしたアイドルが、芸能人としての再起を図るべくAVに転向するケースもある。
最初からアングラな業界だった着エロアイドルやジュニアアイドルはさらに凄惨な状況になっていると言われ、「本番」以外AVと変わらない行為を繰り返してほとんど洗脳した挙句、18歳になると同時にAV転向という販売モデルが既に常態化しているとされる。
撮影外でのわいせつ行為や枕営業の告発も後を絶たず、しかもその多くが不自然な形で取り下げられている現状から業界の浄化を信じることは難しい。
芸能界の背後にはマスコミやそれこそ反社会的勢力が強力に付いていることもあって警察など公的機関もそれほど強く出られず、支援の動きを見せる弁護士やNPOも存在しているものの、その数に対して余りに事案が多くいたちごっこにもなっていないというのが現状である。
一般人でも、家族や恋人からのDVを受けて周りに頼れる人がいなかったり、学費(奨学金や学生ローンも含む)、ホス狂やギャンブル依存症等で多額の金が必要なったりして「手っ取り早く稼げる」とAVを志願するケースもある。
また、精神障害や軽度知的障害(あるいは知的ボーダー)、発達障害(グレーゾーンを含む)などを抱える女性(冷静で客観的な判断が難しくなっている状態の女性)を騙してAVを出演させるという悪質なメーカーも存在する。
障害を抱える人は一般企業での継続的な就労が難しいことも多く(※本人にとって障害の特性と仕事が合っていて、まともなメーカーの元長続きすることもあるが)、「普通の仕事」の体制を知らないまま働かされ、金銭的・肉体的、そして精神的に搾取されてしまう危険性がある。
仮にリスクを承知の上自発的にAVに出演したにしろ、過酷な仕事で心身の調子を崩してしまいAVだけでなく一般の仕事に転向することも難しくなる、ということも度々起こっている。実際に、具体名こそ出さないがリストカット(アームカット)などの自傷跡や、極端な痩せや吐きダコといった摂食障害と見られる様子が確認できる女優もいる。
一方、これまでポジティブではない理由で「流れ着いていた」層が、基準の厳格化や業界の改善策で"クリーンになった"AVに出られなくなり、アングラに近い風俗やAV業界団体の範囲外で歯止めの効かない脱法動画サイトなどに流れるケースも少なくない。
そうまでして出演者を集めた所で、同様の事例が多発しすぎたために過当競争が起きており、多くの女優が初回契約で決めた本数を撮り次第引退を勧告されるという厳しい現実に晒されている。
契約更新のためにはよりハードでマニアックな撮影に応じることで差別化を図るほか無く、アナルや輪姦は既に当たり前のプレイとなった。撮影も下請け孫請けの零細メーカーに投げられてゆき、中には撮影許可を取っていなかったためスタッフ諸共公然わいせつで逮捕という笑うに笑えない末路を辿った者さえいる。
当然女優自身の契約料も下降の一途を辿っており、下手をするとソープランドやストリップにでも転職した方がマシというような状況になっている。
かつてはそのような女優を「堕ちる」と評したが、現在ではむしろその方がいい待遇を受けられる可能性さえ出てきた。AV以外の風俗産業は斜陽気味で、例えAV界で二流だった女優でも特別待遇のドル箱候補として迎えることが多いからである。
もっとも、業界としてもその流れは把握しており、先手を打って繋がりのある店を紹介して安く買い叩かせるという事務所も存在しているようだが。
また、事前に撮影本数や出演料を決めておくというシステムはかなりの曲者で、ソフトな内容とハードな内容を抱き合わせにして契約させたり、作品がいくらヒットしようが出演者には1円も入らないと言ったことが広くまかり通っている。
と言うか、この業界に肖像権や著作権は無いも同然であり、一度撮られた映像は販売元が召し上げ、好きに使い回せることになっている。女優のみならず、男優も監督もカメラマンも常に不安定な状態で仕事をしているのであり、それが責任の擦り付け合いと「なんでもあり」なモラルハザードを生む大きな原因となってしまっているのである。
