解説
『ペルソナ4』の戦いの舞台となるマヨナカテレビの中に入った人間は、自分の中で(意識的・無意識問わずに)抑圧していた感情が、テレビの中の世界に触発されて影――もう一人の自分――として顕現する。
“影”はテレビの中に入った人間、いわば“本体”が日常において抑圧し目をそらしている感情を、容姿・態度・言動によって剥き出しの形でさらけ出し、容赦なく突きつける。
日常生活では気付かず、通り過ぎるだけであったもう一人の自分の姿を通常の人間は大抵受け入れることができないため、自身の本質でもある“影”を否定し、“影”は否定されたことで独立した「個」となる。(むしろ敢えて醜悪、過激とも言えるほどに露悪的な発言を繰り返し、抑圧された感情の内容自体には理解のある者ですら嫌悪感を感じるほどの態度を取るのは、そうやって否定される事で個として確立したいが為)
本体から乖離した“影”は自らを核として周囲のシャドウを飲み込んで暴走し、“本体”に襲いかかり死に至らしめる。
そして“本体”から否定されたことで、存在を獲得した“影”は本体の否定を肯定し凱歌の如く言い放つ。
「我は影…真なる我…」、"自分こそが本当の自分である"と…
しかし、自己をも呑みこむ剥き出しの“自分”を受け入れることで、人は新たな“己”を獲得し、真実への到達の端緒をつかむ。
「我は汝、汝は我」
尚、美津雄の影は「僕は…影…」までしか言わない。これは、美津雄自身が己が空虚な人間であることを心の奥底で自覚していること、抑圧するほどの強い欲求が無いことの暗示である。
また、アニメでの陽介の影は拒絶されて暴走する前に言っている。シャドウラビリスもストーリー次第では暴走前に言う。