概要
『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』にて、オールド・スネークが自身にXM8を向けてきたアキバに対してハッタリをかけた際の台詞である。
アキバは最初こそ「新米(ルーキー)だと?俺はこの道10年のベテランだ!」と強気に否定するも、スネークの余裕たっぷりかつ心底呆れた様子を見て不安になってしまい、銃を傾けセレクターを目視確認しようとした隙にCQCで投げ倒され、銃を奪われてしまう。
実のところ安全装置はちゃんと解除されていたため、本当にただのハッタリであった。
開発途中の段階では手違いでセレクターがセーフティポジションになったCGモデルを使用していた事があり、本当にアキバがミスをしている状態だったこともあったらしい。
やすやすと「ルーキー」を制圧したスネークは呆れて「良くこれで10年も生き延びてこれたな」と皮肉を返したが、実のところ彼はMGSでメリルに服を奪われ腹を壊していた反乱兵その人であり、アメリカ兵としての行き場を失ったあとは傭兵となり各地を転々としてMGS2のビッグシェル事件にも参戦、さらにどうやってか米軍に戻りラットパトロール・チーム01という特殊部隊への着任を果たしてスネークと戦場で遭遇したため、実戦に参加しながら本当にこれで10年生き延びて来たベテラン兵士である。
視界が狭くて見通し距離も短く、不審な物音がしてもすぐに忘れ去るなどゲーム的に無能な兵士だったことで有名なゲノム兵の一員だったという事でもあるのだが…。
MGSシリーズだと第1作の『メタルギアソリッド』に、ほぼ同じシチュエーションと台詞がある。
こちらはジョニー佐々木の装備を奪いゲノム兵に変装したメリルにスネークがFA-MASを向けられたシーンで、メリルが新米であることを見抜き「安全装置が外れてないぞ」と同じようなハッタリをかけている。
ハッタリ自体は通用しなかったものの「銃口が震えている」「視線が定まらない。新兵特有の眼だ」と立て続けに容赦なく畳み掛けて主導権を奪おうとした。後にラットパトロール隊長となるメリルとアキバの縁はこの時から深かったようである。
この時は英語の「セーフティ」ではなく「あんぜんそうち」と日本語読みの台詞になっている。
元ネタ
おそらく元ネタはMGS1のシチュエーションの下地となった1996年のアクション映画『ザ・ロック』のワンシーン。
ショーン・コネリー演じるジョン・パトリック・メイソンに対してニコラス・ケイジ演じるスタンリー・グッドスピードがベレッタ92Fを向けた際、事前に彼が非戦闘員であると見抜いていたメイソンが「安全装置がかかってるぞ」と指摘し、銃を奪い取る。
このシーンでは実際に安全装置が掛かっており、ハッタリではなくただの指摘だった。
また上記より古い使用例として、1973年の任侠映画『仁義なき戦い』シリーズ第3作『仁義なき戦い 代理戦争』において、菅原文太演じる広能昌三が、槇原組のヒットマンである的場からピストルを向けられた際「安全装置が外れとらんぞ!」と叫んで狙いを外させ、難を逃れるシーンがある。
元ネタではなくMGSより後発のゲームだが、『龍が如く7 光と闇の行方』ではスネークと同じ大塚明夫氏が演じる足立宏一というキャラクターが登場し、警備会社と偽った近江連合の構成員が自身に銃を突き付けてきたのに対して「安全装置外れてねぇぞ?」と指摘して隙を作り武装解除するというシーンがある。
「スネークの声優」として有名な大塚氏を起用したことへのオマージュに加えて、ハッタリでなく本当に安全装置がかかっている、ヤクザの抗争など、上記の様々な作品を連想させるネタの渋滞となっている。
現実世界において
M4アサルトライフルなど、現実の銃器はセレクターが指で触れる場所に配置されていることが多く、いちいち目で確認する必要はない為、よっぽどズブの素人でない限りこのハッタリはほとんど通用しないだろう。上記の各作品でも「落ち着いたプロが浮ついた素人をひっかける」というシチュエーションの象徴として描かれている。
アキバが持っていたXM8もセレクターは射撃姿勢のまま親指で操作できる位置にあるが、彼の名誉のために言っておくと、XM8は当時最新鋭で導入直後のアサルトライフルであった上、9年前はFA-MAS、5年前はAK系列(AN94かAKS-74Uのどちらか)の射手だったので、まだ使い慣れていなかった…のかも知れない。
加えて、きっぱり否定してなおスネークが本気で呆れているような態度を見せつけてきたため、アキバ自身の自信の無さもあってついつい目視確認してしまったか。
劇中の米兵はSOPと呼ばれるナノマシンの機能で精神安定を図ったり銃の残弾などを把握できるらしいのだが、アキバはある理由でその恩恵を受けづらいというのも理由の一つだろう。
逆にピストルでは、訓練されたプロの特殊部隊員でも安全装置を外し忘れる場合があるため、親指で解除することが難しい上記のベレッタといった、スライドに安全装置がついているデザインの場合であれば通用する可能性もある。
ただし、ピストルのセーフティレバーは本体の上の方にあって射手の視線からそのまま確認できるものも多く、グロックのようなトリガーセーフティだけの銃や、P226のようなデコッキング機能のみ、握り込んで解除するため掌の内側にあって敵からは見えないグリップセーフティなどもあるため、構造上この手のハッタリとは無縁なものも多い。
創作物にこうした銃を登場させる場合、うっかりスネークのオマージュをさせる愚を犯さないよう注意したいところ。