胸に黒い蘭をつけたアトラー星人が現れ、
人々を恐怖の底に突き落とした。
ダンとゲンは、マッキー2号を分離させて、
巨大化したアトラー星人の胸から発する光を避けながら攻撃を開始した!
急げレオ!さぁ、みんなで見よう!!
放送日
1974年7月26日
登場怪獣
黒い花の星人アトラー星人
STORY
ナレーション「君達は、幽霊の話を聞いたことがあるね?それは幽霊好きな大人達が作った怪談の場合もあるだろうし、ひょっとすると、恐ろしい事件の最初の1ページの場合もある。血も凍るような、恐ろしい事件の…」
満月、犬の遠吠え、風に揺れる柳と、いかにもな雰囲気の夜の温室をトオルと正男少年が訪れていた。色とりどりの花が飾られた温室には何やら不気味な音が響き渡り、トオルはすぐさま録音機を起動。音のする蘭の花の方へ歩いていく。蘭の花には天井から水滴が滴り、一層ムードを引き立てる。怖気付いた正男は帰ろうと言い出すが、トオルは進むことを選び、2人は徐々に花に近寄っていく。外にはカオルが待機しており、温室から聞こえる音から本当に幽霊がいたんだと確信する。
そして2人が蘭の花のすぐ前まで来た時、後ろに飾られていた観葉植物が落下した。慌てて2人は逃げようとするが、トオルは服が枝に引っかかってパニックを起こしながら温室から脱出。そんなトオルが外に出た途端に立ちはだかった人物は…待っていたカオルだった。いきなり飛び出してきたものだから、トオルは腰を抜かして正男とカオルに助けられる始末であった…
(場面転換)
MAC本部では話題はこのトオルの体験談で持ちきりであり、皆が大笑いしていた。
白川「笑っちゃ可哀想よwww」
桃井「そうよ、幽霊に服を引っ張られたんだもの、誰だって腰を抜かすわ!www」
平山「今時、幽霊なんか!ハッハッハ…!」
だが、ゲンだけはトオルのことを思ってか、神妙な面持ちで席を立つのだった。
(場面転換)
マックカーでパトロール中のゲン。しかし川を隔てて、下校中のトオルが声をかけた。浮かない様子のトオルを見て、「先生に叱られたんだろ?」と話すが、トオルは「大人は嫌いだ、自分達で言いふらした癖に僕の話を聞いて笑うんだ」と言う。「昨夜の話か?」と聞くゲンだったが、トオルは答えずに走り去ってしまった…
(場面転換)
その夜、正男や隣人の青年を連れて再度あの温室へとやってきたトオル。だが青年は「テープの幽霊の声は何か悲しいことがあった女が温室で泣いてたんだろう」と言って信じていない様子だった。そのうち、正男は怖気付き、トオルも「幽霊にまた服を引っ張られたくない」という理由で帰ってしまうが、ここまできて引き返せないと思ったか、青年はそのまま温室に入ってしまった。温室の中にはやはりあの不気味の音が響いている。青年が「誰かいるのか!?」と大声を出したその時だった…
真っ白な服を纏った、妖しい美女が現れた。
女はゆっくりと腕を上げ、青年に向かって笑みを浮かべる。その首元には、真っ黒な蘭の花が垂れていた。
慌てて逃げ出す青年を謎の光が襲う。出口から出たところで青年は力尽き、その場に倒れ込んだ。
程なくして警察が到着し、その場に戻ってきていたトオルらに事情聴取を行なっていた。ゲンもMAC隊員としてその場に駆けつけ、トオルに話を聞く。
警官「ご苦労様です」
ゲン「どうも」
トオル「おおとりさん!」
ゲン「トオルどうした!?」
トオル「隣の兄さんが、僕たちの、僕たちの話を聞いて、それで…」
