概要
初登場は『ヤミ金くん編』で、同編の実質的な主役で作中屈指の聖人にして狂人。
友人を愛称で呼ぶ癖があり、丑嶋のことをファーストネームの「カオルちゃん」と呼ぶ。
裕福な家庭の生まれでありながら自分の財力を鼻にかけない好青年で、丑嶋にも戌亥と同格の親友として気に入られていたが、紆余曲折あって転落人生を歩むことになる。
漫画最終章の『ウシジマくん編』ではホームレスに落ちる前の竹本の姿が描かれた。
人物
聖人的な思想の持ち主で、他人に喜んでもらうことを幸福としている。
また暴力や支配、強欲を嫌い、外見や立場によって忖度しない優しさを持つ。
子供の頃から頭が良く、中学ではクラスいちの秀才として認知されていた。当時クラスの番長格だった柄崎と加納から丑嶋のリンチに参加するよう言われても拒否するなど、周囲に流されない芯の強さも持っていた。その人の良さは丑嶋も認めるほど。
一方で小学校のウサギに自腹で買ったエサをあげるなど、当時から過剰とも言える善行に励んでおり、柄崎には変に思われていた。
社会人となりアパレルブランドを立ち上げてからも、仕事を斡旋しているグラドル達のタクシー代を負担したり、道端のホームレスに数万円を差し出す等、文字通りの親切や善行で周囲の人々を助けていた。グラドルからのグレーな頼み事を断ったり、相方の吉澤が無意識にポイ捨てしたタバコの吸い殻を拾うなどモラルにも厚い。
ヤクザとの繋がりを理由に業界から追放された時も、自分より一緒に追放された吉澤の身を案じ、ヤクザと縁を切ることを条件に退職金を全て譲る等して彼が立ち直れるよう助けた。この行為が原因でホームレスに転落してしまったが、それでも持ち前の優しさとモラルは失わず、地道に日雇い労働を続けた。
(状況が状況だけに、他人のテントに勝手に入って寒さを凌ぐなどセコいことはしていたが)
誠愛の家に入れられてからは鰐戸三兄弟の悪事に手を貸すことになってしまうが、それでも心までは腐らず、同室メンバーである甲本の友人となってあげたり、片足を切断され痛みに苦しむ黒田を献身的に看病したり、横暴な榊原を改心させようと説教したりしていた。
ついには借金返済できなくなった別室のホームレス達を助けるため彼らの保証人になったり、上述の黒田の治療費を稼ぐため彼のぶんまで借金したりと、自己犠牲じみたことまでやっていた。
こうした行き過ぎともいえる親切・善行は一周まわって変人・奇人扱いされるほどで、柄崎には自業自得のように言われ、吉澤や丑嶋からも考えを改めるよう諭されたが、ブレることなく最後まで自身の信条を貫き、結果として破滅することとなった。
何故このような人格になってしまったのかは定かではないが、丑嶋に「(母親が好きなのは)お前もそーだろ?」と言われて表情を曇らせたり、ファッション業界で父親の言いなり同然として働いていたことが後に明らかになったりと、家庭環境に問題があったかのような描写がある。
ほか「人を好きになるのが分からない」「好きなことがある人間がうらやましい」「人に喜んでもらうと幸せを感じる」(要約)など、闇を感じさせるセリフもある。
経歴
丑島と同じ小学校だったが、当時は互いに名前を知っている程度であまり接点がなかった。
別の地域に引っ越していた丑島が戻ってきた中学2年の時、丑島への集団リンチの参加を断ったことで当の本人に気に入られ友情を結ぶ。後に親友と言えるほどの間柄となり、鰐戸三蔵襲撃が決まった際には少年院行きを覚悟した丑嶋からペットであるウサギの世話を頼まれ、快諾する。
進学~卒業後は丑嶋達とは別の道を選び、父親から渡された1千万円を元手にファッション業界で起業する。商売上手の先輩吉澤と手を組み、業界いちのサクセスと謳われるほどの大成功を収める。
しかし、その実態は原価300円のTシャツにブランドロゴをプリントして1万円で売るという詐欺じみたやり口で、ほか吉澤の女遊び、ヤクザとの繋がりという背景もあったため、上場にあたって邪魔になるとして、会社の経理で実権を握っていた父親により吉澤と共に追放される。
その後はホームレスに転落し、日雇い労働で食い扶持を繋ぐ。路上で寒さに耐えていたところ、通りすがった鰐戸二郎から声掛けされ、彼ら鰐戸三兄弟の運営する「誠愛の家」へと招かれる。
だがその実態はホームレス達を利用した犯罪グループで、鰐戸三蔵による恐怖支配が行われており、逆らったり脱走したりすれば苛烈な制裁を受けるという恐ろしい場所だった。入居料として10万円の借金もさせられており、迂闊に逃げ出せなくなる。
竹本は返済のため丑嶋が経営するカウカウファイナンスを訪れる。丑嶋と再会を喜び合うが、金貸しの件は「ウチは十日五割で高いから他所を当たれ」と断られる。しかし同室メンバー甲本の借金返済や、制裁で片足を切られた黒田の治療費のため再度訪れ、甲本が保証人になっていたこともあってか、丑嶋から5万ずつ(色々引かれ実質2万だったが)借りる。
稼いで甲本と共に完済するが、今度は黒田の治療費がもっとかかるとして更に10万貸して欲しいとせがむ。ほか借金を抱えた大勢のホームレスを助けるために彼らの保証人になるとまで言い出す。流石の丑嶋も困惑し竹本の行動を咎めるが、その意思は固く、丑嶋は呆れながらも金を貸す。
