概要
PC版RPGツクールシリーズの一つであり、RPGツクール2003の後継にあたる作品。シリーズで始めてスクリプト(RGSS)が導入されたのが特徴的。
前作からの進化
RGSSの導入によりスクリプトを自作や改造、または配布されている素材を導入する事により、システム面の変更が出来ることが売りの一つであり2003まではツクールの仕様上変更できなかった点まで変更が可能になった。
ちなみに、次作のRPGツクールVXRPGツクールVXAceでのスクリプトの仕様については下位互換と上位互換はなく、XPで作成したスクリプトは全く使えないので注意。
例えば、従来「HP1000万の敵を作りたい」と思ったとしてもデータベースでHPの上限値が999999であったことからデータベースで直接HP1000万を設定することは出来なかった。例えば10万ダメージ与える度にHPを10万回復する、という事を100回行う(10万×100で1000万にする)ことで擬似的に再現することは可能であったが、バトルイベントに直接記述する、或いはコモンイベントを使うにせよ、敵グループ毎にその設定を行う必要があり、煩雑となり、汎用性も低かった。そして、例えば味方のHPの上限を5桁以上にするなどイベントを使ってもどうやっても表現できないことも多かった。
しかしながらスクリプトを使用することによって従来はできなかったデータベース上の上限やシステム上の制約などを取っ払うことが可能となり、例えば上述のような煩雑なイベント処理などを必要とせずに作成することが可能となった。
しかも、扱える値の上限が殆ど存在せず、通常のプログラミング言語とは異なりオーバーフローを気にしなくて良いという驚異的な性質を持っている。
またそれ以外にもスクリプトを編集することで新たなパラメータの追加や独自性の高いシステムなどを作る事が出来るようになり自由度は非常に高くなった。実際にRPGツクールと銘打ってはいるが、スクリプトを編集することでそれ以外のジャンルのゲームの作成も一応可能となっている。
他、従来ではアイテムやスキルの種類が多くなって来た際に、選択するのが大変になって来たが、本作ではPageUp(またはQ)とPageDown(またはW)のキーを用いる事によってページ単位での移動が可能となり、この問題がだいぶ解消された(旧作共々、なぜ普通に左右を利用しなかったのかは謎である)。
難点
しかしながら、スクリプト(RGSSはオブジェクト指向言語であるRubyをベースとしている)に対する高度な知識が必要な為、一部を除いたコンシューマ版しか手を着けた事のないユーザーや、初心者には非常に敷居が高くなってしまっている。実際にJavaScriptやC言語を使ったことがあるユーザならばある程度マニュアルを読むだけで理解できるかもしれないが、そのようなものに触れたことがない超初心者ユーザにとってはマニュアルを理解するだけでも難しいだろう。
そして、それに加えRPGツクール2003まではスクリプトなしにできていた多くのイベントやデータベースの設定が何故かXPではスクリプトなしには再現不可となってしまったのも敷居が高い理由の一つであり例えば2003では出来たのに不可能になった事の一例としては「二刀流」などが挙げられる。これにより前作まで普通に出来たことに対してもスクリプト編集を強要し、スクリプトが扱えないと前作までに出来たことさえ出来なくなるということはスクリプト利用者、非利用者問わずに大きな不満点であった。
シリーズを重ねる毎にいくらかのイベントコマンドは復活しているが、最新作のMVに至ってもまだ2003までのイベントコマンドが完全復帰したわけではない。
また本作から画面の解像度チェックもデフォルトで採用されており、1024×768に満たないPCの場合は認証以前に強制終了させられてしまう。
また、従来のツクールでは使用で来たムービーが使用できない。(その後のVXAceではOGG形式系の動画ファイルのOGVが実装されている)
プレイヤー側にとっては、従来は15あったセーブ枠が標準では4つにまで激減しているのも、非常に泣ける話である。
ネット認証
本作以降のRPGツクールでは不定期にネット認証が行われる為、オフラインでの継続使用が難しく様々な事情でネット環境が無くなってしまったりするユーザーへの配慮が全く無い(本作からPC版ツクールは全てネット認証が必要となり、インターネット環境があって当然とばかりにオフラインユーザーへの配慮を拒否しており、公式のQ&Aにおいてもネット認証不要バージョンの発売予定はないと言い切っている)。ちなみに現在では初回に認証を行えば以降の認証は行われなくなり、後継のVXやVXAceでも不定期のネット認証が行われていたが後に廃止され、初回認証のみとなった。
