概要
RPGツクールの携帯ゲーム機版として2010年3月11日にエンターブレインより発売されたツクールシリーズの一つである。同シリーズはパソコンでの発売が主流となっている一方でコンシューマゲーム用として発売されるものもあり手軽さなどをウリにして発売された。
先の話をする前に、前提としてエンターブレインではツクールシリーズはパソコンで発売されるものはパソコンという性質上、高い自由度を有する一方で上級者向け、という認識があるようで制約が少ないものの専門性も問われるような仕様(出来ることが多い分慣れが必要)である一方で、コンシューマーゲームで発売されるものは自由度はパソコン版のそれと比べると低くなるが勝手の良さがウリとされている。そのため、機能がパソコン版のものと比べると少ないのは致し方ないことであるというスタンスがあると思われる。
まさかのRPGツクーレナイである。
※クソゲー@ウィキから引用
※ただし一応は作れる
機能の縮小化
そのためか、今作では「属性が存在しない」「転職ができない」「変数すらない」というパソコン版のツクラーからすればありえないほどの簡単化仕様であることが事前に明らかにされていた。
機能の縮小版と言えば、RPGツクール2003のガラケー向けのおまけツールとは全く変わらずの代物らしく、それよりマシだがまだまだ制限はきつい方である。
RPGに詳しい人なら分かるだろうが属性が存在しない、ということは(主に)魔法を敵に応じて使い分ける、という必要性が事実上皆無である、ということになるわけである。つまりファイナルファンタジーシリーズでいうところの「ファイア」「ブリザド」「サンダー」などの差異が全くないのと同じである。
転職ができない、というのは人によってはあまり大きなシステムではないかもしれないが、ドラゴンクエストシリーズのように職業によってパラメータなどが変わるシステムは作れないし、例えば最初は村の少年だったが、最終的に勇者になる、というような物語での職業的な成長を作り出すことはできない、ということになる。しかも本作では味方キャラクターを8キャラクター作ることができるのだが、何故か職業は16枠ある。
これについては通信機能によって送ってもらった他者作成データを保存するための枠であるのだが、今作は設定の幅が異様に狭く、データをもらわなくても口頭で伝えてもらうだけで自分で簡単に作成が可能。 実質的に無意味な死に仕様である。
そして変数がない、というのはパソコン版のツクールの利用者にとっては非常に大きな制約となるといえる。スイッチを組み合わせれば擬似的に変数を再現することはできるが、正直、初心者向けである本作に於いて2進数を熟知していないと出来ないようなことを求めるのは本末転倒であるといえよう。
容量の少なさ
そんな前情報があった中で実際に発売されてみると上の3つがかわいらしく見えるほどの恐ろしい仕様が明らかになる。というのも容量の少なさで「そもそも思うような作品が作れない」ということが明らかになったのである。
本作では作成モードとしてDPモードとフルモードのどちらかを選ぶことができる。DPモードというのはダウンロードプレイ、すなわちソフトを持っていない人に対してゲームデータを渡すことができる、というある意味ニンテンドーDSの機能を使った本作のウリの一つでもあり、コンテストではこのモードで作る必要があった。しかしながらこのDPモードの容量制限が非常に厳しくプレイヤーは「どう作ろうかな」と考えるよりも「どう削ろうかな」と考えさせられることになった。具体的に容量は116万用意されているのだがマップ一つを作成するだけでなんと驚きの40万消費、さらにパーツを置くと30万消費、などとマップを一つ作るだけで容量がなくなる、という驚きのコンパクト仕様である。フルモードの場合はさすがに少しマシにはなるのだがそれでも自由度の高い作品を作れるか、というと非常に厳しい。
また、もう一つ本作のウリとしてpixivでキャンペーンと題して参加したユーザーが作った素材をDL出来る、という機能が存在したのだがこのダウンロード素材を使うとフルモードであったとしても即容量を食い潰してしまう、という事態も起きた。
上で紹介した「重要機能の削減」を以てしてもこれだけの容量問題が起きたわけである。
バグの多さ
そしてそれでもがんばろうとするプレイヤーの息の根を止めたのがバグの多さや必要最低限の機能の欠如である。
まずは先程述べた「属性がない」ということに加えて魔法攻撃力、魔法防御力は存在しない。つまり魔法については誰が使っても、誰に使われても(乱数による若干の差を除いて)同じダメージになるわけである。確かに『ドラゴンクエストⅧ』までのドラゴンクエストシリーズのように魔法攻撃力、魔法防御力が存在しない作品はあるがファイナルファンタジーシリーズなどを中心とした魔法攻撃力などに依存したダメージを与える魔法はこれで完全にできないということになる。
そして次に「特技、魔法の忘却は不可」ということである。転職が出来ないなら一時的にイベントで特技や魔法を忘れさせれば……と考えたプレイヤーの希望はあっけなく崩された、ということになる。
さらに「状態異常の耐性設定不可」である。つまりもし、毒の状態異常を作った場合、ボスであろうと有効ということになってしまう。今作では即死は設定できない為、ボスを即死させてしまう、ということはないが、それでもボスが眠ってしまったり麻痺になってしまったりするため、状態異常を登場させる場合敵しか利用してこないなどをしないとバランスを整えるのが非常に難しくなる。
上は(おそらく)公式の仕様であるがバグの多さもかなりのものである。すべてを挙げるとキリがないので代表的なバグを挙げておく。尚、公式ではすべて仕様としておりバグフィクスの予定はない事をあらかじめ記しておく。
- 移動中のみに設定したアイテムが戦闘中に使える
- 消費MP半減などの効果があっても実際に使う際に本来の必要MPがないと使えない(消費量は半減される)
- 戦闘でアイテムを使おうとしたキャラクターが死亡して使えなくなった場合でもアイテムを消費する
これらの仕様からプレイヤーの間では公式が修正版を出す(交換対応)ことを求めていたが無情にも公式見解として発表されたのは「仕様です」発言であった。
そのため、「クソゲーオブザイヤー2010」の携帯ゲーム版では名前が挙がったが、「一応作れなくもない」ということと後述のように素材の出来は良かったということで選外に落ち着いた。
素材のクオリティは非常に高く「(PC版の)『RPGツクール2000』や『RPGツクールVX』で使いたい」という意見も多かった(その為か、『RPGツクールVXAce』のユーザー登録者特典として公式ページで一部の今作の素材がVXAce素材としてDL可能になっている)。また音楽はシリーズ最高傑作の呼び声高い。
現在では、「デジカツクールストア」で今作の素材を購入可能。歩行グラフィックやバストアップ画像・音楽など、ソフト内に収録されていた素材は一通り揃っている。
そして2011年12月15日には今作の続編ともいうべき『RPGツクールDS+』がDSで発売された。バグの多さは相変わらずでありあまり評価が高くないのは変わらないようである。
なお、Wi-Fi通信機能を利用したサービス「ツクール城」(DS)・「ツクール城+」(DS+)はいずれも既にサービスを終了しており、『RPGツクールDS』の方では既にユーザー同士のWi-Fiを利用したデータ受け渡しも出来なくなっている。また、その後は『RPGツクールDS+』の受け渡し機能はニンテンドーWi-Fiコネクションが2014年5月20日終了するまでは長く使えた。
2016年11月24日にはニンテンドー3DSに『RPGツクール フェス』が発売されたがさほど話題にならなかった。
多くの問題点が改善されたが、かといって名作と言われわけでもないためゲームカタログでの評価は判定:なしとなっている。
そして現在は
2018年11月15日発売のNintendo Switch版『RPGツクールMV Trinity』はクソゲーオブザイヤーに入選してしまった。