恐怖王ハギス
きょうふおうはぎす
「恐怖におびえる極上の表情(カオ)を私に見せて…そして素直に死んでゆけ」
「そう オレは砂漠の盗賊ハギス…シュミは人殺しだ…!!」
神々のトライフォースのスピンオフ漫画『リルトの誓い』の悪役。
元々は砂漠の盗賊だったがガノンの親衛隊長ネイバットから勧誘を受け、ガノン復活のための先兵となる。
後に勇気のトライフォースを手にしたことで絶大な力を授かり、三幹部の一人“三邪王”と呼ばれるようになる。また森の民を襲って住処を奪ったことから恐怖の森の王を名乗るようになり、恐怖王とも呼ばれる。
「殺してゆく過程のなかでの恐怖にひきつったその人間の顔…
それはどんな美しい芸術にも劣ることはない至高の美だと私は思うのだが……」
冷酷で嗜虐的なナルシスト。シュミは殺人で、前述の台詞の通り相手が赤ん坊でも子供でも楽しんで殺害する。
それもただ殺すのではなく、恐怖に染まる表情の過程を楽しむという歪んだ美意識の持ち主。弓矢を使った狩りをたしなんでおり、動物と融合させた人間を射ち殺して楽しんでいる。
リルトと曰く「いじめられたことがないから傷付いた人たちの気持ちが分からない」。
ハイラルを支配することで人々を恐怖で塗り潰すのが目的。
ガノン復活のために動くが忠誠心などはまったくなく、ガノンを出し抜くことで自分がハイラルの支配者にならんとする。
キレると鬼のような表情になり口調もやや乱暴になる。また顔芸も多彩で、中にはベロを出すものもある。
登場するたびに口調が変化しているのでキャラ崩壊が激しい。
当初は砂漠の盗賊のため一人称が「オレ」で「~だぜ」というチンピラ口調。
恐怖王になってからは王を意識した振る舞いをするようになり、一人称が「私」で固定され、口調も貴族っぽくなった。
まったく美点の無いように思えるが、裏切りが露見して同僚二人に詰め寄られた時は戦いを避けようとしており、手に掛けた後もいい気分ではなかったようである。特に年齢の近かったフーイディンには積極的に絡んでいた。
「よくも この美しいカオにキズをつけてくれたな……
ただの殺し方じゃすまさんぞ!!」
盗賊という経歴とは裏腹に美形の青年である。
髪は背中に掛かるくらい長さで、色はモノクロのため不明。前髪は左右に分けておでこが出ているデザインだったが、2巻からオールバックになり前髪はひと房だけ前に垂らすようになった。
盗賊時代に着ていた衣装は気に入っているのか、王になった後も普段着として着用している。
「普通の人間は「万能の黄金トライフォース」によって偉大なる力を持ったこのハギスには
絶対に勝つことはできんのだ……」
劇中で何度かリルトと激突しているがいずれも優位に立っており、最後の戦いまでは一度も敗北していない。
長剣を武器としており、精神エネルギーを光線として放つ“閃光剣”という技を使う(ハギス版剣ビームである)。また勇気のトライフォースと接触後は、剣を突き出すだけで突風を起こしてリルトを吹っ飛ばしている。
弓術にも長けているが直接戦闘では剣か拳で戦うことが多い。弓は“獲物を狩る”楽しみを味わうためという度合いが強い。
終盤では伝説のアイテム“力のペンダント”によってマッチョの大男に変身し、凄まじい戦闘力を披露した。しかしそれでも上司のネイバットには及ばない。
どのような力かは不明だが、生物同士を融合させたり、両手を天に掲げることで落雷を落とすなど魔術師じみた能力を使える。
1巻
「…あんな所にガキが
オレたちの姿を見られたらまずいな……
殺しておくか!!」
禁断に谷に隠されたトライフォースを得るべくネイバットたち移動中にリルトと村の子供たちの姿を発見。いきなり襲い掛かって殺そうとしたがリルトから反撃を受け顔に傷を付けられる。激怒したところリルトたちが逃げ出してしまい、追い掛けようとしたがネイバットに止められ見逃した。
勇気のトライフォースを手にした後は、モンスター(世界中の悪人たちがトライフォースの影響で変異した存在)を率いて森の民たちの住処を奪い取る。そして森の民たちを動物と融合させ“狩り”を楽しみ始める。逃げ出そうとした者たちは、見せしめとして木と融合させる形で磔にした。
一方で配下ウルゲをヘザラ村に向かわせ、リルトの幼馴染カリンを手中に収めようとする。ウルゲはマスターソードの使い手になったリルトに敗れるが、鳥型モンスターにカリンを拉致させることに成功。そのままカリンは森の奥にある砦に幽閉した。
2巻
「フハハハハハ!!! ここで逢ったが100年目――――!!!
