概要
移動物のどの点を取っても、同じ方向に同じ距離だけ移動している形となる。
別の言い方をすると、全ての点に対して同じベクトルを足し算した形となっている。
「平行移動」という名前の由来は、例えば多角形ならば、どの辺も平行移動の前後で比べると平行(ここでは「向きが同じ」の意)となっている事による。
一方、各点を移動の前後で結んだ線(スピード線的なもの)も全て平行となるが、それについては対称移動(鏡像移動)も同じなので注意が要る。
類義に「並進移動」が存在。
回転移動の組み合わせや、対称移動の組み合わせによっても実現できるが、平行移動を組み合わせてもこれらは実現できない。
平行移動を組み合わせた結果は、一つの平行移動で実現できる。
ネタなどにおいては等速直線運動となってる事もあるが、数学的にはあくまで移動の前後だけが問題となっている。
常に同じ向きを保ちながらの運動は、移動距離が微小な平行移動の繰り返しという見方ができる。
「水平移動」との混同に注意。
関連する図形
図形等において、特定の平行移動によって形が変わらない性質は「並進対称」と呼ばれる。
例えば、無限に広がる方眼紙などが該当する。
現実の結晶の構造なども、近似的にそう見なされる。
正三角形、正方形、正六角形は、単独で平面を埋め尽くす事が可能であり、その埋め尽くした様は「平面充填形」と呼ばれる。
この三種はどれも並進対称であるが、この内の「正方形による平面充填形」と「正六角形による平面充填形」は更に、平行移動によって全ての面同士が重なる性質も持っている。
残る「正三角形による平面充填形」は、反対向きの正三角形同士が平行移動では重ならない。
一方、頂点同士を重ねようとした場合は、正六角形と正三角形で逆の結果となる。
正方形以外の四角形でも単独での平面充填が可能だが、平行移動で全てが重なるためには平行四辺形である必要がある。
六角形の場合は、向かい合う辺同士が平行かつ長さが等しい事が全ての面が重なる条件となり、それは「点対称な六角形」とも言える。
三次元においては、向かい合う面が全て平行移動で重なる性質を持つ凸多面体が「ゾーン多面体」と呼ばれており、こちらは図形全体に加えて構成面も点対称となっている。
その中でも単独での空間充填が可能なものは「平行多面体」と呼ばれるが、それによる空間充填形は、平行移動で全ての多面体が重なる。