当初、Windows7の64bit版OSでは認証が成功しなかったため、エディターを開くことができず使えなかったが、VALUE!+版(後述)、およびVer1.04のアップデータを適用すると64bit版のOSでも使用可能になる。
2013年の後半からは認証システムも変更され、オンライン環境を持てない人のためにオフラインで認証するためのコードを発行してもらえるようになった。
こちらの新認証システムも、一度認証すれば同じ構成のPCを使っている限り定期認証は発生しない。
なお、これ以降のPC版ツクール(VXAceまで)ではRGSSがデフォルトで採用されており、システム面で便利になったRPGツクールVXやRPGツクールVXAceの発売により、多くのユーザーがソチラへ流れてしまったと見られRPGツクールXPのユーザーや素材屋等は軒並み減少している。とはいえ、XP以降のツクールには相互互換性がないため、スクリプトがはじめて導入された作品、ということも相俟ってXPで作品を作成し続けるユーザは決して少なくはなく、注目・評価されている作品も多い。
サポート終了
2021年1月4日をもって技術的なサポートを終了。(詳細)
配信販売の継続についてはsteam版のみ。
素材規格
原則として、RPGツクール2003までの画像の2倍の大きさ。
新規追加の要素としてトランジション画像やアイコン画像が追加され、モンスターグラフィックはバトラーと名を改め、敵味方の両方に使用可能となった。
本作から歩行グラフィック(キャラチップ)の向き配置が変更され、以降のシリーズでも継続されている。本作のみ歩行パターンが4フレーム分あり、1画像に1キャラのみしか入れられないが次作以降は歩行パターンは3フレーム分に戻り、再び1画像に最大8キャラまで入れられるようになった。
廉価版の発売
現在は過去に実施された「コンテスト パーク」の受賞作品をサンプルゲームとして11本追加しPS2版「RPGツクール」のBGMを収録した低価格のVALUE!+版が2012年9月27日より発売されている。
ゲーム部分の主な標準仕様
他のRPG並びにツクールシリーズと比べると、大きな特徴として、通常攻撃の威力が腕力×攻撃力という形になっている点がある。
また、フロントビュー形式でありながら、味方側の画像も標準で表示可能。
本作では敵グループはトループと呼ばれる。
なお、以下はあくまで標準のスクリプトによる仕様であるため、大抵はスクリプトを編集・導入する事によって変更できる。
ステータス
「HP」「SP」「腕力」「器用さ」「素早さ」「魔力」「攻撃力」「物理防御」「魔法防御」「回避修正」が存在。
回避修正は標準ではなぜか隠しステータスとなっている。
これらは以下に影響している。
腕力 | 通常攻撃の威力、(任意)スキルの威力 |
---|---|
器用 | 通常攻撃の命中率、クリティカル率、(任意)スキルの威力、(任意)スキルの命中率 |
素早さ | 行動順、逃走成功率(敵の場合は防逃走成功)、通常攻撃に対する回避、防クリティカル、(任意)スキルの威力、(任意)スキルに対する回避 |
魔力 | (任意)スキルの威力 |
攻撃力 | 通常攻撃の威力、物理スキルの威力 |
物理防御 | 通常攻撃によるダメージの軽減量、(任意)スキルやアイテムによるダメージの軽減量 |
魔法防御 | (任意)スキルやアイテムによるダメージの軽減量 |
回避修正 | 通常攻撃に対する回避、(任意)スキルに対する回避 |
注意点として、魔力と魔法防御は、影響度(魔力Fおよび魔法防御F)をちゃんと指定しない限りはどこにも何の影響も及ぼさず完全なデッドステータスとなる。
敵(エネミー)の場合は全てのステータスを自由に指定できるのだが、アクターの場合は、装備をしていない状態の攻撃力~回避修正の値は指定ができず、これらは装備品でのみ加算される形となる。
中でも攻撃力は武器でのみ、回避修正は防具でのみ指定可能となっている。
なお、クラスは以上のステータスには影響しない。
腕力~魔力の上限は999となっているが、これはステート(状態異常)や装備品による効果込みでのものとなっている。
例えば、腕力が999の時に腕力倍増状態になっても、腕力は999のままであり意味が無い。
装備画面
付けようとしている装備品によって攻撃力、物理防御、魔法防御がどう変化するかを確認できるが、腕力~魔力については、変化する場合があるにもかかわらず確認できない。
プレイヤーにとっては不便だが、スクリプトを編集する事によってレイアウトを変更し、回避修正も含めて全て表示されるようにしている作品もしばしばある。