口をつぐむトオル。ゲンは青年の死体を見て言葉を失う。その死体は蝋人形の様に真っ白な姿に変わっていた…
時を同じくして、橋の下を車で走っていた女性の前に黒い花の女が現れた。車を緊急停止させた運転手に近寄る黒い花の女。運転手の絶叫が響く。
そして警察やゲンが到着した頃には、既に女性はこと切れていた。それも身体を蝋人形の様に真っ白に変えて…
(場面転換)
ダンの口から敵の正体が語られる。それは今までの相手とは比べ物にならない強敵だった。
ダン「とうとう地球に入り込んだな」
ゲン「隊長…」
ダン「ゲン、気をつけろ。恐ろしい奴が地球に来た…アトラー星人だ」
ゲン「アトラー星人?」
ダンは頷くと、アトラー星の写真を映し出す。
ナレーション「恐怖の星・アトラー…死の星・アトラー…」
ダンは資料のスイッチを切ると、アトラー星人の恐ろしき秘密をゲンに伝える。
ダン「アトラー星人のために全滅した惑星を俺は見た」
ゲン「隊長…」
ダン「その惑星の生物は全て…蝋細工の様になって死んでいた。それだけじゃない…奴らは前に一度、地球に近づいた事がある。地球防衛隊の隊員達が、奴らを追跡したが…」
ゲン「追跡した隊員達は…?隊長!」
ダン「全員蝋人形のような死体になって、地球に帰ってきた」
ゲン「…隊長、必ずアトラー星人をやっつけてみせます!必ず…」
ダン「大変な敵だぞゲン」
ゲン「はい…!」
ダン「今までの技では、アトラー星人を倒す事はできん。それ所か、レオが…」
ゲン「…隊長、言ってください!隊長!」
ダン「レオが蝋人形の様になって死ぬ様な事があるかも知れん」
ゲンは愕然とし、宇宙ステーションから地球を見つめる。
ゲン(今の俺の技では、アトラー星人は倒れない…それどころか、蝋人形の様になってレオが死ぬ…レオが…)
ダン(頼むぞ、決してお前1人死なせない…決して…!)
そこに、トオルから借りてきたテープを持って青島が帰還。ダンによってあの気味の悪い音は、アトラー星人の呼吸音であると断定される。空気のないアトラー星から地球に来ると、この様な音が鳴るのだという…
(場面転換)
その不気味な呼吸音は、どこかの夜道に響いていた。そしてそこにはあの黒い花の女…アトラー星人の影が。その影が向かう先には、とあるマンションがあった。MACのレーダーが星人の反応を捉え、場所はBX-102地区と判明。ダンはすぐ出動準備にかかる。
その頃、アトラー星人が向かったマンションには、なんと百子が眠っていた。彼女は旅行中の友達の留守を頼まれ、泊まっていたのだ。しかし、トオルのテープで聞かされたのと同じ音がしたことから、すぐさま目を覚ました百子はゲンの家へ電話をかける。すると、段々音は部屋に近づき、百子が照明を消した次の瞬間、隣の部屋から…
キャアアアアア助けてえええええ!!!!!!
何か大変な事が起こっていることを察した百子はゲンに助けを仰ぐ。ゲンはそれがアトラー星人であることを教え、どこでもいいから影になる様な場所に隠れる様伝え、マンションに急行する。
電話を切った百子は、すぐさま壁の影に隠れる。すると窓の外からアトラー星人が覗きにやってきたが、百子の隠れた場所は二つの窓のどちらからも死角になっており、星人は気付かず去っていった。そしてガラスが割れる音がすると…
キャアアアアア!!!
うわああぁぁぁあああ!!!!
ママ怖いよー!!!!!
わあぁぁぁああぁぁぁ!!!!!
キャーーーーーッ!!!!!!
