曖昧さ回避
植物の菱
ミソハギ科に属する水草で、日本全国、朝鮮半島、中国、ロシアのウスリー川沿岸の湖沼に分布し、生息地では水面を埋め尽くすほど繁茂する。
湖沼の水底から茎葉を伸ばし、葉は水面に浮かぶ浮葉植物である。
菱形に近い形状の葉を持つ茎が放射状に広がり、初夏から秋にかけて直径1㎝ほどの小さな白い花が咲く。
文化的な扱い
二本の角があって菱形にも見える大きな種子ができ、デンプン質が豊富なので古くから食料として重宝された。加熱した菱の実の味は栗に似るという。
日本では古くは縄文時代に食料とされていた形跡が残り、平城京に武蔵国産のものが納められたという記録が残る。
アイヌにはベカンベと呼ばれており、塘路湖で採取されたものが重要な食料されていたため、この地では収穫の季節になるとベカンベカムイノミという収穫祭が行われた。
アイヌ民話によると、繁茂する様子とアイヌが採りに来るのを嫌った阿寒湖のカムイによって塘路湖へ追い出されたベカンベたちが怒り、草を丸めて投げ込んだことで食えないまりも(トラサンペ)が生まれたと伝わっている。
近縁種のオニビシやヒメビシの種子は4本の角が生え、食用にはあまり適さないが、忍者は乾燥させたものを敵対者の足下に投げつけることで、怪我をさせ足止めしたという。これがまきびし(撒菱)の起源であるとされ、この種子を模したものが木や金属で製造され忍び道具となった。