『人と魔族が争って勇者が魔王を討伐……』なんてのは遠い昔の話。
現代では冒険者も魔族も勇者も魔王も命を懸けない職業に過ぎない。
世界が平和になり、ダンジョン攻略がエンターテインメント化した時代。
冒険者も魔物も魔力で作られた分身を用いて戦う、誰も死なないダンジョン攻略が大人気に。
大陸中で攻略映像が配信されている中、僕の所属する勇者パーティは世界第四位の人気パーティだった……のだが。
パーティーメンバーは五人という規程があり、黒魔導士なんて不人気ジョブは三位以上に登りつめるには邪魔だと言われてしまう。
そうして無職になった僕は次のパーティーを探すがまったく見つからない。
ある日、そんな僕の前に金髪紅目の美女が現れて仕事があると言った。
かつての仲間よりも能力を高く評価してくれた美女に感激した僕は、詳しい内容を聞く前に面接を受け入れてしまう。
足を運ぶとそこは最深部到達パーティーゼロを誇る最高難度ダンジョン・魔王城で、四天王と魔王が僕を待っていた。
これは勇者パーティーを追い出された黒魔導士が、魔王軍に入り勇者たちを撃退する側に回る話。
概要
御鷹穂積氏により連載されているWEB小説およびWEB漫画作品。
正式なタイトルは難攻不落の魔王城へようこそ~デバフは不要と勇者パーティーを追い出された黒魔導士、魔王軍の最高幹部に迎えられる~。
小説は小説家になろうのほか、カクヨムにも連載されており、GAノベルにて書籍化されている。
漫画はガンガンオンラインにて連載されており、ガンガンコミックスUP!にてコミカライズされている。
魔物や職業、剣と魔法や冒険者といった概念のあるゲーム的な世界像がベースになっているが、人間と魔物同士の戦いが終わり世界が平和になった時代で、テレビ、インターネット、動画配信サイトが存在し、かつての人間と魔物との戦いを模した「ダンジョン攻略」とその様子を動画配信したものが世界的な娯楽となっているなど、比較的文明が進んだ世界が舞台である。
本作は所謂「追放もの」だが、追放した側が一方的に落ちぶれる、あるいは主人公が再就職先で無双するといった展開ではなく、追放を期に新しい発見や出会いを得て成長していくキャタクターたちを描いた群像劇で、また冒険者と魔物の戦いが娯楽となっている世界設定を活かしたエンターテイナーとしての理想と現実を描いた作品となっている。
登場人物
小説家になろう版の登場人物の項目にて紹介されているキャラクターを掲載する。
- レメ/【隻角の闇魔道士】レメゲトン
本作の主人公。男性。【役職】は【黒魔導士】。種族は人間。
ランキング4位に位置するフェニクスのパーティに所属していた。
フェニクスとは幼馴染の親友であり、二人で冒険者として1位になることを目指していた。
幼い頃は子供たちの中心になるガキ大将だったが、自身の【役職】が【黒魔導士】と判明した途端に人が離れていき、以後はあまり自己主張をしない謙虚な言動をするようになる。
観察眼が非常に鋭く、相手の隙や癖などを見抜き即座に反撃の策を立てるなど頭の回転も早い。また凄まじいまでの努力家で、戦いに勝つための手段を増やすことに余念がない。
気になる冒険者の戦い方や得意技を記憶しているなど生粋の冒険者オタクでもある。
【黒魔導士】としての実力は一線を画するのだが、それを知るのはフェニクスのような限られた人物のみであり、理由があって他人に明かすことができないため、アルバの指摘に対しても反論せず、追放を承諾する形でフェニクスパーティから脱退する。
脱退後の再就職先を探している矢先、実際に彼の操る黒魔法を受けてその実力を十二分に理解している魔物側からスカウトを受けて魔王軍の参謀【隻角の闇魔道士】レメゲトンとして働くことになり、その実力を遺憾なく発揮し、ダンジョン攻略にやってくる勇者パーティたちに立ちふさがる。
【勇者】に対して強い憧れを抱いており、1位になるという目標も変わっていない。
魔王軍として活動するうちに「エンターテイメントとはいえ【魔物】は単なるやられ役じゃない、【勇者】に勝っても良い。」と考え、【魔物】の【勇者】を目指すようになる。
魔物サイド
主に魔王軍に所属し、ダンジョン攻略に挑む勇者パーティに立ちふさがる敵として立ちふさがる。そのためどうしても【勇者】に倒されるやられ役、との印象を持つ人間は多く、酷い時には公然と魔物側は悪であると差別するような人間もいる。
- ミラ/【吸血鬼の女王】カーミラ
本作のヒロイン。女性。【役職】は【操血師】。種族は吸血鬼。
魔王軍四天王の一人であり、魔王のダンジョン第三層フロアボスを任せられている。
レメの黒魔法を実体験したこともあって彼の実力を正しく理解しており、その能力が認められるべきだと考え魔王軍へ勧誘した。
異性としてもレメのことを好いていて、レメの前では淑女然としつつも、積極的にアピールをする可愛らしい女性だがサディストな一面があり、部下の前では女王然とした態度を見せる。
- カシュ
犬の亜人の少女。まだ【役職】は判明していない。
市場で果物屋の手伝いをしていたが、レメと知り合ったことをきっかけに、彼の秘書を務めることになる。