また、一般的なRPGにおいては普通、変化の値の文字色が増減に応じて変わるのだが、本作の場合はなぜかそれが実装されていない。
命中判定
二段階で行われており、それぞれ第一命中判定、第二命中判定と名付けられている。
第一命中判定は、スキル毎の命中率(通常攻撃では100%)と、幻惑のようなステートの効果によるもので、第二命中判定は、器用さ、素早さ、回避修正によるものとなっている。
これらは各々独立で判定されているため、片方が200%であっても、片方が50%ならば半々の確率でしか当たらない。
そのため、命中率が上昇する効果を持つステートに掛かっていても、通常攻撃の命中率が正常時よりも上がる事は無い。
更に注意点として、ステートには命中率と回避修正が指定できるが、前者は第一命中判定に関わるもの、後者は第二命中判定に関わるものであり、打ち消しあうものではない。
通常攻撃
「(自分の攻撃力-対象の物理防御/2)×(自分の腕力+20)」に比例したダメージが発生。
つまり大雑把に言えば攻撃力×腕力に比例しており、ダメージ量が跳ね上がり易い。
また、腕力が幾ら高くても、武器を装備していないとダメージを出す事ができない。
一般的なRPGに比べて、武器の性能がかなり重要になっていると言えるが、扱いが困難との声もちらほら見られ、計算方式が多少変更されている場合が少なくないかもしれない。
物理防御がある程度高い相手に対してはダメージが確実にゼロになる。
命中率は、ステートが付加されていない場合は「100-8×対象の素早さ/自分の器用さ-対象の回避修正」パーセントとなっている。
つまり、対象の素早さや回避修正が高い程当たり難く、自分の器用さが高い程当たり易くなる。
ここで、素早さによる回避は器用さで打ち消す事ができるが、回避修正による回避は打ち消す事ができず、器用が幾ら高くても命中率は「100-対象の回避修正」パーセントが限界となる。
そして対象の回避修正が100ともなると、器用さが幾ら高くても全く当たらなくなる。
クリティカルは敵味方問わず、「自分の器用さ/対象の素早さ」に比例した確率で発生する。
クリティカルの効果はダメージ2倍であるため、ダメージが0の場合は0のままとなる(この場合、クリティカルの表示はなされない)。
回避修正は影響しないため、頻繁に避けられるが当たれば必ずクリティカル、という事も起こり得る。
アクターの場合、通常攻撃のアニメーションは武器を介してのみ指定ができる。
また、属性やステートの設定された武器を装備していると、通常攻撃がその属性となり、そのステートを付加する効果を持つようになる。
敵の場合、アニメーションは敵毎に直接指定ができるのだが、属性やステートはなぜか指定ができない。
つまり、スクリプトが標準のままのツクールXP製作品には、毒付きの通常攻撃を行って来る敵はおらず、敵による通常攻撃はどんなアニメーションであっても無属性である。
スクリプトを編集する事で実装しようにも、ツール側での指定が出来ないため、非常に不便を強いられる事になる。
スキル
スキル毎にどのステータスにどれ程左右されるかが指定でき、通常攻撃の拡張のような形となっている。
通常攻撃は「腕力Fが100、器用さF~魔力Fが0、攻撃力Fが100、物理防御Fが100、魔法防御Fが0、回避Fが100、威力が0、命中率が100%、分散度が15、消費SPが0、効果範囲が敵単体のスキル」とほぼ等しい。
例外として、クリティカルが発生しないという点と、武器の属性&ステートが反映されないという点がある。
スキルは「物理スキル」と「それ以外」の2タイプに分かれている。
後者は多くの場合魔法と呼ばれているため、ここでもそう呼称する。
魔法は沈黙で使えなくなるが、ステートによって命中率が左右される事は無く、ステート衝撃解除を伴わない。
逆に物理スキルは沈黙でも使えるが、ステートによって命中率が左右され、ステート衝撃解除を伴う。
しかし、この魔法と物理スキルの区別は、攻撃力影響度(攻撃力F)が0か否かによってなされているため、攻撃力に影響する魔法を作る事はできず、攻撃力に全く影響しない物理スキルも作る事ができない。
物理スキルの命中率関係には不具合が存在し、ステートによって命中率が少しでも下がっている状態では、物理スキルが一切当たらなくなってしまい、命中率上昇効果も200%以上にならないと現れない(外部リンクに解決法有り)。
アイテム
計算方法や守備範囲がスキルとはだいぶ異なっており、使用者のステータスの影響を指定する事ができない一方で、スキルでは指定できなかった、対象の最大HPに比例した回復やダメージ、SPに対する回復やダメージ、ドーピング効果も指定できる。
