鈴々(死亡遊戯で飯を食う。)
りんりん
「あら、そう?最近の子は手ぬるいのね」
ライトノベル『死亡遊戯で飯を食う。』の登場キャラクター。
デスゲームの元プレイヤーであるが、ゲームによる負傷で全盲となってもプレイを継続していた凄腕。主人公・幽鬼は、盲目状態で戦うスキルをもとめて彼女に師事する。
以下のプロフィール以降には、彼女の登場エピソードについての重大なネタバレを含む。
年齢は完全なる不詳。
幽鬼の師である大ベテラン「白士」の更に前世代にあたる古豪プレイヤーであり、本人の言によれば引退から十年近く経っていること、ほのめかされる戦歴も加味すると、仮にデビュー当時が小学生だったとしてもそれなりの年齢と思われるが、見た目は「お姉さん」で通るレベルの若々しさ。
両耳には鈴をつけており、歩くとその名を表すかの如く「りんりん」と可愛らしく鳴り響く。
見た目にはおっとりと優し気な女性であり、それに相応しいふんわりとした口調で喋るが……
実はその本性は、「全盲になってもデスゲームを継続していた」という経歴からうかがえるとおりの、作中でも一、二を争うバトルマニアである。
デスゲームを続ける中で負傷により全盲となっても、諦めずに聴覚を利用した「反響定位」のスキルを身につけることでゲームの世界に舞い戻り、その状態で引退するまでプレイできたという恐るべき執念と実力の持ち主。
両耳につけた鈴も実は反響定位を行うためのアクティブソナーの役割であり、可愛らしさとは無縁の実用品であった。
引退して長い時間(作中登場キャラでもっともプレイ期間が長い白士が、全く面識がないほどの昔)が経っているにもかかわらず、現役強豪プレイヤーである幽鬼と渡り合えるほどの実力をいまだに保持している。
そういった経歴にふさわしいというほかない超・体育会系であり、盲目状態で戦うスキルを師事しにきた幽鬼に対し「これ以外の伝え方がわからない」と宣って、容赦なく「本当に命をやり取りする野良デスゲーム」を開催した。
盲目状態で戦う術をもとめてコンタクトしてきた幽鬼を、寂れて無人化した離島に呼び出し「私たちプレイヤー同士には、言葉よりもこの伝え方が一番いい」として、一方的に模擬デスゲームの開催を宣言する。
内容は、島内に隠されたボートとその起動キーを発見して島から出る「脱出型」であり、鈴々はそれを邪魔する「殺人鬼役」を務める。
島内各所には武器などのアイテムが隠されており、それらを見つけて武装し、鈴々の襲撃に立ち向かうこともできる。模擬ではあるが、鈴々のこだわりにより「本物のデスゲーム」となっており、武器類は殺傷力を有したものばかりである。
逆に言えば鈴々の方が殺されてしまう可能性もあるが、それも含めて構わない、と言ってゲームを開始した。
これに対し「穏便に」訓練をうけるつもりで、見学のために弟子である玉藻も同行させていた幽鬼は心理的に完全に後れを取り、もともと員数外であった玉藻をも平然と巻き込もうとする鈴々に終始ひっかきまわされる。
全盲であることを逆手に取るかのような大胆な動きで戦う鈴々に対し、幽鬼は目が見えない相手との駆け引きが未知数すぎること(背面が死角にならない、攻撃の間合いが不鮮明、等)、また、正式なデスゲームではない上、あくまでスキルを習いに来た相手である鈴々を殺すことにためらいがあることなどから、苦戦を強いられる。
が、その戦いの最中に幽鬼はひとつの違和感に気づく。
全盲でこれほど戦えるのに、そして未だ嬉々として「戦いの中での死」を受け入れるバトルマニアにもかかわらず、なぜデスゲームから引退したのだ?と。