冒険者サイド
フェニクスパーティ
長い間固定されていた冒険者ランキングの4位にまで急速に上り詰めた新進気鋭の超大型新人パーティ。
パーティリーダーは【炎の勇者】フェニクス。速攻戦術を得意とする。
- 【炎の勇者】フェニクス
男性。【役職】は【勇者】。種族は人間。
ランキング4位のフェニクスパーティのリーダーであり、四大精霊の1体である火精霊との140年ぶりの契約者。
実力も容姿にも秀でた誰からも好かれる好青年であり、ほぼ固定化されていたランキングを塗り替えた今話題の冒険者。
レメとは幼馴染で、今でこそリーダーにふさわしい決断力と判断力を備えているが、幼い頃はいじめられっ子であり、よくレメに助けてもらっていた。
彼の本当の力を知る数少ない人物の一人。
共に冒険者になりランキング1位になることを目指したが、パーティの他のメンバーがレメの追放を支持し、彼が脱退してしまったことを悔やんでいる。
- アルバ
男性。【役職】は【戦士】。種族は人間。
伸縮自在の魔法剣を操り、離れた相手でも切り裂くことができる。
粗野な言動が目立つが実力は確かであり、なにより上位になることに貪欲で高い向上心がある。ランキングを上げるためには更なる人気を得る必要があると考えており、画面映えしない黒魔法を操る【黒魔導士】であるレメに脱退するように迫った。
- リリー
女性。【役職】は【狩人】。種族はエルフ。
世界で三人しか確認されていない『見えない弓術』である『神速』の遣い手の一人。
冷静で落ち着いた性格だがアルバとは仲が悪く、よく言い合いになる。
ダンジョン攻略では、人気を出すためにエルフの特徴である耳を隠し人間のように振舞うようアルバに言われたのだが、レメとフェニクスの勧めもありエルフとして冒険者稼業をしている。
レメ自体には特に嫌悪感などは抱いていないが、フェニクスパーティが速攻を重視する構成のため、相手の弱体化を得意にする【黒魔導士】よりも攻撃力に長けた【役職】のほうが活躍するのではと考えていた。
- ラーク
男性。【役職】は【聖騎士】。種族は人間。
パーティの盾役であり、正確で隙のない堅実な動きで仲間を守護する。
普段は眠たげで、ぼーっとしてることが多い。
防御が基本であるためレメの【黒魔導士】としての実力を感じ難く、彼の脱退には消極的ながら賛成した。
- 【氷の勇者】ベーラ
女性。【役職】は【勇者】。種族は人間。
脱退したレメの代わりに加入した冒険者で、高位の水の分霊と契約し『氷の精霊術』を与えられた。
育成機関を卒業したばかりであるが、在学中は優秀な成績を収めており将来を期待されている。
フェニクスパーティが今までのような活躍が出来なくなっている様子を見て、【黒魔導士】であるレメが優秀な存在であることに気が付いた。
用語集
- 【役職】(ジョブ)
10歳になると神殿で明らかにされる、自分の『適職』。
端的に言えば、神様が自分が何に向いているのか、何ができるのかを【役職】として明らかにしてくれるというもの。
【戦士】や【聖騎士】のような戦闘職以外にも、【料理人】【木こり】【鉱夫】といった生活に根付いたものもある。
必ずその職業をやらなければならないというわけではないが、どれだけ努力したとしても【役職】もちには絶対に及ばないため、自身の役職に逆らうことはかなりの苦行とされている。(【黒魔導士】がどれだけ体を鍛え剣技を磨いたとしても【戦士】のそれと戦い打ち勝つことはできないし、いくら【鍛冶屋】が料理の腕を磨いても【料理人】が作る料理のほうが美味しい。)
冒険者としては敵の弱体化を得意とする【黒魔導士】と、味方の回復や身体能力の強化などを得意とする【白魔導士】は、様々な理由が重なり不人気職と考えられている。
逆に【勇者】は前衛としての能力を持ちつつ、後衛を担えるほどの十分な魔法力を備え、また精霊と契約することで人間の使える魔法を超えた【精霊術】を授かることができるなど器用万能な【役職】である。
- 冒険者
ダンジョンを攻略して【魔物】と戦い、その様子を動画配信することで生計を立てている人のこと。冒険者の動画配信はこの世界において一番人気の娯楽であり、子どもが将来なりたい職業1位でもある。
主に【戦士】や【聖騎士】のような戦うことが得意な【役職】持ちが就く。
ダンジョン攻略の際には5人でパーティを組み、最低でも1人は【勇者】を組み込み、リーダーとしなければならない。
かつての魔物との戦争では人間が主軸となって戦っていたため、エルフのように戦争参加に消極的だった異種族が冒険者になることを否定的に考える者も存在する。
- 精霊/精霊術
世界に存在する超常的存在で、【勇者】の【役職】に就いたものと契約して力を授ける。
契約したものは聖剣と【精霊術】が与えられ、魔法をは一線を画する特殊な能力を用いることができるようになる。
【嵐の精霊】【炎の精霊】【湖の精霊】【沼の精霊】は四大精霊と呼ばれる別格の存在で、他の精霊はこの四大精霊が力の一部を分けて作った分霊である。
一方で、これらの精霊に属しない特殊な精霊もわずかながら存在する。