概要
『混血』の者には天敵とされていた家系であり、それらの総本山である遠野家とは並々ならぬ関係である。
ただし、時代の流れにより、断絶や取り潰しになっており、『TYPE-MOON FES. 一問一答』にて両儀と巫浄は退魔の他にも“使い道のある”技があったのでそちらをメインにして生き残ったと言及されているため、現代において機能しているのは両儀家と巫浄家のみと思われる。
退魔
『歌月十夜』によると『退魔』とは歪みである『魔』および、それらの魔との『混血』と敵対する「歪みを修復する者」の集まり。
『魔』とは「自然の法則にありながら、その流れを歪めるモノとして必要とされなかった力」である。これには様々な種と類があり、総じて、正当な流れにある者には邪に映る輩である。故に魔であり、必然として魔を嫌う退魔が生じた。
魔の一種に『鬼種』がおり、これは始まりから生粋の魔であるとされ退魔はこれを禁じるに適している。
『ロード・エルメロイⅡ世の冒険』によれば魔術師もまた『魔』に含まれるとされ、退魔は魔の鏖殺のために気が遠くなる年月技術を磨いてきたという。
だが、退魔は人が人の社会を守る為に練り上げられた組織であり法術系統である為、初めから人を害するにはつくられていないものであり、魔と人の混ざりモノに対しては後手を踏む。
退魔は自然の歪みを修正するものであり、人の歪みを正すには至らず、人との混血である魔は歪みではなく、彼らが人の血ではなく魔としての血が濃くなった場合に歪みとして認められる。
この人としての側面を保てなくなった混血を"外れた者"と呼ぶのだが、混血は人としての側面を持つが故に禁縛の勅は通じず、魔としての異能を駆使するが故に人の身では太刀打ちできず、混血が外れた場合、退魔にとって最大の敵となりうる。
魔と退魔は反発しあいながらも、その実は大本の力を同じとする者たちであり、故に彼らには共通のルールが存在し、その中で公正な勝負を決する。
そのルールを覆すモノが純粋な人間としての異能である『超能力』である。
超能力はヒトという種が無意識から生み出した抑止力であり、その抑止する対象は無論、霊長類として頂点に立つヒトに仇なすモノタチである。それらの能力を持つに至った人間は魔術という後天的な技術を学ぶ必要もない。自然干渉法・陰陽の理を無視した、自然から独立した人間種が持つに至った最果ての能力こそが超能力である。
魔としての自然干渉法は行わず、人間でありながら人間として規格外の能力を持つ超能力者は混血達にとって忌むべき邪魔物であるという。
ただし、超能力という力が魔に勝るかといえば、そんなことは万に一つもありえない。あくまで超能力は陰陽のルールにそぐわないだけの、ほんの小さな針に過ぎず、その能力・効果そのものは魔や退魔の自然干渉に比べるべくもなく、超能力者単体では混血には到底太刀打ちできない。
それでも規則の外からの力というものは規則に生きる彼らにとっての脅威であり、退魔の者は超能力者を隠し玉として用意し、争いの途中に登場させて混血の不意を突くという使用方法を用いる。
それ故、混血にとっても所詮は予想外の要因となる厄介者でしかないという認識に過ぎなかったのだが…。
また、同人版『月姫』のシエルのセリフによると、「退魔の宝具」なるものがあるらしいが、詳細は不明。
各一族
七夜
人として外れた能力を持ち、かつ人間として身体性能を限界まで鍛え上げる一族。
近親交配による偏執な配合を繰り返した結果、本来一代限りの変異遺伝である超能力の継承を可能とした。『型月稿本』によると七夜の特異能力は『宿業』にかかわるもの。最後の当主は「ありえざるモノを視る」眼を持っていた。
また、暗殺者としての技術を磨き上げ、本来ならば使い捨てとされる超能力者を生還させる術を学んだ。
その時点で彼らは超能力を保有する一族ではなく、ヒトの持つ退魔意志を突出継承する特異な一族と成り果てた。それは時として混血の者達以上に迫害されてきた異能力者の家系である七夜にとって、そういった自己の有用性を見せつけることでしか生き残る術がなかったからである。
近年、遠野家に隠れ里を襲撃されて壊滅。名目上は断絶しているが、完全に血は絶えていない。
ちなみに明確に七夜が滅ぼされたのは月姫世界での話でFate世界における七夜がどうなったかは不明。
両儀
二重人格者が高い確率で生まれてくる家系。男性と女性のそれぞれの人格に「同じ読みの名前」が与えられる。
人間はどんなに優れた肉体、素質があっても極められるのは一つの事のみだが、両儀家は1つの肉体に複数の人格を与えることにより解決した。
代表者は『空の境界』の主役である両儀式がいる。また、その兄に両儀要もいるが、彼は二重人格者ではないため、後継ぎとは言えない。『空の境界』本編後には、式の娘の両儀未那もいる。
浅神
純血種ゆえに、浅神には強力な超能力者(鬼子)が生まれることがある。
長野の名家でもあるが藤乃が十二歳の時に破産し、分家の『浅上』に取り込まれた。
分家の浅上は浅上女学院を経営している家でもある。退魔の家としては途絶えたが、血脈としては本家の娘であり、分家に引き取られた浅上藤乃がいる。
『TYPE-MOON FES. 一問一答』によると衰退の原因は、捕まえた混血を家の守り神として飼育、ないし配合していくうちに血が薄れ、最後には自分たちもほとんど混血になっていた、というミイラ取りがミイラになったパターンとのこと。
巫浄
巫女の家系。
七夜と同じように特異能力を伝えていく家系だが、「血」によってではなく、技術、知識の教授である。現世が見えなくなるかわりにあちらの世界を視えるようにする為、巫浄の姓を受けた女性は盲いる事になる。
明言されていないが恐らく傍流である『巫条』は本家と異なり、自らの血の繋がりで能力を継承する。資産家でもあるが、一族が軒並み事故で死んだため、唯一の生き残りの娘だけとなっている。
蒼崎橙子によると巫条も古い純血種であり、祈祷が専門だったが本性は呪詛が生業だった、巫条の姓は不浄の言代なのかもしれないと推測している。
空の境界設定用語集によれば、古い呪い師の家系で、口寄せを生業とする一族。両儀、浅神に並ぶ古い家柄とのこと。
本家ではなく分家であるが、とある双子の姉妹もここの出身である(こちらも血の繋がりで能力を継承している)。
実は本家の人間については一切わかっていない家となっている。
余談
『ロード・エルメロイⅡ世の冒険』に登場する日本の実戦派の法術師・退魔の家系である夜劫家は両儀家とは遠縁とのこと。
その一人である夜劫雪信は蜘蛛を思わせる異様な剣術を使用していたが、『TYPE-MOON BOOKS material』の用語集によると、この技術は退魔四家から伝わったものであるという。
また、日本の魔術組織では神秘の摩耗を防ぐために神の名を言挙げしない(みだりに神の名を出さない、組織だけの別名を使うようにする)という手段が使われており、かつての退魔四家も同様の手段を用いていたという。