実は、鈴々は視覚を失って以降も戦い続けた結果聴覚もほとんど喪失してしまい、もはや反響定位による戦闘すらままならなくなっていたのである。
さすがに見かねた専属エージェントが引退を勧め、本人はその状況でもまだやれる、と息巻いたものの、運営側もエージェントの判断を承認したことで引退を余儀なくされたものであった。
その後は抜け殻同然に日々を送っていた鈴々だが、幽鬼からの依頼に「これこそ自分に相応しい死に場所」と奮起し、彼女に「今の自分でも再現できる、盲目状態で戦うための、反響定位と並ぶもう一つの重要なスキル」を伝えるため、デスゲームの舞台を作り出す。
鈴々が命をかけて伝えようとしたのは、幽鬼が振り回された「有効な攻め手がわからなくなる立ち回り」、つまりは「全盲であることを逆手に取ったハッタリ」のノウハウであり、ゲームが始まって以降の「全盲でも問題なく戦う姿」は、その伝授のために、現役時代に培った経験と度胸によって「当時の動きを極力再現するよう振る舞っていた」だけであった。
鈴々は外部に協力者を置き、胸元に仕込んだ隠しカメラと、髪で隠した小型通信機を通じて、辛うじて聞こえる片耳で状況を逐一おしえてもらうことで渡り合っていたのである。
つまり「他人任せの遠隔操作でデスゲームをする」という、全盲で戦う以上の無茶を行っていたことになるが、これはひとえに鈴々の「自らのスキルを継ごうとする者と全力で戦い、スキルを伝えて死にたい」という願いを叶えるための大仕掛けであった。
己の戦いだけをひたすらに追求して弟子をとったこともなく、そしてその戦いをも失ってしまった鈴々にとって、幽鬼の申し出は「最期の戦いに相応しい、最高の死に場所」だったのである。
しかしこれに気づいた幽鬼は、協力者の方を探し出して抑えることで、鈴々をほぼ戦闘不能の状態に追い込む。
その状況下でもなお戦意を一切失わず、接近する幽鬼を気配だけで感じ取って正確に銃を向けてくる、というバケモノぶりを発揮した鈴々だが、さすがにこれほどのハンデを負っては如何ともしがたく、気絶させられて敗北することとなった。
余談として、もはや実戦形式での教えようがないためか、このゲーム中においては伝授をスルーされてしまった「反響定位」であるが、後日あらためて(今度こそ穏便に)幽鬼にノウハウが伝授されている。
最初の邂逅から半年ほどして、心因性のストレスにより反響定位が暴走した幽鬼は「己自身の幻影が身体を乗っ取ろうと襲ってくる」というリアルすぎる幻覚に襲われるようになる。
これを撃退するため「模擬デスゲームを開催し、その中で幻影と対戦して打ち負かす」という手段を思いついた幽鬼は、反響定位スキルの師である鈴々に助けを求める。
ごく断片的な情報から状況と依頼内容を正確に把握した鈴々は、模擬デスゲーム「スノウルーム」を準備し、幽鬼の要望に応える。
また、世代が隔たった幽鬼たちに対し大先輩然として振る舞っていた前エピソードにくらべ、比較的世代の近い人物も登場するこのエピソードでは、おそらくは「素」の状態であろう砕けた態度が増えており、結果、バトルマニアぶりがより強調されている。
上記の通り、全盛期とくらべれば見る影もないほどポテンシャルが落ちているにもかかわらず、ネタが割れるまでは幽鬼を圧倒した事から、全盛期の鈴々は300人殺しの殺人鬼・伽羅と同等かそれ以上の、戦闘において最強クラスのプレイヤーであった事が想像できる。
しかし逆に言えば「それだけの戦闘力があっても負傷引退に追い込まれた」ということでもあり、伽羅と同じく「殺しが得意な戦闘狂は、それゆえに、デスゲームで生き残りつづける事には長けていない」というテーマを反映しているとも考えられる。