耳をつんざく様なけたたましい悲鳴に恐怖する百子。隣の人だけでなく沢山の人々が殺されたことを察知し、恐れ慄く…
直後、マッキー3号とマックロディーが到着。ゲンは周囲に誰もいないことを確認し、マンションへ突入。
百子も荷物を纏めて部屋を出ようとするが、ドアを開けた瞬間目の前にいたのは…ゲンだった。ゲンは百子に出てはいけないと言い、3号に乗ったダンに報告する。百子は無事だったが、他の住民は全滅していた。
その時、マンションの中から悠々と出てきたアトラー星人は、空を旋回するマッキー3号を嘲笑うと、提げていた黒い蘭を光らせ…
ダン「アトラー星人が巨大化したぞ!!」
正体を現し、マンションを打ち砕いたアトラー星人は、月夜の中唸り散らすのだった。
( Aパート終了)
やがて夜は明けた。住宅街を荒らし回るアトラー星人のもとへ、マッキー3号に乗り込んだダンの指揮の下、ダッソー・ミラージュⅢの連隊が飛来し一斉攻撃を開始。
だが、アトラー星人は強かった。胸から発する蝋化光線で戦闘機を狙い撃ち、MACの部隊はあれよあれよと墜落・爆発を繰り返してゆく。
そしてマッキー3号までも撃墜されてしまい、ダンはパラシュートで脱出。着陸し急いでパラシュートを畳むダンのもとに、マックロディーに乗ったゲンが駆けつけた。ダンはアトラー星人の脅威からレオへの変身を制止するが、街の人々が大勢殺された怒りから居ても立っても居られなくなったゲンは忠告を振り切り、レオへと変身。レオとアトラー星人の対決が始まった。
鉄橋を飛び越え、アトラー星人へ勇ましく向かうレオ。ダンはレオを援護すべく、スティックガンを投げ捨て、腕をクロスさせ、目を赤く光らせる。
ナレーション「セブンに変身できなくなったモロボシ・ダンの命を懸けた最後の武器・ウルトラ念力が、アトラー星人の恐怖の光を封じた。レオ、今だ!」
周囲一帯が真っ赤な光に包まれ、アトラー星人は光線を撃てなくなったばかりか、ろくに動くこともままならなくなった。最大の好機にレオはアトラー星人を投げ飛ばし、マウントをとって膝打ちを繰り出す。負けじと蝋化光線を使おうとするアトラー星人だが、エネルギーが自身に逆流し怯み、近くのビルに倒れてしまう。レオは星人にマウントパンチを何発も何発も打ち込むが…
ダン「駄目だ…レオ…レオ…!」
ここでダンの体力が尽き、念力が解除されてしまう。あと一歩で星人を倒せるところだったが、アトラー星人は力を取り戻し、蝋化光線でレオを狙う。レオも光線を躱して星人との接近戦に挑むが、星人は怪力も持ち合わせており、足払いからのストンピングの連打に苦しむ。そこから星人はサッカーでもするかのようにレオを蹴り飛ばし、投げ飛ばし、倒れたレオの顔面を地面に叩きつける。そのまま地面にレオの顔をめり込ませ、続け様にジャンプ攻撃でレオを踏みつける。体を逸らして攻撃を避けるレオだったが、逃しはしないとばかりにアトラー星人の蝋化光線がレオの両足に命中。するとレオの足は蝋人形の様に白くなり、その場から動けなくなってしまう。
そして星人は無慈悲にも勢いよく突進を繰り出し、レオを跳ね飛ばしてしまう。地に這いつくばって悶えるレオを見て勝ち誇ったアトラー星人は、悠々と街を破壊しに向かう。レオには最早再び立つだけの余力はなく、立つための足も蝋化してしまい、その場に力無く倒れるのだった。
ダン「ゲン…!しっかりしろ、ゲン、しっかりしろ…!ゲン!しっかりするんだ…!ゲン!」