あのときはよくも私の顔に キズをつけてくれたなぁ――
忘れたとは言わさんぞ!!!」
狩りを楽しんでいたところ自分を討伐にやって来たゴンザと遭遇。圧倒的な力で蹂躙しトドメを刺そうとする。そこへ駆け付けたリルトを見て、禁断の谷で自分の顔に傷を付けた少年だと気づき復讐に出る。
マスターソードを手にしたリルトに配下の二人(ケロスとベロス)を瞬殺され動揺するが、実力はハギスの方が上であり、突風でリルトとゴンザを崖下に落として勝利する。
だがここで生死の確認を怠ったことが仇となる。
3巻
「ガノンをお前の能力で封印しハイラルの平和を…光の世界を…
私たちで守ろうではないか!!」
カリンが目覚めると接触し、ハイラルに伝わる“ゼルダの伝説”について語る。
勇者リンクの援護を受けた賢者ゼルダ姫によって封印された魔王ガノン。この戦いがゼルダの伝説である。
そう、カリンはゼルダ姫の子孫であった。ハギスはさも味方のような振る舞いで「ガノンはトライフォースを利用して復活しようとしている。このままでは世界の危機だ」と言ってカリンの協力を取り付けようとするが、自分を普通の女の子だと思っていたカリンはショックを隠し切れなかった。
ハギスは答えを急がず時間を置くことを決め、いい返事を期待していると言って立ち去った。
無論、ハイラルを救うなどとはとんでもない大ウソであり、カリンにガノンを封印させるのが目的だった。
その後、大幅にパワーアップを果たしたリルトに砦まで殴り込まれる。ハギスは得意の弓術でリルトを仕留めようとしたが、リルトの仲間カーラが庇ったため失敗。激怒したリルトと三度目の戦いを繰り広げる。
リルト「やっと会えたなこのやろ~~…人の命をオモチャのようにもてあそびやがって………!!!」
リルト「そこから下りてこい、ハギス!! 今度こそおめぇを、ぶっ倒してやる!!!」
リルト「一対一の勝負だ!!!!」
ハギス「また会えるなんて思わなかったよ。口の減らないボウヤ…ハギスの砦へようこそ…」
ハギス「まさか、あのボウヤが生き延びていて、あまつさえ、この砦に乗り込んでこようとはな…正直ちょっとびっくりしたよ」
ハギス「やはりトライフォースとそのマスターソードを持つ者とは、何か深い縁があるらしい…」
ハギス「でなければ、こう何度もこの恐怖王、ハギスの前に現れるのはどう考えてもおかしいとは思わんか?」
ハギス「そこでだ…せっかく出向いていただいたんだ…」
ハギス「その深い縁とやらを、今すぐ断ち切らせてくれんかね?」
ハギス「これ以上私の目の前をウロチョロするのは…もはや許さん!!!!」
激しい攻防を演じるリルトとハギス。力の腕輪と古代ハイリア人の盾によって攻守を成長させたリルトはハギスと互角以上に渡り合う。そして必殺技・回転斬りを打ち込みついにハギスを倒した……かに思われた。
ハギスは奥の手を隠していた。それは伝説のアイテム『力のペンダント』であった。これの力により筋骨隆々の超人となったハギスは、凄まじい力でリルトやゴンザを打ちのめす。
「ここまでしつこい奴も初めて見たよ ボウヤ……
けれど…これで…お・わ・り…」
最早殺されるのを待つしかできないリルトだが、そこへ脱走したカリンが登場。
賢者の力に目覚めていたカリンは、封印能力によってハギスの強化変身を解除する。だが力が続かずカリンは膝を突いてしまう。覚醒の刻が来たと歓喜したハギスはカリンを再び連れ去ってしまった。
4巻(最終巻)
「くっくっく…
大魔王ガノンに…賢者の末裔…これでジャマ者はすべて消えたわけだ………
ハイラルはもらった!!! ひゃ――っはっはっは――――っ!!!」
カリンを連れ去ったハギスだがリルトたちを痛め付けたことで本性が露見し「ガノンよりあなたを封印してやりたい!」と泣き叫ばれる。ハギスは、未成熟な身体で封印術を行使すれば反動で神経が焼き切れて死ぬと告げることでカリンを黙らせた。
そこへハギスの裏切りを察知した三邪王の二人――グラスゴーとフーイディンがやって来る。彼らは「カリンを渡せ」と詰め寄るがハギスは拒否。二人を返り討ちにする。
ガノン復活の刻が迫る中、ハギスはカリンを連れて封印の場へ出現。
ガノンが復活すると同時にカリンに封印術を行使させる。そこへ親衛隊長ネイバットがカリンを殺しに来る。
「これはこれはネイバット様…私は欲しいものはなんでも手に入れる砂漠の盗賊ですぞ…
今 私がいちばん欲しいもの それは……
この光の世界ハイラル!!!」
ネイバットの実力はハギスを上回っており、力のペンダントで変身してもやっと互角という有様だった。分が悪いと見たハギスは、能力を行使中のカリンにネイバットを接触させることで焼き払って勝利する。
こうして配下たちを失ったガノンは何も出来ないまま再封印された。
直後、駆け付けたリルトはカリンの最期を看取り、怒りと殺意をハギスへと向ける。ハイラルの命運を賭けた最後の戦いが始まった。
リルト「お前だけは、もう絶対に許さねぇ…これで最後だ!!!」
激怒したリルトの剣ビームによって防戦一方となるハギス。無数の光弾を前にバリアを展開し、リルトが思った以上の脅威になったことを認める。
「まったく…何度も何度も本当にしつこいなキサマら…!!
