この言葉自体に明確な定義は存在しない。ただし、用法・イメージは以下の2つに大別される。
小銃兵
銃士という言葉の一つの用法は、中世後半以降に現れた歩兵小銃を武器とする兵士マスケッティア(英:musketeer、仏:mousquetaire)やストレレッツ(露:стрелец)、19世紀以降のライフルマン(英:Rifleman)の訳語である。
中世までは歩兵の中でも槍兵や弓兵、小銃兵と細分類があったが、近世以降は槍や弓が廃れもっぱら歩兵小銃を装備しているので、ライフルマンという言葉は遺存的に残っているだけで、通常は単に歩兵(infantryman)と呼ばれている。明治維新が起きたころには槍や弓は廃れていたため、日本の軍隊では最初から「歩兵」が用いられ、「銃士」という言葉が正式に用いられたことはない。また、近代的な訳語の作り方から言えば公式訳があったとしても「銃兵」になったと思われる。
三銃士とフランスの護衛銃士隊
フランスではルイ13世のころから護衛銃士隊(Mousquetaires de la gardeないしMousquetaires du roi)があった。通常の近衛兵に比べて入営基準が緩かったため、王に武勇を見せて立身出世を狙う男が入ることが多かった。アレクサンドル・デュマの「三銃士」の原題は"Les Trois Mousquetaires"で、この護衛銃士隊の隊員が3人という意味である。日本語での「銃士」のイメージはこの三銃士に負うところが多い。Pixivでも「銃士」タグは三銃士登場人物らしい服装をした版権・創作キャラのイラストが多い。
身分的には騎士の後継に当たるので戦場では騎乗して移動する資格を持っていた。交戦時は降りて火縄銃隊として戦ったが、後には騎乗のまま射撃する竜騎兵の技法も用いられるようになった。中世の騎士ならば重い鎧で身を守っていたが、マスケット銃の火力増大により、鎧による装甲は簡単に撃ち抜かれるようになってしまった。この為全身鎧の重騎兵は兜と胸部装甲のみの胸甲騎兵となり、さらに後の竜騎兵は機動性を重視して軍服のみであった。
拡大された意味での銃士
字義通り「銃を扱う者」として使われることもある。剣士、魔術士などの延長にあり、ファンタジー作品の影響が強い。そのせいか同じ銃兵でも、マスケッティアに相当する鉄砲足軽や、ガンナーに相当する砲兵とは扱いが違っているようである。
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