概要
多くの知識人から敬愛された偉才澁澤龍彦の連載小説で、氏の死後である1987年に出版された遺作でもある幻想小説。
9世紀に密教の神髄を学ぶため入唐するも納得できる教えを受けることが出来ずに、天竺の地を目指したが旅半ばに薨去したと伝わる元皇太子であった僧高丘親王に材をとった読売文学賞受賞作。
氏の作品であるので単なる旅行記ではないのはお察しの通り、様々な文献に根ざしたメタフィクション的でもある幻想的な文章に翻弄される作品でもある。
なお2019~2021年に「コミックビーム」誌上において、近藤ようこによってコミカライズされ全4巻が発刊された。
あらすじ
平城天皇の皇子に生まれ、嵯峨天皇即位すると皇太子に立てられるも、父上皇と天皇との諍い(薬子の変)により廃された高丘親王。
出家し弘法大師の直弟子となった親王は、東大寺大仏の再建に尽力するなど重要な働きを果たすが、晩年に至り朝廷に入唐求法の願いを出し、唐へ渡った。
親王の真の願いは、幼き日に父帝の寵姫藤原薬子に教えられ、憧れていた天竺を訪れることだった。
貞観七(865)年正月、高丘親王は唐の広州から海路、天竺へ向かった。鳥の下半身をした女、犬頭人の国など、怪奇と幻想の世界を遍歴した親王はやがて旅に病み、その心に去来したものとは……。
※公式より抜粋