概要
2014年8月14日にプレイステーション4で無料配信されたホラーゲーム。
開発元はインディーズの新興ゲームスタジオと名乗る「7780s Studio」。
現在、新規にプレイすることは困難な幻のゲームと化している。
ゲーム内容
ゲームはアメリカ合衆国の古びた屋敷の中で目覚めた主人公(男性)の視点で進む。
屋敷の廊下は最奥まで進むとまた入口に戻る無限ループ構造になっており、廊下を何度もループし、様々な怪奇現象に遭遇しながら屋敷を探索することとなる。プレイヤーが行える行動は移動すること、注視すること、アクションボタンが表示された際に特定の行動を行う事のみで、自主的な動作はほとんど行えない。
行動次第では主人公が幽霊「リサ」に殺害されたり、バグが発生したかのような画面が表示されたりと、恐怖・不安を煽る演出が随所で発生する。各所を這い回る害虫や未熟児と思しき不気味な赤子など、生理的嫌悪感を催す演出も多い。
屋敷からの脱出には難解な謎解きが求められる。現状大まかな攻略ルートは知られているものの、正確なクリア条件は未だ判明していない。開発元も一週間以上クリアされない想定で制作していたようだが、実際には発表後わずか数時間でクリアする者もいたという。
(以下ネタバレ)
正体
完全クリア後のエンディングムービーにおいて、このゲームが『サイレントヒルシリーズ』の新作『SILENT HILLS』のティザー広告であることが明らかになり、小島秀夫とギレルモ・デル・トロが監督を務める事、主人公の3Dモデルがノーマン・リーダスを基にしていることが発表される。
つまり、7780s Studioの正体はコナミの小島プロダクションである。「7780」はサイレントヒル=静岡県の面積を指しており、「P.T.」はプレイアブル・ティザーの略だという。
また、あくまでティザー広告なので『P.T.』そのものに従来のサイレントヒルシリーズとの関連性はほぼ見られない(シリーズにリサという登場人物は存在するが、容姿や設定は全く異なる)。
配信停止
2015年4月19日に本作の配信が突然停止し、同時に『SILENT HILLS』の開発中止も発表された。既にプレイ済みだったユーザーも再ダウンロードが出来ない処置が取られている。
これらの事態には小島監督とコナミの確執が関わっていると推測されているが、詳細な事情については明らかになっていない。同時期に発売された小島プロダクション作品『メタルギアソリッドV:ファントムペイン』もストーリーが中途半端なところで終わっており、発売直後に小島プロダクションが解散してしまったので、コナミに対する批判が殺到する事態となった。
その後、小島監督はコジマプロダクションを設立。ソニーと提携してオリジナル新作ゲーム『DEATH STRANDING』を発表した。同作には『SILENT HILLS』に携わる予定だったノーマン・リーダス、ギレルモ・デル・トロも出演している。
影響
本作の配信停止と『SILENT HILLS』の制作中止は多くのファンを悲しませた。
一方、評論家の中には『P.T.』が「幻のゲーム」と化したことで図らずもその歴史的価値が高まったと考察している者もいる。
本作は優れたティザー広告という以上にホラーゲームとしても高い評価を受けており、様々なオマージュ作品が発表されている。中でも『Allison Road』は本作の精神的続編と見做されていたが、オマージュ元と同様に制作中止に陥ってしまった。
廊下一本で完結するという低リソース作品故、steamではよく言えばオマージュ、悪く言えば劣化コピー作品が濫作される結果となった。ただし、その中でも『Layers of Fear』、『8番出口』などコピーに留まらない独自性を獲得した作品も見られる。
ホラーゲームの代表格と言えるバイオハザードシリーズにも影響を与えたらしく、特に『バイオハザード7』の体験版は、アクション路線から恐怖演出を重視したホラー路線への回帰、一人称視点の採用、ゲーム本編に登場しない幽霊の存在、汚く嫌悪感に満ちた屋敷の探索、屋敷の構造など、本作からの影響が多数指摘されている。
2024年に発売されたリメイク版『サイレントヒル2』では、前述の『Layers of Fear』を手掛けたBloober Teamが開発元となった。小島監督は未関与、かつリメイク作品ではあるが『P.T.』のミームを継いだ『サイレントヒル』が発売されたと言えるかもしれない。