概要
軍属とは、軍隊に所属する人物のうち、将校(士官)、兵士のどちらにも該当しない者。
時代や組織によって、軍属と呼ばれる人物の定義や権限、位置付けは異なるため注意が必要。(例えば「一時雇いの荷物運搬夫」「軍関係の施設内の売店の店員」も「軍属」に含まれる場合が有れば、文官でも職務によっては軍属に含まれない場合も有る)
なお、例えば、軍内の仕事の内、事務仕事や軍事関係の研究や軍医業務や軍関係の学校の教官や軍隊における法務(軍法会議における裁判官・検事・弁護士に相当する役割)の業務などのデスクワーク・お役所仕事・直接戦闘以外の仕事などを行なっていても、兵・下士官・士官などの「軍人としての階級」を持ついわゆる「制服組」は、あくまで軍人であって文官でも軍属でもない。例えば、戦前・戦中の日本では、正規の軍人が陸軍省・海軍省で人事や予算管理などのデスクワークを行なっているケースが多かった(陸軍省・海軍省内のデスクワークを行なう部署でも各部署の責任者は必ず制服組の士官・将官だった)が、この場合の身分は軍人のままで一時的に文官や軍属になった訳ではない。
また、軍の文民統制が法律に明記されている国の軍隊で、「制服組」を管理・監査する役目の「軍に所属する文官」も一般的には軍属に含まない場合が多い。
例えば、NCIS捜査官は「軍の下部機関で働いているが、軍人ではなく文官・文民」だが「軍属」と呼ばれる場合は、ほぼ無い。
要は英語で言うなら"military personnel"(軍関係者)ではなく"civilian worker for the military"(軍で働く文民労働者)または"civilian component"((軍人と文民を区別する必要が有る場合における)文民の構成員)が日本語の「軍属」に相当する。
軍属と呼ばれる者は一般的には
- 行政、法務(国際法を含む)、経理処理を行う事務職員(ただし、該当者でも軍の階級を持つ制服組は除く)
- 例えば在日米軍基地に勤務するアメリカ国籍者やその家族に行政サービスを提供する為に在日米軍基地を勤務場所としている、軍以外のアメリカの公的機関に所属している連邦公務員。
- 通訳(ただし、該当者でも軍の階級を持つ制服組は除く)
- 従軍司祭、僧侶などの聖職者
- ただし、従軍司祭・従軍僧侶が存在する軍隊にだった場合は従軍司祭・従軍僧侶が担当するような業務の一部を政治将校が行なっているような国も有るが、政治将校は当然ながら「正規の軍人」「制服組」であって、文官でも軍属でもない。
- 自動車、航空機など専門知識や技能を要する装備品の整備技師(ただし、整備兵など該当者でも軍の階級を持つ制服組は除く)
- 馬蹄、鞍などを修繕する馬具職人(ただし、該当者でも軍の階級を持つ制服組は除く)
- 軍靴を修繕する製靴工、軍服等の縫製工(ただし、該当者でも軍の階級を持つ制服組は除く)
- 研究機関の技術者、研究者(ただし、該当者でも技術士官など軍の階級を持つ制服組は除く)
- 特定分野の専門家で教官や講師に任ぜられた者(ただし、軍の外部から招聘された者)
- 輸送業務を請け負う船舶や航空機、自動車等の乗組員、関係者(ただし、該当者でも軍の階級を持つ制服組は除く)
- 戦時中の日本においては南満州鉄道や船舶運営会社の職員でも、軍の輸送業務を代行する場合は軍属扱いされた
- 慰安所の関係者や軍施設内の食堂・売店などの従業員で、軍人としての階級を有さない者
- 軍に一時的に雇用された単純労働者(荷物運搬夫など)
- その他、軍より業務委託を受けた民間企業・民間団体・軍以外の公的機関に所属する者の内、主に軍事施設や戦争中/占領中の地域を勤務場所とする者。
などの業務を行う者のうち、軍に所属して身分を保証される立場となった際には、軍属と呼ばれる場合がある。
とはいえ、軍隊は基本的に非常に高い自己完結性が求められるため、よほど特殊な技能でない限りはこれらの技能を持った人物が勤務している(していた)。
ただし、戦時(特に負け戦の場合や相手国が国力などにおいて大幅に勝っている場合)などの軍の人手が足りなくなった場合や、占領した場所が特殊な場合(例:油田や原発を占領したので石油関係や原発関係の技術者が必要になる)などは、この限りではなく、一般市民であっても軍属またはそれに準じた業務を行なわねばならない可能性が生じる。