KANO(台湾映画)
かの
一球入魂
「球は霊(たま)なり、霊(たま)正しからば球また正し」近藤兵太郎
俳優でもある台湾人の「馬志翔(マー・ジーシアン)」監督の下で製作され、2014年2月に公開された台湾映画である。
「KANO(かの)」とは、大日本帝国の統治時代における台湾に実在した、台南州立嘉義農林学校(現:国立嘉義大学)の略称である「嘉農」を日本語読みした当時の呼び名である。
弱小だった嘉義農林学校の漢人系・台湾原住民・日本人混成野球部が、かつて愛媛県立松山商業学校を初の全国出場へと導いた、近藤兵太郎監督の指導の下で、過酷な練習や多くの試練を乗り越えて、台湾の学校から甲子園出場を果たした実話を映画化した作品である。
そのため、作中に登場する人物の多くは実在人物であり、その中には台湾の不毛の地を潤すため、烏山頭ダムを建設するなどの農業関連に大きな貢献をした、日本の水利技術者である八田與一氏や、後に嘉義農林に入学、甲子園に出場し、卒業後日本のプロ野球選手として巨人・阪神等で活躍した呉波(後に呉昌征、更に日本に帰化して石井昌征と改名)等も登場する。
また、台湾の製作であるが、舞台となった時代背景から、セリフの多くは日本語であり、一部に台湾語・客家語・原住民語(アミ語)が使われている。
日本でも『KANO~1931海の向こうの甲子園~』の邦題で、2015年1月に公開された。
公開前の2014年3月7日における、第9回『大阪アジアン映画祭』でも、オープニング作品として台湾以外の国で初上映され、『観客賞』を受賞しており、東京都多摩市で行われた第7回『TAMA映画賞』において、主演の永瀬正敏氏が最優秀男優賞にノミネートされた。
更に2014年12月15日には、馬志翔監督と共に脚本を書いた陳嘉蔚・魏徳聖両氏が原作を務め、台湾の漫画家である陳小雅氏が作画を担当した漫画版が、宇野幸一・阪本佳代両氏により翻訳され、日本でも翔泳社から発行された。
1929年、大日本帝国統治下の台湾。
のんびりした台南州立嘉義農林学校「通称:嘉農」の野球部は連敗続きの弱小チームであったが、新任監督として迎えられた日本人の近藤兵太郎監督による日本式のスパルタ練習により、部員たちの心には徐々に闘争心と甲子園出場への夢が芽生えていった。
近藤監督は決して日本人のみを贔屓することなく、守備に長けた日本人・打撃に長けた漢人・韋駄天の如く足の速い高砂族(台湾原住民)のそれぞれの特性を見抜き、選手たちを抜群のバランスを持ったチームへと育て上げていった。
やがて近藤監督は、かつて指導しその指導に萎縮していた松山商業と比べ、嘉農の選手たちが伸び伸びとプレーする姿に自身をも成長させ、彼はチームに対する愛情を深めていき、弱小だったチームは大変貌を遂げ、甲子園出場に向けて快進撃を開始していく。