気がつくと、レオはダンに助け起こされ、ゲンの姿で倒れていた。目が覚めたゲンはアトラー星人と街はどうなったのか尋ねるが、ダンは重い顔で黙り込む。街の人は皆殺されたのだと察し、ゲンは立とうとするがダメージはまだ大きく、ダンの介錯あってやっと立てる程。ダンはすぐマックシーバーで本部の白川隊員へ連絡を取り、状況を聞く。星人は東京BX-218地区で姿を消し、付近の住民は全員避難したとのこと。すると、焼け跡を呆然と見つめるゲンの視界に、トオルと正男の姿が。ゲンは何故逃げないのか問うと、正男の家の人達は皆星人に殺されてしまったため、2人は打倒星人を誓って残っていたのだった。
(場面転換)
本部へ帰還したゲンは、拳を握りしめ悔しがる。
ゲン「畜生…!俺は敗れたんだ!」
ダン「ゲン、戦いはまだ終わっていない」
ゲン「しかし隊長…!」
ダン「馬鹿!」
ゲン「しかし僕にはアトラー星人を倒す、力も技もない…僕には倒せない…!」
ダン「俺達がやらなければ誰がやるんだ…誰が?誰がやるんだ!!」
ゲン「隊長…!」
ダン「ゲン!」
ゲン「…はいっ!」
ダンの杖を肩にかけての叱咤に、ゲンは決意を固め直す。そして2人はマッキー2号に乗り込み、憎きアトラー星人を目標に飛んでいった。
アトラー星人は依然として猛威を振るい、街を焼け跡と化し、蝋化光線で次々と人を蝋人形化して殺戮していた。
工場を踏み潰し、ビルにタックルを食らわす星人の前へ、ダンとゲンの乗ったマッキー2号が立ちはだかる。
ダンの号令でマッキー2号は攻撃を開始。遂にアトラー星人との最後の戦いが幕を開けた。ミサイル攻撃に星人は得意の蝋化光線て対抗するが、マッキー2号はこれを回避。弱点である胸の花を狙ってロケット弾を発射し、次第に星人を追い詰めてゆく。だが星人も負けてはおらず、蝋化光線の発する強烈な光でゲンとダンの目をくらませる。
そして、ここで2人は切り札を抜いた。マッキー2号の最大の武器である分離機能により、機体をα号とβ号の2機に分け、二手に分かれて攻撃。
更にゲンは高速回転しながらα号で星人目掛けて突っ込み、星人も動揺。ゲンの決死の覚悟を見たダンが見守る中、α号は星人の胸元に突っ込み、大破した。そして爆発の中から…
ゲン「レオーッ!!」
レオへと再変身したゲン。アトラー星人はもうマッキー2号の猛攻を受けて疲労困憊であり、レオはダメ押しのエネルギー光球を胸に投げ込む。
アトラー星人はその場に倒れ伏して爆発炎上、そこには大きな黒い蘭が残るのだった。
辺りに夕焼けが輝く頃、ゲンはダンのいる河原の道へ帰還。ダンもそれを笑顔で迎える。レオとダンとMAC全ての力なくして、決して掴み取れない勝利であった。
ナレーション「恐怖のアトラー星人は倒れた。しかしレオ、宇宙にはまだまだ恐ろしい敵がいる…がんばれ、ウルトラマンレオ!」
余談
そもそもサブタイが不穏、いやがおうにも脳裏に残るアトラー星人の呼吸音、蝋化して死ぬ人々、美しくも不気味なアトラー星人の人間態、マンションの住人の絶叫、一度は完敗を喫するレオ、そして滅茶苦茶に破壊される街と、第3話や第40話などに並ぶトラウマ回。
百子の友人のマンションのロケ地は「ウルトラマンA」にて梅津姉弟の住んでいたマンションと同じ。
翌話以降「見よ!ウルトラ怪奇シリーズ」が幕を開けるが、内容的に適任であろう本話がなぜ含まれていないのかは不明。ぶっちゃけ怪奇シリーズのどの話よりも本話の方が怖いのは内緒である。
序盤の笑い話のシーン以降赤石と桃井は姿を見せない。青島もレーダーを確認する場面以降は出てこなくなり、次回からは二度と再登場せずに説明なく隊員が交代してしまう。ところで、青島の最後の出番のシーンの後、戦闘機群が全滅していたが、まさか…
ダンが話していた「地球警備隊」なる組織はウルトラ警備隊のことだと思われる。
地味に「今までの技では勝てない」と言いながら前回フリップ星人を破ったばかりのエネルギー光球が決まり手になっている。