初めに
本キャラクターは「公式メディアに登場した、初の元・艦娘と断言できる深海棲艦」であるが、この記事を閲覧する上で「劇場版は公式作品ではあるが公式設定ではない」という点を注意すること。
あくまで解釈の一つであり、本キャラクターは深海如月ともども「劇場版及びアニメオリジナルの深海棲艦」として捉えていただけると幸いである。
ことの発端は…
駆逐艦娘・吹雪は、ゲーム『艦隊これくしょん -艦これ-』においてプレイヤーたる提督が最初に選んで秘書艦とする初期艦5人のうちの1人である。
サービス開始前から彼女を主人公とするような構図ができていたこともあり、公式4コマ『吹雪、がんばります!』をはじめとする多数の公式メディアで主人公として据えられることが多い。
アニメ版もその例外ではなく、「吹雪が新しく着任した鎮守府で起こる様々な出来事を、時にはコミカルに、時にはシリアスに描く」という内容のもと、放映開始されたのだが…
いざ蓋を開けてみると、
- 実戦経験0で着任しているにもかかわらず、抜群の戦闘センスで旗艦として活躍する
- 以前の鎮守府での出来事について明確に覚えている描写がない
- なぜ突然転属してきたのか、着任理由が不明瞭
- 後にかなりぶっ飛んだ着任理由が明かされるが、それについて何も疑問を抱かずに提督を盲信している
など、主人公であるにもかかわらず説明不足な設定がかなり多いという不自然な点が目立っていた。
実際そういう設定の主人公はアニメにおける吹雪に限った話ではないのだが吹雪の場合、回収していない伏線やストーリー上の矛盾点等がそれを目立たせている。
そしてそんな吹雪の様子を見た視聴者の中に、こんな説を唱える者が出始めた。
――「コイツ、着任前に轟沈してて、鎮守府を内側から潰すためにわざと配属されてきた深海棲艦化した艦娘じゃないのか」と。
しかし、当然ながら実際には吹雪は深海棲艦ではなく、ごく普通の艦娘であった(少なくともこの時点では…)。それでもアニメ1期最終話で駆逐艦一人で不利な戦況をひっくり返し、物語を終結へと導くという、「主人公だから」などといったメタい理由以外で片付けるには不自然すぎる描写を残し、アニメ1期は終結した。
そしてそんな違和感を残しつつ、
約1年半の時が経過し、劇場版へ…
劇場版で明かされた真実
※ここから先は劇場版の重大なネタバレとなっております。
劇場版ではアイアンボトム・サウンドが血のように赤く変色しつつあった。この変色はポイントレコリス沖と呼ばれる一点を中心として広がり、この状態の海では深海棲艦を除く生物は全て死滅し、艦娘であっても徐々に艤装が損傷していき、最悪艤装が使えなくなる恐れもある。時間の経過に応じて海域はかなりの速度で拡大していき、残り約3日で今回の拠点であるショートランド泊地にまで広がることが予測されており、一刻も早くこの海域の拡大を阻止することが作戦目標となっていた。
そしてこの海域の中心からは「カエリタイ・・・カエシテ・・・」という謎の声が観測されており、多くの艦がこの声を聞いていた。
吹雪や睦月も冒頭で泊地に着く前この声を聴くことになるのだが、その際吹雪は、
「うううん…大丈夫…」
と、なだめるように声をかけていた。
しかし、当の吹雪本人は全くこのことに覚えがないらしく、後日赤城に尋ねられた際は戸惑っていた。また、夕張によると吹雪の艤装には変色海域での損傷がなく、上記の声が観測されたのも吹雪が泊地に到着した日付と同一であることから、長門達から何かしらの因果関係があるのではと考えられ始め…
※以下、詳細などのネタバレ注意
劇場版では「艦娘は撃沈されると深海棲艦となり、深海棲艦が撃沈されると艦娘になる場合がある」(作中では「D事案」、おそらくドロップの頭文字から、そう呼ばれている)ことが明かされた。つまりは敵と味方をループしてるのである。そのため、艦娘たちは「誰1人沈むことなく深海棲艦を殲滅・撃沈して、この悲しく辛いループから彼女ら(深海棲艦化した艦娘たち)を解放する」という目標を達成する必要がある。
この説明を吹雪たちにした加賀自身も、一度轟沈し深海棲艦になったが、再び撃沈されて艦娘に戻った過去があったと判明(深海棲艦が撃沈されて艦娘になるときは稀にだがその記憶を引き継ぐ場合があり、加賀は記憶を引き継いでいた)。時を同じくして、吹雪は「今の鎮守府に着任する前の記憶はあるか」と聞かれ沈黙してしまったことから、過去に轟沈し深海棲艦化していた頃の記憶を失っていたことが示唆されている。
なお、作中で瑞鶴もかつて同様に轟沈したと思われる描写が存在し、終盤では長いツインテールのシルエットが轟沈する回想シーンが一瞬映し出された。
物語の終盤、アイアンボトム・サウンドに突入するが、変色海域の中心では大きな穴が開いており、そこから黒い光の柱が空まで続いていた。