話題作りや面白半分で、スタッフが女優の個人情報を勝手に流出させたという、他の業界ではあり得ない杜撰な事件も起きている。一般人が抱きがちな「肉便器」「何してもいいのよ」という認識を、本来女優を守るべき業界自体が持ってしまっている状況である。
素人の台頭も逆風である。単に競合相手が増えるという問題の他、若くて初々しい反応を好む視聴者が増えたことで「出れば出るだけ価値が下がる」という状況が加速。顔も名前も売れていない彼女達と異なり名前を変えて再デビューというわけにもいかず、「蟻も集まれば象を倒す」を地で行く窮地に追い込まれている。
逆に言えば、始めから業界に長居する気が無く、趣味や小遣い稼ぎとして出演する分には悪目立ちせず好きに出入りできるいい時代になったとも考えられるが、今度はバックに何も付いていない弱さに付け込もうとする輩が狙っている。
先述の状況から、この業界にいる人間の多くは不本意ながら仕事しているか、悪い待遇でも構わないと考える真性の変態。彼らがそのストレスやあり余る性欲を女優で発散するということは大いにあり得ることなのである(→バッキー事件)。
なお、リンク先の事件は上層部こそ逮捕されたものの、実行犯の男優を始めとした多くが不問とされ、現在も同様の作品を作り続けている(そして、警察は二度と動いていない)ことを追記しておく。
視聴者含めAV女優は不幸な日陰者でなければならないと考える人間も意外と多く、2ちゃんねるなどの匿名掲示板では、女優としてのみならず、本人の生命そのものに影響を与えかねない悪質な嫌がらせが日々投稿されている。
こうした現状には様々な方面からの改善策も出ており、業界内からは元女優の川奈まり子を主催としたAVAN(一般社団法人表現者ネットワーク)も立ち上げられ、志田陽子をはじめとした学者や弁護士を交えたAV人権倫理機構が立ち上げられた。
「動画配信やDVDの販売は出演者の意向があれば5年目以降に削除される」基準が整えられ、メーカーとの交渉を代行するシステムもできた。
これにより「以前のいい加減な契約のもとで販売された作品を停止したい」などの元女優の申し立てにより販売終了したAVも増えている。
従来AVへの入り口だったジュニアアイドルの過激着エロも2009年前後の摘発の影響もあり急激に本数が減っている。
しかし、AVの環境改善に関しては各団体の対立も見られ、フェミニズム弁護士を中心とするPAPSやHRNとそれ以外の団体では度々論争も発生している。
特にPAPS(ぱっぷす)の中心的メンバーはAV以外の表現規制問題で以前からAV人権倫理機構のメンバーと厳しい対立関係にあり、未だ課題は多く残っている。
またAVの自主規制強化に従って、逆に一般映画の方が「騙し討ちでベッドシーンを撮らせる」常態化が残ってしまっており、濡場シーン撮影でもNGチェックシートを作らないなどAVより環境が悪い状況が2022年前後の一般映画監督セクハラ問題で明らかになっている。
2022年の6月にはAVへの出演や発表などに関するAV新法が施行された……が、当の業界人や女優本人からの反発が大きい部分も多く、議論が巻き起こっている。詳細は当該記事を参照のこと。
pixivに記事のあるAV女優について、詳しくはAV女優一覧を参照。
AV及び芸能界からも完全に引退した者
- 上戸理亜、東山さな、寺脇詩織(ふたりエッチ)
pixivはイラスト投稿サイトであるので、AV女優の扱いは主に以下の5つに分けられる。当然ながら大半がR-18になる。
AV女優が投稿したイラスト
AV女優の中には漫画家や同人作家として活動する者もいるため、AV女優自身が投稿したイラストや漫画も当然ながら存在する。
大きく、AV撮影の体験記や半生を描くエッセイ漫画と、完全に趣味のイラストや漫画に分けられる。後者についてはプライベートの問題であるため、ここでは記載しない。
AV女優を描いたイラスト
AV女優を写実的に描いたもの、アニメ調に描いたもの、AV女優自身のネタを描いた物などがある。
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