あのとき、とどめを刺してやらなかった私のやさしさがどうしてわかってもらえんのか不思議でしょうがないよ
…まぁ、得てして愚かな人間というのは何度言われても同じ過ちをくり返す…
その過ちをくり返し、人は真理を得ていくと誰かが言っていたが…真理(それ)がわからずして死んでゆく人間のなんと多いことか…
私の逆鱗にふれた者が最後にはどういうことになるのか…
死んで、あの世で悟るがよい!!! 3人まとめてな!!!!」
剣ビームは確かに強力だったが、それは使い手の精神力と生命力を消費して放つ技であり使い続ければ死に至る。その性質を見抜いたハギスは逃げに徹し、リルトが力尽きるのを待つことにした。目論み通り体力を消費したリルトは剣ビームが出せなくなる。
だがゴンザとカーラがハギスを押さえ付け隙を作ろうとする。
ゴンザ「い…今だリルト…!!」
カーラ「ウ…ウチらがおさえとるスキ…に…回転斬りをかますんや―――…!!!」
ハギス「こざかしいんだよこの虫ケラどもが~~~~~!!」
ハギス「力のペンダントをつけた私を、おさえ込むことなど…」
ハギス「できるわけないだろうが――――――――!!!」
超人となったハギスを押さえ付けるなど無理な話であり、ゴンザを足蹴にして気絶させ、カーラの細腕をへし折って歓喜の哄笑を響かせる。
激怒したリルトは最後の剣ビームを放ち、ハギスが持つ力のペンダントを破壊することに成功。これによりハギスは元の姿に戻り大幅にパワーダウンし、その間隙を突いたリルトによって右腕を切断される。
ブチキレたハギスはリルトを殴り飛ばし、両者は正真正銘最後の激突を繰り広げる。
ハギス「…キ…キサマよくも私の右腕を――――っ!!!」
ハギス「力のペンダントなぞなくても…殺せるんだよ、キサマなんぞは――――――!!!」
リルト「や…やれるもんなら…やってみやがれ!!!」
互いに互角の攻防を繰り広げるリルトとハギス。既にリルトの体力は限界を迎えており、いつ死んでもおかしくない状態だった。そんな彼を動かしているのは、体力でも精神力でもない。悪を断じて許さないという正義の心が、そして自らの使命に生き抜こうとする思いが、その不屈の魂がリルトを動かしているのだった。
「オイラはカリンに誓ったんだ!! オマエを倒すと!!!」
「回転斬り!!!」
決死の想いで食い下がり続けたリルトは、ついに回転斬りを撃ち込む。
だが双方ともバランスを崩してしまい崖下へと落下。かろうじて壁に掴まったハギスは落下していくリルトを見下ろしながら勝ち誇る。
「は――っはっは!! 落ちるのは お前だ!!
あばよ――――――っ!!!」
しかしリルトは諦めなかった。ハギスを道連れにするつもりでマスターソードを投擲し、そのドテッ腹をブチ抜いたのだ(ハギスは左腕で崖に掴まり、右腕を失っていたため防御できなかった)。
ハギスは死の恐怖と苦痛に顔を歪めながら落下し、血煙となって跡形もなく消滅したのだった。
「そ…そんな…ば…か…な…」
一方、落下したリルトはドラゴンに変身したリッキーによって拾い上げられ無事生還。
更にカリンもゼルダ姫が送り込んだ妖精の力によって復活を果たし、一行は再会を喜ぶのであった。
森の民もハギスが倒れたことで元に戻り、こうして世界は再び平和を取り戻したのだった。