概要
室町時代に制作された真珠庵本系統の『百鬼夜行絵巻』に描かれている赤い妖怪に付けられているとされる呼称のひとつ。
アイルランドのチェスター・ビーティー図書館に収蔵されている江戸時代末期の『百鬼夜行絵巻』では、上記の絵巻などに描かれている真っ赤な妖怪妖怪の名称として赤へるという文字が見られるというが、未詳である。また、それ以前の絵巻物に用いられている例はまだ確認されていない。
赤い妖怪には、足があり、ぎょろりとした目に、尻尾らしきものがある。しかしその姿は絵巻によって、体毛が生えている、体色が異なる、尾がないなどの様々な違いがある。
真珠庵系統の『百鬼夜行絵巻』に見られる図柄を個々に一体の妖怪として転用して描いている江戸時代後期の妖怪絵巻の類では、体色の異なるこの妖怪に、大化(おっか)、ちからここという名称も用いられており、年代的に「赤へる」はそれらよりも後のものである。
なお2016年頃から、実は赤へろと読むのが正しく、同絵巻にある「御幣を持つ小鬼(如意自在?)のほうの添え書きであるのでは?」という意見がある。
そして赤い妖怪のほうには我以路(かいろ/かえる)の文字が見えるので、蛙の妖怪であるという説も唱えられている。
赤へろはかえるとも読むことができるので、隣り合っている者同士で韻を踏んでいるのかもしれない。
それを踏まえたのか幕末に描かれた『百妖図』の瓢箪子(ひょうたんこ)は、類似しつつも足が四本の蛙の要素が見受けられる。
その後、昭和になり同型の妖怪は水木しげる氏にのっぺらという名で紹介されたり、平成になり荒俣宏氏監修の食玩『陰陽妖怪絵巻』で蟇怪(がまのけ)、映画『さくや妖怪伝』で赤子玉(あかこだま)、『絵でみる江戸の妖怪図巻』で赤ぶよ、サンガッツ本舗のソフビ妖怪ぶよぶよ、その他赤玉(あかだま)やゲーム『新桃太郎伝説』での地虫(じむし)、単に赤いやつなど様々な名で呼ばれている。
更に、pixivを含めたネット内では妖怪絵師氷厘亭氷泉氏によって妲腸(だっちょ)と命名されているものが投稿されている。
ちなみに、妖怪絵本作家石黒亜矢子氏の作品でも「赤へる」と紹介されており、あの『いらすとや』も、この妖怪を「赤へる」名義でフリー素材イラスト化した。