概要
化学式NaOHの無機化合物。水酸化ナトリウムの原体および5%以上の製剤は劇物に該当する。
市販されている試薬はフレーク状か粒状の形状をしている。
性質
ナトリウムイオンと水酸化物イオンからなるイオン結晶を構成している。強い潮解性があり、空気中では徐々に吸湿して溶液状となる。
水に容易く溶け、水中で完全に電離し水酸化物イオンを出すため、強アルカリ性を示す。水溶液を濃縮すると水酸化ナトリウム一水和物が析出する。また、硫酸と同様に水に溶かす際に激しく発熱するので、水酸化ナトリウムの入った容器に誤って水を注いだりすると突沸して事故の原因となるので注意が必要。大変やばい薬品であることを忘れないでほしい。
融点 | 318[℃] |
---|---|
沸点 | 1388[℃] |
密度 | 2.13[g/㎤] |
溶解熱 | 44.5[kJ/mol] |
molとは6.02×10の23乗を表す個数。この個数集ったときの質量は分子量と等しくなる。
結晶・溶液ともに空気中の二酸化炭素を吸収して炭酸ナトリウムとなることと、結晶が強い潮解性をもつため保管時は密封されるが、容器にガラスを使うと徐々に侵されていき珪酸ナトリウムとなるためガラス容器は保管に使用しない。
水溶液は市販のアルミニウムホイルや自販機のアルミ缶とも反応し、水素を放出してアルミン酸ナトリウム水溶液となる。また、濃い水溶液はアルミニウムほどではないものの、亜鉛やガリウムとも徐々に反応する。
また、強アルカリは蛋白質を腐食する作用を持つ。そのため水酸化ナトリウムが皮膚につくと結晶の場合は潮解により、水溶液の場合は水分を失い強アルカリとなり皮膚を侵す。しかも水酸化ナトリウムは除去しないと皮膚の深部まで侵していくので付着した際はこすらずに大量の水で洗い続け、医師の診察を受けること。特に、目に入った場合は失明する危険性があるので注意を要する。
有名な反応
塩酸と反応して塩化ナトリウム(食塩の主成分)と水が生ずる。中学校の理科の実験で行うあれである。
HCl + NaOH → NaCl + H₂O
注意:この実験に際してビュレットとビーカーを使うことが多いが、水酸化ナトリウム水溶液は必ずビーカーのほうに入れ、塩酸をビュレットに入れること。逆をやると上項目の水酸化ナトリウムがガラスを徐々に侵す性質により不可逆的にビュレットの精度が劣化する可能性があり、また活栓の部分が侵されて固着してしまい使用不可能になることがある。
製法
- 水酸化カルシウム(消石灰)水溶液と炭酸ナトリウム水溶液の混合物を加熱する。
- 塩化ナトリウム水溶液の電気分解
工業的製法
- 塩化ナトリウム水溶液のイオン交換膜法(イオン交換と電気分解の併用。このとき塩素も併産されるが、一方のみを生産することは化学反応上不可能。)
用途
- 上下水道や工場排水の中和
- 酸化アルミニウムをボーキサイト(アルミニウムの鉱石)から取り出す
- 石鹸の材料
- 脱脂剤(めっきの前処理など)
- 業務用洗浄剤
- パルプの製造(硫化ナトリウムとともに使われる)
- かんすいの代用品(かつて使われていた時期があったが、現在はほとんど使われていない)
補足
かんすい
中華麺などの製造に使われるアルカリ塩水溶液で、天然のものは炭酸カルシウムが主成分。