大和や睦月、そして深海棲艦化しながらも意識を保っていた如月(その発言からどうやら深海棲艦化したことで声の主が吹雪を呼んでいることに気づいていた様子)の力を借り、吹雪はそこにたどり着く。
「カエリタイ……カエリタイ……
カエシテ……カエシテ……
……オイデ…」
そして、その内部には…
※以下、吹雪に関してのネタバレ注意
「ナンドモクリカエサレルタタカイ…
トキヲコエ…ウミヲコエ…オモイヲコエ…
ナンドモクリカエサレ…ソノタビニツノッテイクムネン…」
結論から見るとだいたいあってた…
…ように見えてその斜め上を行くものであった(分かりやすく言うと半分正解で半分間違い)。
かつて吹雪はアイアンボトム・サウンドで轟沈してしまったが、そこで自身の強い思いと積もっていた無念や思いが吹雪を助けた為、海の上に戻ることができた。このことが原因で吹雪は特別な存在(繰り返される戦いの中で定めの軛から自由)となり、他の艦娘の運命をも変える力を手に入れた(アニメ最終話で赤城達一航戦が史実からそれることができた要因が恐らくこれ)。
「ソレガワタシヲシズメタ…
コウシテ…ワタシトアナタハウマレタノ…」
しかし、その時に二つに分離してしまい、海の上に戻れたのは片方だけで悲しい記憶を背負ったもう片方は底に沈むこととなった。水底に沈んだ彼女に残されたものは水上にある物への憎しみや妬みのみ、そして自身たちは定めの軛に従い消えていく存在であるという考えにとらわれ、吹雪の持つ運命を変える力を許すことができず、長い年月をかけ今の姿となった。
※以下、結末
「キエテシマエオマエモ!ソノタメニオマエハカエッテキタノダロウ!!
ナンドデモナンドデモココヘモドッテキテシズメ!ヒカリナドナイ!ノゾミナドナイ!
コノミナゾコデ!ソウシテ、ダレカラモワスレサラレテ、キエテイケ………!!」
始めは吹雪に精神的な揺さぶりをかけた上で束縛、深海棲艦化させて自らの一部にしようとするが、吹雪が「自身は皆が作りだした希望」であることに気がつき束縛を解くと、近づいてくる吹雪に怯えてしまう。
その際に吹雪の足が折れたことでそれにシンクロするように自身の足も折れ、動けなくなる。
吹雪に抱かれ、海の上に共に戻ること、自身のことも決して忘れないこと、無念の分だけ希望があることを教えられ、光となって消えた。
その直後アイアンボトム・サウンド全体はまばゆい光に包まれ、変色海域は海域の深海棲艦(如月含む)が消滅するとともに収まり、一連の出来事は終わりを告げた。
まるで彼女が、或いはアイアンボトム・サウンドそのものが見ていた悪い夢から解放されるように…。
容姿
外見は全身が真っ白で中間棲姫等に似たドレスをまとっている。眼は姫クラス特有の深紅、頭からは角を2本生やし、首には千切れた鎖がつけられ、左腕は魚のヒレの様なものがついたおぞましいものに変形している。この左腕は触手(或いはアイアンボトム・サウンド内の負の力)を操る力を持っており、この力で吹雪を捕らえた。
また、第1形態・第2形態・第3形態とも言えるものがある。
第1形態は第六駆逐隊のメンバーとほとんど変わらない身長で、第2形態は吹雪と同一の身長、第3形態は赤城や加賀とほとんど変わらない身長と胸部装甲である。これに合わせて声の質もそれぞれ合わせられている。更に第3形態はたこ焼き艦載機(浮遊要塞ととらえることも)が二体出てくる。この艦載機は吹雪を徐々に深海棲艦化させつつ取り込む力を持っていた。
またこれまでブラウザ版で登場した姫・鬼クラスの台詞の一部を呟いており、彼女が海の底で様々な負の思いを吸収しているのがわかる。
因みにアニメでの飛行場姫や劇場版での戦艦棲姫の眼が血が止まったように生気を感じさせない色なのに対し、彼女のは若干明るめな色(例えると本気になった夕立の眼と同じ色)となっている。実はこれは回想シーンで深海棲艦化していた加賀や(若干異なるが)深海如月も同様である。
関連タグ
艦隊これくしょん 艦隊これくしょん(アニメ) 艦隊これくしょん(劇場版)
リコリス棲姫 海峡夜棲姫:彼岸花つながり(海峡夜棲姫は青色)。
護衛棲姫 護衛独還姫:しばふ深海棲艦つながり。護衛棲姫は時期とシルエットの類似の関係で当時は彼女と間違われたことも。
深海千島棲姫:特型モチーフの深海棲艦つながり。
深海鶴棲姫:ブラウザ版艦これ一期における事実上のラスボス。ブラウザ版なので断言されていないが恐らく瑞鶴の片割れ。上記にもある通り劇場版でもその存在が示唆されている。因みに会話の内容から劇場版では既に撃破されていた模様。
※以下、最後のネタバレ
その後、吹雪は忘れていた自身の所属していた艦隊名を思い出す等の変化が表れている(それに合わせて編成されたメンバーは特型の長女達となっている)。
また、出撃の際に自身の胸に語り掛けていることからやはり彼女も今の吹雪の中にいるのだろう。
物語のラストの如月がそうであったように彼女も共に水上で戦うために…。
「大丈夫だよ、私必ず取り戻すから…静かな海を…
イツカ…カナラズ…」