第二命中判定も行われず、アイテムの元々持つ命中率が命中率の全てとなっている。
物理防御・魔法防御の影響度も指定できるが、対象の最大HPに比例したダメージの場合、最大HPの低い相手にはダメージが出ずに高い相手に出るという事が起こり得る。
なお、本作ではアイテム、武器、防具は、内部的には全く別物として各々別枠で管理されており、アイテムとして使用できる装備品などは存在しない。
ドロップアイテムは、アイテム、武器、防具をそれぞれ一種類だけ設定できる。
耐性
ステート、属性共に、A~Fの六段階から指定する形となっている。
これらはクラス毎・敵毎に指定ができる。
防具にも耐性を指定できるが、こちらは有りか無しかの二択であり、ステートなら耐性有りで完全無効化、属性ならダメージ半減となる。
ステートの付加率はステータスに影響されない。
武器やスキルに複数の属性が指定されている場合は、有利な属性の方で攻撃する形となる。
つまり火属性と氷属性を併せ持つ攻撃は、火属性の攻撃と氷属性の攻撃のいいとこ取りとなる。
属性が指定されてない場合は無属性と見なされ、特殊な扱いとなっている。
防具の場合、装備する事で自動で特定のステートが付加されるよう設定する事ができる。
このオートステートは、耐性無視で付加される。
オートステート付きの防具を外すと、付ける前からそのステートに掛かっていた場合でも、同ステートが解除される。
このため、例えば装備すると毒になる防具があると、毒の状態になっても、これを装備して外す事によって毒を治療できる。
ステートには、そのステートが付加された時に解除されるステートを複数指定できるが、これは同時にステート耐性としても機能する。
逃げる
「アクターの素早さの平均/敵の素早さの平均」に比例した確率で成功する。
つまり、敵の数が多くなっても成功率は下がらず、遅い敵が混ざっていればむしろ逃げ易くなる。
敵の素早さの平均がアクターの素早さの平均の50倍を超えている場合は、逃走が100%失敗する。
不慮のゲームオーバー
歩行中のスリップダメージによる全滅や、ランダムエンカウントによる戦闘での敗北においては、自動的にゲームオーバーとなってしまう。
属性を利用した特殊効果
スキルや装備品などには属性(あるいは耐性属性)が指定できるが、この機能は特殊な効果をスキル等に設けるためにもよく利用される。
例えば「クリティカル発生」という属性を作り、スクリプトを適宜編集することによって、この属性を持つスキルはクリティカルが発生し、持たないスキルは発生しない、という事が可能となる。
非常に応用範囲の広い方式であり、上記の魔法と物理スキルの判別の問題についても、この方式を用いる事によって解消できる。
ただし注意点として、この特殊な属性(上記の例ではクリティカル発生属性)に対するキャラクターの耐性がデフォルトのままでは、この属性を持つスキルは耐性を無視してしまう。
例えば上記の例の場合、火属性のスキルでも、特殊属性を併せ持っていると、火属性を吸収するはずの相手にもダメージを与える事ができてしまう。
簡易的な対処法としては、特殊属性に対する全クラス&敵の耐性を最大にしておくというのがあるが、クラス&敵が多くなって来るとかなり非効率となり、設定ミスも起こり易くなる。
これに対し、特殊属性をダメージ計算の上で無視するようスクリプトを編集する方法が用いられる。
指定可能パラメータまとめ
アクター | クラス | 武器 | 防具 | 敵 | |
---|---|---|---|---|---|
HP・SP | ○(Lv毎) | × | × | × | ○ |
腕力・器用さ・素早さ・魔力 | ○(Lv毎) | × | ○ | ○ | ○ |
攻撃力 | × | × | ○ | × | ○ |
物理防御・魔法防御 | × | × | ○ | ○ | ○ |
回避修正 | × | × | × | ○ | ○ |
属性耐性・ステート耐性 | × | ○ | × | △ | ○ |
通常攻撃の属性&ステート | × | × | ○ | × | × |
通常攻撃のアニメーション | × | × | ○ | × | ○ |
オートステート | × | × | × | ○ | × |
パラメータを指定できないというのは大きな制限となるが、指定したパラメータをどう使うかについてはかなり自由が効くため、希望の構想があれば然るべき所で相談してみると良いだろう。
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