黒田のため鰐戸三兄弟の言いなりになって働く竹本だったが、三兄弟のやり口はエスカレートしていき、ついにはカウカウファイナンスが強盗のターゲットにされる。毎日のように続く犯罪行為に甲本、榊原、黒田の様子もおかしくなっていく。状況を看過できなくなった竹本は皆を救うため、三兄弟が丑嶋から奪った金を横取りする計画を立てる。
一部の金を自分しか知らない場所に隠しており、それをホームレス達に渡して逃げてもらい、後始末は保証人である自分がやるという狂った計画だった。
残念ながら計画は失敗し、竹本は三兄弟に共犯である甲本共々捕まってしまうが、裏で動いていた丑嶋によって救出され事なきを得る。奪った金の件や共犯であるホームレス達についても素直に出頭して隠し場所を吐けば、借金をチャラにしつつ生活できるよう高時給の(危険な)仕事を全員に紹介すると通達される。
だがホームレス達は丑嶋の報復を恐れ、甲本を除き全員逃げてしまう。残った甲本も危険な目に合わせたくないという竹本の願いで金の隠し場所を教わり、金を持って逃げていく。
結果、丑嶋は奪われた金を回収し損ねてしまい、竹本は制裁として時給5万円の清掃員へと転向させられる。その後の顛末は不明。
滅多に債務者に同情しない丑嶋でも、親友を自らの手で制裁することは相当堪えたようで、竹本を改心させようと何度も口論したり、制裁が確定した時も「お前を地獄に送りたくなかった」と悔やんだり、事後も竹本がもう二度と戻ってこないことに涙したりしていた。
関係者
ウシジマくん編
- 吉澤
竹本の地元の先輩で、竹本が立ち上げた会社・サンバービィの専務を務めていた。先見の明があり、口上手なキャバ嬢を店員に起用するなど商売上手だが、女癖が酷く、それが祟って獅子谷にスキャンダルを掴まれ1億円を恐喝される。猪背組の熊倉に助けてもらうことで難を逃れたが、ヤクザと関係を持ってしまったがために経理である竹本の父親によって、竹本と共に会社を追放される。
その後の顛末は不明だが、その身を案じた竹本から退職金を譲られており、間接的にだが竹本が破滅する要因を作ってしまった。
ヤミ金くん編
- 甲本
同室メンバーの青年で、ある意味『ヤミ金くん編』のもうひとりの主役。中学の時、クラスの女子にストーカー扱いされたことを機に不登校になり、社会復帰しようとするも頭が悪すぎてFラン大にしか行けず、落ちに落ちて誠愛の家へとやってきた。
その境遇から人格が歪んでおり、何かと卑屈で、竹本の親切を偽善・欺瞞と罵るなど人間不信気味。通りすがりの女子高生に発情したり、三兄弟の命でりんご泥棒することになった際に(持ち家の)老人は若者から搾取してきたから当然の報いという謎理論で犯罪を正当化する等、思考も危険かつクズ寄り。一応、当人も自分がクズという自覚はあり、持ち家の老人と取っ組み合いになって勢いで殺してしまった時には本気で苦悩するなど良心もわずかに残っているが、芯が弱いので更生できずにいる。
竹本の頼みで金の横取り計画に加わるが、肝心の竹本が丑嶋に捕まってしまい失敗に終わる。しかし他のホームレス達が報復を恐れて逃げるなか、ただひとり丑嶋の仕事を紹介するという弁を信じ、更生することを誓う。竹本が金の隠し場所を教えてしまったために結局は逃げることになり、その金も滑皮の刺客に奪われてしまったので一時は自暴自棄になるが、竹本との友情から自分の罪を認め、最後はバイトしながら気楽に暮らせばいいとやり直しを決意する。
宇津井優一と同じく本気で更生した数少ない人間だが、殺人という一線を超えており、また竹本を身代わりにしているため、彼と違って読者からの評判は悪い。
- 榊原
竹本が配属された部屋の室長。鰐戸三兄弟にはヘリ下り、格下の黒田や甲本には横暴に振舞うという性格の悪い中年オヤジ。しかし時おり面倒見の良さを発揮することもある。竹本の提案で金の横取り計画に加わることを決め、ある局面では三兄弟相手に時間稼ぎするという重要な役目を果たす。
竹本が丑嶋に捕まったことで計画失敗を悟り、報復を恐れて他のホームレス達と共にどこかへと逃げていく。竹本のおかげで借金が有耶無耶になり日雇い労働者として再出発できたが、性懲りもなくまた金を借りようとしておりその雲行きは怪しい。
- 黒田
同室メンバーのメガネ男性。エリート銀行員だったが2年前に小学生の売春に手を出してしまい、警察から逃げるためか誠愛の家にやってくる。しかし鰐戸三兄弟の支配に耐えきれず脱室しようとしてしまい、罰として片足を切断される。鰐戸一の指示で障害者手帳を取らされたようで、障害者年金を搾取されている。
怪我の痛みから自暴自棄になっており、鎮痛剤代わりにシンナーを吸って日々を耐えている。竹本の献身的な看病むなしく、物語後半では完全に絶望してしまいシンナーの過剰摂取で自殺しようとした。しかし竹本の機転で自殺は阻止され、結局は生きながらえてしまう。また間接的に金の横取り計画のために利用される。
事が済んだ後、竹本から札束とケータイを渡され解放される。近くに隠れていたチンピラに札束を奪われてしまうも、何を思ったか真面目な表情で何処か(おそらく警察)へと電話する。その後、あるシーンで売春の罪で逮捕されたことが明かされた。